スダンナユズユリー × DJ DARUMA × A&R櫻井克彦『OH BOY』ヒップホップ座談会

スダンナユズユリー・ヒップホップ座談会

 E-girls兼Happinessのパフォーマー・YURINOと須田アンナ、そしてE-girlsのボーカル・武部柚那の3人によるガールズヒップホップユニット・スダンナユズユリーが3月1日、デビューシングル『OH BOY』をリリースした。1ボーカル&2MCというスタイルで、ダンスまで披露するヒップホップユニットは非常に珍しく、しかも彼女たちは自らダンスの振り付けや歌/ラップのリリックも手がけているという。もともとヒップホップが大好きだという3人は、いかにしてこの表現にたどり着いたのか。メンバーたちに加え、スダンナユズユリーのディレクションを手がけたPKCZ®のDJ DARUMA氏、楽曲プロデュースを手がけたavexのA&Rの櫻井克彦氏を迎え、制作の裏話から、LDHにとってのヒップホップについてまで、深く語ってもらった。(編集部)

DJ DARUMAとA&R櫻井克彦が語る、スダンナユズユリーが生まれるまで

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ーーDARUMAさんと櫻井さんは、スダンナユズユリーにどんな関わり方を?

DARUMA:僕は彼女たちと一緒にロゴやイメージなど全体のディレクションのお手伝いをさせて頂いています。HIROさんが持っているマインドやスタイルを、僕のフィルターを通してスダンナユズユリーに落とし込む感じです。HIROさんは「DARUMAとNIGO®さんは同じヒップホップなんだけど両者は表現方法が異なっている」と言っていて、DARUMAならではのヒップホップ感をスダンナユズユリーに反映してほしいと。NIGO®さんは現在、Happinessでディレクションを行っていますが、それとはまた異なるカラーを引き出していければ。

櫻井:僕はavexの社員で、彼女たちの音源制作を中心に携わっています。スダンナユズユリーは、メンバーの「ヒップホップをやりたい!」という衝動から始まっていて、ここまで来る道のりの中で、グループの方向性やコンセプトが定まっていきました。今は音楽機材が発達しているから、その気になればPC一台でトラックを作れるし、iPhoneでラップも録ることもできる。気軽にヒップホップを始められる時代です。だけど彼女たちは、この1年をかけていろんなことを吸収して、試行錯誤しながら自分たちのスタイルを作り上げてきた。この過程がとても重要でした。

ーーDARUMAさんと櫻井さんから見た、メンバーの印象は?

櫻井:彼女たちは、生まれた時からヒップホップカルチャーがあって、自然に触れてきた世代なんだなと感じます。90年代からヒップホップに触れてきた我々でも、たとえばカラオケでラップを歌ったりすることに抵抗感があったりするのですが、彼女たちはてらいなく歌えてしまう。それはすごく羨ましいし、だからこそ彼女たちがヒップホップに挑戦することに大きな可能性を感じています。

DARUMA:彼女たちのヒップホップの解釈は、僕たちが思っているものとは少し違っていて、そこがすごく良い。もちろん、同じ文化の延長線上にあるんだけれど、彼女たちは枠に捉われずに自分たちなりの解釈で、自分勝手に楽しんでいるのが素晴らしいと感じています。主体的に楽しんでいる感覚はキープしつつ、僕たちが経験的に培ってきたベーシックなヒップホップ感を取り入れてもらって、きちんと世の中の人々に共感してもらえるスタイルを一緒に作り上げていきたいですね。

ーーただラップに挑戦しただけの楽曲ではないことは、出来上がった作品を鑑賞しても感じました。細部に至るまでヒップホップカルチャーへのリスペクトが込められていて、尚且つ、音楽的な挑戦もしている。

櫻井:制作していく中で、しっかり3人のキャラ分けができたのは大きな収穫でした。Happinessは7人組の2ボーカルで魅せていくスタイルで、エレガントな雰囲気や女性らしい柔らかさもある。それに対して、スダンナユズユリーは“三位一体”のガチャガチャしたパフォーマンスが売りで、よりポップで毒っ気があるイメージです。メンバーそれぞれを紐解いていくと、アンナは何度もラップに挑戦する中で、低音と倍音が出せることが武器だと気付いて、そこにスワッグ感を足したり、わざとビートをズラすテクニックを身につけたりして、今のスタイルになりました。彼女と好対照となったのはYURINOで、ダンスのスピード感やリズム感が、そのままラップのスタイルにも表れている。滑舌も良いし、高音でキレがあります。加えて、チョイスするリリックもYURINOらしい。ボーカルの柚那は、全然そういうイメージがなかったので、「え、この子がヒップホップ好きなの?」って驚いたけれど、ブースに入ったら歌はうまいし、声はソリッドだし、すごくヒップホップに合っている声質だなと感じました。普通、歌が得意な人はラップが苦手だったりするんだけれど、彼女はリズム感がタイトで、しかもダンスまでできる。走攻守、三拍子そろった選手ですね。

ーーシングル表題曲「OH BOY」の制作陣には、トラックメイカーにSKY BEATZ氏、ミックスにD.O.I.氏を迎えるなど、ヒップホップシーンでも活躍するクリエイターが集結していますね。

櫻井:昔から一緒にやっているヒップホップのクリエイター達には、本当に助けてもらいました。たとえばレコーディングはBUZZER BEATSのSHIMIくんですし、ラップについてはKEN THE 390くんに相談して、DREAM BOYに所属するYURIKAちゃんをアドバイザーとして紹介してもらいました。みんな、スダンナユズユリーのかっこよさを理解してくれて、ビジョンを共有できる方々です。単に流行のサウンドを取り入れるのではなく、スダンナユズユリーの個性に合わせて、かっこいいものを選び抜いていく感覚で作っていきました。そうやって制作を進める中で、僕はいくつか彼女たちにハマるルールを見つけて。たとえば、セクションで歌い分けないこと。Aメロがラップ、Bメロが歌、サビが入って、ブリッジでラップみたいな感じで、順番にやっていくのではなく、どのセクションでもラップと歌を織り交ぜて、3人が絡み合う構成にしました。ライブでも、3人が固まってパフォーマンスする姿をイメージしました。また、ユニゾンパートは極力入れないようにして、さらに複雑にしました。でも、そうなるとトラックも派手だから、情報量が多すぎて聴き疲れしてしまう。そこで今度は削ぎ落とす作業が必要で、歌とラップが入り混じっていても、リリックの字数やフロウを整えることで、聴きやすさを追求しました。夏合宿のようなイメージで何度もスタジオに入り、メンバーと一緒に何度もトライ&エラーを繰り返し、ようやく形になっていきましたね。「うまくいったらHappinessのツアーでパフォーマンスしよう」って言っていたのが、ちゃんと念願が叶って皆さんにお披露目できたのは、メンバーにとっても僕らにとっても大きな自信になりました。

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