西廣智一『日本ヘヴィメタル/ラウドロック今昔物語』第6回「Las Vegasと“ラウド×エレクトロ”の歴史」
Fear, and Loathing in Las Vegasは“ラウド×エレクトロ”の歴史をどう更新した?
2年ぶりの新作となったシングル『SHINE』でも、その“らしさ”は健在だ。シンセリフを軸にしつつ、Sxun(Gt)&Taiki(Gt)によるザクザクしたギターリフが絡み合うアレンジ、オートチューンを通したSo(Vo)のクリーンボイスとMinami(Vo/Key)によるスクリームのぶつかり合い、メロタムの音色が気持ち良いTomonori(Dr)のドラミング、ボトムを支えるKei(Ba)のベースライン。すべてがそこで鳴っている必然しか感じられず、無駄が一切ない。4分に満たないこのミドルテンポの楽曲は、もはやカテゴライズ不能だ……もうこれは“Las Vegas”らしい楽曲としか呼びようがないのではないだろうか。
それはカップリング曲「Something to Gain After the Pain」にしても同様で、ラウドとエレクトロが見事に混在し、曲が進むにつれて複雑に変化/展開していくアレンジと、スクリームのイメージが強烈なのに最後に耳に残るのはキャッチーな主メロなのだから、さすがとしか言いようがない。3分半という短い時間の中に数曲分のアイデアが詰め込まれたこの曲も、非常に“Las Vegasらしい”1曲で、その純度はより高まっているように感じる。
もはやラウドサウンドにエレクトロのテイストを加えたバンドは数多に存在するが、Las Vegasほどの強度とポピュラリティを併せ持つバンドはそう多くはない。メジャーシーンでこのスタイルを確立させたという点においては、今後彼らがどこへ進んでいくのかも気になるところ。特に今回の『SHINE』は2年ぶりの新曲ということもあり、従来の路線をより強化させたものにとどまったが、おそらくこの先に控えているであろうニューアルバムでは、そのスタイルがどのように進化しているのかにも期待したい。
■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。