欅坂46「二人セゾン」は総合芸術だ! デビューイヤーで彼女たちが起こした奇跡

欅坂46と2016年の紅白

 2016年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に誰が出るか、事前に取り沙汰された候補者はなかなか多かった。SMAP最後のステージは遂に叶わなかったが、久々の音楽活動復帰で大傑作を世に放った宇多田ヒカル、映画『君の名は。』の大成功を後押ししたRADWIMPS、CMソングというNHKハードルを飛び越えた桐谷健太などが出場し、番組を大いに盛り上げた。

 そんな話題・実績豊富なラインナップに、2016年のデビュー組の中で唯一選出されたのが欅坂46だった。彼女たちの新人としての活躍は、デビュー作『サイレントマジョリティー』で女性アーティストのデビューシングル初週歴代1位を記録したのはもちろんのこと、近作となる3rdシングル『二人セゾン』は初日売上で前作売上を約10万枚も上回り、その勢いは本物といって差し支えないだろう。

 世間的な目でいえば、48グループも46グループも秋元康プロデュースという意味ではひとくくりなのだろうが、その中でもCD売上では、欅坂46はAKB48、乃木坂46に次いで3番手につけており、その他の48グループを押しのけての出場でもある。紅白では1stシングル曲「サイレントマジョリティー」が披露され、彼女たちの持つ「大人への反抗」といったイメージがより一層ついたことだろうが、最新曲「二人セゾン」にはこれまでの「大人への反抗」という側面とはまた違う欅坂46の面白さがたくさん詰まっている。「二人セゾン」は総合芸術なのだ。

「二人セゾン」はなぜ総合芸術か

 「二人セゾン」。まずこのタイトルの違和感と妙な口当たりの良さ。そして当てられたメロディの切なさ。楽曲的には、美しいピアノとストリングスに彩られた寒空広がる秋曲で、1stと2ndに比べればアコースティックギターの力強さはだいぶ抑えられている。今回フックになっているのは、何度も繰り返される「二人セゾン」というタイトルにも冠されたワードだ。AKB48「大声ダイヤモンド」「涙サプライズ」や、乃木坂46「太陽ノック」「ロマンティックいか焼き」など、一見関わりのない単語をくっつけてフックのある言葉を生み出すのは秋元康が昔から得意にしている手法だ。ちなみに「セゾン」はフランス語で「季節」のこと。

 これまでにリリースされ話題となった1stシングル「サイレントマジョリティー」、2ndシングル「世界には愛しかない」では、欅坂46には「大人への反抗」というイメージがついているように思う。それからすると、今回の「二人セゾン」はその直系の流れにはないといえるだろう。どちらかと言えば、スチームパンク・グランジ調の「大人は信じてくれない」が、従来の路線をより過激にしたものといえる。だが表題曲に「二人セゾン」を選んだことは、彼女たちが戦いをやめたことを示しているわけではない。

 そのヒントといえるのが、発売に先立って公開された同曲のMVにある。

 映像内では、メンバーは学生服を着ているが、その中には一度も学校や家庭(=大人と戦う戦場)という場所は出てこない。カバンを放り投げ、満面の笑みで自由に舞う彼女たちは、戦場から離れひと時の自由に心を躍らせている。「二人セゾン」で描かれているのは、大人への強い思いをぶつける彼女たちにも、他の誰とも変わらず「変わり過ぎていく時間(=季節)」があることだ。MVで見られる彼女たちの姿は本当に美しい。その笑顔も、可憐に舞う姿も。だがこの美しさすら永遠ではないわけで、卒業したり年老いたり、時間が経つことでそれらも移ろっていく。このメンバーたちの刹那的な美しくさと儚さが、演出、振り付け、ライティング、カメラワークでより引き立てられ、このMVは美しく仕上がっているのだ。AKB48「ハイテンション」、乃木坂46「サヨナラの意味」といったそれぞれの最新曲に対してCDセールスでは大きな差があるものの、MVの再生回数では両者に勝り970万回以上の再生を記録しているのは、それだけこのMVが魅力的だということに他ならないのではないだろうか(2017年1月18日現在)。

欅坂46「二人セゾン」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる