水曜日のカンパネラが目指す、自由なエンターテインメント「“祝祭を担当した人”ぐらいの立ち位置にいたい」

水曜日のカンパネラが目指す自由なエンターテインメント

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「「やりたいライブ像」に引き込むことができはじめている」(コムアイ)

ーーアルバムの曲順はどんな風に考えました?

コムアイ:最後まで悩みました。締め切りを過ぎて、次の日の昼間にライブ会場で「どっちだ……?」って悩んだりもして。序盤は「アラジン」で最初にバーン! と玉が割れるイメージで、その後「坂本龍馬」でちょっと落ち着きながらも進んでいって、「一休さん」でストンと肩の力が抜けて、「オニャンコポン」みたいなドープな曲が出てくる感じというか。

ーー「オニャンコポン」は古代ガーナの創造神の名前だそうですが、曲の中では猫や猫カフェと繋げて歌われています。よく見つけましたね(笑)。

コムアイ:苦肉の策だったんですよ(笑)。今回は世界の文化人を集めるというテーマだったので、6曲できたときに、世界地図の上にピンを差していったんです。そうしたら「やばい、全然アフリカがない」という話になって。ニャホ・ニャホ=タマクロー(ガーナの元サッカー協会会長で政治家)はいますけど……なかなか合う人が見つからなくて悩みました。

ケンモチ:しかも、ニャホ・ニャホ=タマクローはすでに曲があるんですよね。

コムアイ:それでモッタイナイの人(日本の価値観=モッタイナイに共感したケニアの女性環境保護活動家、ワンガリ・マータイ)にしようかとも迷ったんでんすけど、決め手がなくて。そんなときに「アフリカ/神様」で検索したら、検索結果の一番上に出てきたのが「オニャンコポン」だったんです。「これだ!」と思ってリンクを開く前に「ケンモチさん、これで行きましょう」って伝えたら、「えっ、いいの?」って(笑)。

ーー(笑)。アルバムが「アマノウズメ」で終わるというのも重要だったんじゃないですか?

ケンモチ:いわゆる湾岸のウォーターフロントにあった芝浦GOLDとかジュリアナ東京に、天照大神(あまてらすおおみかみ)が引きこもっていて、アマノウズメが踊りを踊ってその岩戸から引き出すという曲なんですけど、ディスコで大神を見つけて、最後は朝帰りをしてタクシーを待つという(笑)。この曲には「ただいま」という感じもあるし、また朝がくるというニュアンスもあると思うんです。アルバムの終わりを完全に告げるわけではなくて、ここからまたはじまる、というニュアンスで。

コムアイ:全部の曲を包括できる別ポジションの曲ですよね。他の曲がズンズンいっている中で、この曲はちょっと引いているというか。私の歌も、曲の中のアマノウズメのキャラクターも、自分の人生じゃなくて人の人生をサポートする感じになっていると思うんです。

ーーなるほど。それが最初のアルバム・タイトルの話と繋がってくるわけですね。

コムアイ:そうです。あと、最後の一番しんどいときにできた「一休さん」が、いつもみんなにトンチ(=アイデア)を求められるケンモチさんの姿と重なって、ケンモチさん自身が「たまにはみんなに『ありがとう』って言われたい」と言っているように聞こえたりして。後で聞いたら、ケンモチさんは全然意識していなかったらしいんですけどね(笑)。

ケンモチ:(笑)。この曲も一休さん自身の歌ではなくて、いつも傍から見ていて「あいつは凄いよな」と言っている人の歌なんですよね。

ーーそれにしても、メジャー・デビュー以降はライブの規模が大きくなったり、フェス出演が増えたり、コムアイさんが地上波のTV番組に出たりと、やれることがかなり広がってきていますよね。

コムアイ:機会はいっぱいもらえているので、もうちょっと頑張りたいんですけどね。ライブに関して言うと、どんなに演出を考えても、お客さんって結局は「この人ってどういう人なの?」というところを見てくれるじゃないですか。特にカンパネラの場合、ライブでは「女がひとりで歌ってる」ので、そう見られやすいと思うんですよ。それで、私はどこに行っても、たとえばサンフランシスコのSXSWでライブをしたときもそれを感じたんです。ライブではカラオケで歌っているだけなのを批判されると思っていたら、結局そうではなくて、「この人はどういうことがやりたいのか」を見てくれたというか。それに応えれば伝わるライブが出来ると思うんですよね。その力を今鍛えているところです。自分では、2016年のツアーを通して「やりたいライブ像」にみんなを引き込むことができはじめているんじゃないかな、と思えるようになってきているんです。音のうねりにみんなと一緒に巻き込まれて、自分がいる場所も分からなくなる、みたいな(笑)。ただ楽しくてしょうがない、そういうライブがしたいとずっと思ってきたんですよ。

ーーお客さんもコムアイさんもみんな一緒に楽しむイメージですね。

コムアイ:そうなるともはや演出もどうでもいいというか、みんなで音を追いかけていくような感じになる。私自身が遊びに行ってもそういうライブが一番好きだから、自分の現場でもそれをやりたいとずっと思ってきて、少しずつ理想像との距離が縮まってきているのかな、と思っているんですよ。

ーー水曜日のカンパネラのライブには色んな仕掛けが用意されていますが、今のコムアイさんは、それをさらに追究するのとはまた違うモードになっているということですか?

コムアイ:より「ちゃんと歌いたい」と思っているというか。仕掛けはもちろん今後もやりますけど、これまではどこかで「仕掛けを沢山用意しているから許してね」という気持ちがあったと思うんです。でも、そういうところに甘えない方が、仕掛け自体もより活きると思うし。今は曲によってどういう表情で、どう歌うかということを考えているんですよ。

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