パスピエ 成田が語る、“葛藤”と向き合った5年間の軌跡「バンドの根幹は太くなってる」

パスピエ成田、5年間の軌跡を語る

 デビュー5周年を11月23日で迎えるパスピエが、『ヨアケマエ』『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』に続く2016年3作目となるシングル『メーデー』をリリースした。バンドの表現とパブリックイメージのギャップ、そこで生まれる葛藤をテーマにした「メーデー」は、パスピエの5年間の軌跡をリアルに描き出したナンバーと言えるだろう。ニューウェイブ感覚と和のテイストを融合させたカップリング曲「月暈」、デビュー作『わたし開花したわ』(2011年11月23日リリース)の収録曲を成田ハネダ(Key)がリミックスした「わたし開花したわ re(mind)mix」を含め、アニバーサリー・イヤーとリンクした充実の内容となっている。

 今回リアルサウンドでは、成田ハネダに単独インタビュー。「メーデー」のコンセプト、制作過程を軸にしながら、この5年間における音楽的変遷、バンドの現状についても語ってもらった。(森朋之)

「紆余曲折があって、いまのパスピエがある」

ーーニューシングル『メーデー』がリリースされます。『ヨアケマエ』『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』に続き2016年3作目となりますが、3作に共通するコンセプトを改めて聞かせてもらえますか?

成田ハネダ(以下、成田):今年は“対”をテーマにして制作しているんですよね。1作目に関しては、武道館ライブを経て、パスピエとして新しいものを表現していきたいという気持ちもあったし、「ここから新たな幕開け」という意味も込めてタイトルを「ヨアケマエ」にしていて。つまり過去と現在の対という感じですね。2作目はダブルAサイドで、パスピエの音楽性を対になるように表現して。今回の「メーデー」は、自分たちの内側の葛藤がテーマなんですよ。

パスピエ - メーデー, PASSEPIED - Mayday [Short Ver.]

ーー葛藤というと?

成田:どのアーティストもそうだと思いますけど、表面的に見えている部分と、その内側に抱えているものの両方があるんですよね。それがシンクロすることもあるし、そうじゃないこともあって。これは良い・悪いということではないですが、自分たちが思い描いていたことに対して、受け取り側が別の捉え方で評価してくれたり、思ってもみなかったリアクションが戻ってくることもあって。そこで葛藤を感じることもあったんですよね。リスナーが認識しているイメージを壊してまで先に進むべきか、それとも保守であるべきかっていう。

ーー音楽の伝わり方にギャップを感じることもあった、と。

成田:むしろ僕らはそこに向き合いながら歩んできた5年間だと思っていて。“顔出し”もそうですよね。スタートのときは、より音楽が伝わるようになればいいなと思って(アーティスト写真、MVなどで)顔を出してなかったんですけど、そのうち「正体不明のバンド」とカテゴライズされるようになって。そのことを僕ら自身もおもしろがっていたし、拒絶反応というより、予想していたことではあるんですけど、たとえば「ライブ・パフォーマンスはどうしたらいいか?」ということを考えましたし。アルバムに関しても、リスナー、オーディエンスの反応に対して、さらにリアクションするような感覚で作ってきたので。特にデビュー当初はバンドシーンに上手くアジャストし切れていなかったと思うんですよ。

ーー4〜5年前はフェスが完全に定着して、「いかにフェスでアピールするか」が重要になってましたからね。

成田:そうですね。イベントに出させてもらっても、バンドではなくて、シンガーソングライターだったり、女性アイドルと一緒になることがけっこうあったんです。そこから脱しなくちゃということではなくて、どうすれば自分たちのストレートな表現がバンド・シーンに刺さるんだろう? ということを考えていました。ニューウェイブ的なサウンドだったり、女性ボーカルであること、大胡田(なつき/V)のキャラクターを含め、そういう見られ方をされていたんだと思いますけどね。

ーーバンドというよりも、ポップスとして捉えられていたわけですね。

成田:はい。プロモーションやライブをやっていくなかで、自分たちのカテゴライズが必ずしもバンドではないなって思ったので。その後、バンドらしく表現をするために『演出家出演』というアルバムを作って。そこで評価されたことが嬉しかったのは事実なんですが、そうなると今度は、自分たちが最初に掲げてたコンセプトーー“印象派”プラス“ロック、ポップス”ーーと一致しなくなってるという葛藤が生まれたり。でも、そういう葛藤を解いてくれたのも、僕らの音楽を聴いてくれたリスナーなんですよね。シングルのリリース、カバー曲などをやっていくなかで“何をやってもパスピエはパスピエだ”と認識してくれたというか。そういう確認作業が出来たのも良かったし、いろいろな紆余曲折があって、いまのパスピエがあるというのはいつも感じていますね。

ーー現在はバンドシーンにも適応しつつ、パスピエとしての個性も浸透しているという実感がある?

成田:僕らのなかでは納得して作品作りは出来るようになってますけど、もっともっとリスナーに伝えていかないといけないなとは思っています。そういう葛藤は今年になってもずっとありますからね。ひと言では言い表せないバンドだという認識はあるんですけど、それはメリットでもあり、デメリットでもあって。でも、ずっとそういうところで勝負してきましたからね。そこを否定しまったら、パスピエの軸がなくなってしまうという怖さもあるし。現状と向き合いながら、そのときどきのテーマを掲げて活動していきたいとは思ってますけどね。

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