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柴 那典のチャート一刀両断!

桑田佳祐「ヨシ子さん」に見る音楽的先鋭性 グローバルなヒット曲との共通項を読む

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柴 那典
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参考:2016年6月27日~2016年7月3日のCDシングル週間ランキング(2016年7月11日付)(ORICON STYLE)

 今週のシングルランキング上位は、GENERATIONS from EXILE TRIBE『涙』、桑田佳祐『ヨシ子さん』、VIXX『花風』、放課後プリンセス『青春マーメイド』、lol『spank!!』という並びとなった。

 この中でも、やはり語るべきは『ヨシ子さん』だろう。桑田佳祐の3年ぶりのニューシングルは8.1万枚のセールスを達成。前作『Yin Yang/涙をぶっとばせ!!/おいしい秘密』の初動6.9万枚を上回る結果となった。

 このセールスは楽曲自体の持つパワーが成し遂げたものと言える。素っ頓狂でユーモラスな、そして一度聴いたら耳から離れないインパクトを持った「ヨシ子さん」は、ラジオのオンエアやテレビでの初披露から大きな話題を巻き起こした。6月17日の『MUSIC STATION2時間SP』(テレビ朝日系)、6月23日の『SONGS』(NHK)、そして7月2日の『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系)と、桑田佳祐自身も各局の音楽番組に出演してこの曲を披露。歌やサウンドだけでなく、カラフルで摩訶不思議なバックダンサーを従えたカオスな演出も目を釘付けにした。

 すでに多くの人に語られていることではあるが、今回のシングルは何より「ヨシ子さん」という曲を表題曲にしたのが英断と言っていいだろう。この曲を前面に押し出したことで、桑田佳祐独自のポップセンスと批評性がありありとフィーチャーされたのである。「EDMたぁ何だよ、親友?」「“サブスクリプション” まるで分かんねぇ」「なんやかんや言うても演歌は良いな」と、時代に取り残されたオッサンを戯画的に描きながら、実は60代を迎えた彼がどのミュージシャンよりも時流に鋭敏なことを証明する一曲になっている。

 というのも、この曲のビートは、ジャスティン・ビーバー「SORRY」や、リアーナ「WORK」や、ドレイク「ONE DANCE」など、去年から今年にかけてのグローバルなヒットソングに共通して用いられるダンスホールレゲエのビートを参照しているから。ダンスホールレゲエと言っても、湘南乃風やFIRE BALLがやっているようなアゲアゲの曲調ではない。彼らが参照しているジャマイカのショーン・ポールのようなゼロ年代のホットなダンスホールレゲエではなく、あくまで、カルヴィン・ハリスやカイゴなどEDM以降のトロピカル・ハウスのムーブメントを経由し、ディプロが牽引する2010年代のダンスホールレゲエ。テンポと音圧を抑え、リスナーを穏やかにチルさせる心地よくメロウなサウンドが特徴だ。

 言葉でいろいろ説明するより、ディプロが手掛けるメイジャー・レイザー&DJスネイクの「Lean On (feat. MØ)」を聴いてもらえればそのテイストは一発で伝わるはず。

メイジャー・レイザー&DJスネイク「Lean On (feat. MØ)」

 この曲を聴いてから「ヨシ子さん」のMVを観ると、「ドンッツ・ドッツ」というダンスホールレゲエのビートだけでなく、生音のパーカッションの使い方や無国籍風の演出も含めて、かなり呼応したサウンドに仕上がっていることがわかる。

桑田佳祐「ヨシ子さん」

 当サイトに掲載されたインタビュー(http://realsound.jp/2016/07/post-8260.html)では桑田佳祐自身は「意識してない」と語っているが、これだけ最先端のサウンドの上で「オッサンそういうの疎いのよ 妙に」と歌うというのは、かなり確信的な言葉の選び方と言っていい。さらに「チキドン(チキドン) エロ本(エロ本)」「フンガ フンガ 上鴨そば(Hey)」という歌詞もすごい。こういうワードを歌ってヒットソングにできるのは桑田佳祐くらいだろう。

     
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