島爺が語る、初作品の挑戦と覚悟 「歌い手としての人生が終わってもいい」

島爺が語る、初作品の挑戦と覚悟

 ニコニコ動画を中心に、ネット上でカルト的な人気を誇る歌い手・島爺が6月22日、1stアルバム『冥土ノ土産』をリリースした。「ブリキノダンス うたった 【SymaG】」が、ニコニコ動画で約460万再生を超えるなど注目を集めていたが、ここで満を持してのメジャーデビューとなった。リアルサウンドでは、これまでメディアでの露出がなかった彼に初のインタビューを敢行。音楽遍歴から、動画投稿を通して感じたネットシーンとメジャーでの音楽シーンについて。そして「このアルバムを出すこと でもしかしたら歌い手として終わってしまうかもしれない」というほどの覚悟で挑んだ作品について、じっくり聞いた。(編集部)

「当時、ボカロ曲は量産できない熱があった」

ーー当サイト初登場ということで、音楽歴から伺っていきたいと思います。これまでどんなふうに音楽と触れ合って来たか、というところから聞かせてください。

島爺:親がよく音楽を聴く方で、車のなかで童謡や演歌、歌謡曲を聴いて育ちました。ただ、子どもの頃はそれほど音楽に興味はなくて、それよりスポーツ、特に野球に一生懸命でしたね。そんななかで、Mr.Childrenさんなどメジャーなポップスを聴くようになり、カラオケで歌ったら友人に褒められたことがきっかけで音楽にハマっていきました。高校生くらいの頃ですね。

ーー島爺さんは“永遠の82歳”ですから、60数年前のことですね(笑)。

島爺:そうですね(笑)。それからバンドを組もうと考えて、邦楽のロックをよく聴くようになって。それからミクスチャー系、洋楽も含めてメタルにパンク、R&Bにテクノと、幅広く音楽を聴くようになりました。ヴィジュアル系のロックもよく聴いていましたね。バンドでやっていたのは激し目のギターロックで、コピーはまったくやらずに、オリジナル曲をやっていました。

ーー動画共有サイトに投稿している楽曲を聴くと、ハードロックからネタ曲的なものまで、本当に幅広いですよね。当時、こだわりなくさまざまな音楽を聴いてきた蓄積が生きている、ということでしょうか。

島爺:それはあるかもしれません。基本的に広く浅くというか、今のいわゆるYouTube世代に近い聴き方だったと思うんです。気になったものはすぐにCDを借りたり、買ったりして、こだわらずになんでも聴いていたので。このジャンルはこうあるべき、みたいな発想もなくて、今も“いいものはいい!”と考えています。

ーーそういう意味では、ボカロシーンには“ジャンルにこだわらず面白いことをやろう”というクリエイターが多いので、共感する部分も大きかったのでしょうか。

島爺:そうですね。最初にニコニコ動画に動画を投稿したのは今のアカウントではなかったんですけど、ボカロ曲を中心にした“歌ってみた”というジャンルがあることを知って、面白いと思ったんです。バンドをやっていたから録音のための道具は一式あるし、その時からミキシングもできたので、自分でもやってみようと。当時、あまり投稿できなかったんですが、なんやかんやあってバンドも解散して、趣味で音楽を続けるのにいい場だと思って、本格的に動画を作るようになりました。ひとりで歌っているより、みんなに聴いてもらったほうがいろいろ刺激にもなるので。

ーーその当時、ボカロを中心にしたネットの音楽シーンについては、どう捉えていましたか?

島爺:単純に面白かったですね。これは誰が悪いという話ではないのですが、当時のメジャーシーンは、今思うと「底」だった気がするんです。震災やら不況やら、世の中の状況的にミュージシャンの方々も迷いのなかで、「励ましの曲は陳腐に響き、悲しい曲では沈む一方だ、しかし、作らねば飯が食えない」という状況もあったんじゃないかと。そういうこともあって、メジャーの音楽が全然面白く感じられなかった。そんななかで、ボカロ曲は全然優等生的じゃなく、技術的にも粗いのかもしれないけど、量産できない熱のある作品が多くて、魅力を感じました。

ーー当時、どんなボカロPの作品を聴いていましたか?

島爺:wowaka(バンド「ヒトリエ」のギターボーカル。ボカロ曲として「裏表ラバーズ」「ローリンガール」「ワールズエンド・ダンスホール」など多くの人気作品を持つ)さんが好きでしたね。それまでは“荒削りな人がいっぱいいて面白いな”と思っていたのが、一歩進んでのめり込むきっかけになりました。

ーーでも、wowaka氏の楽曲は動画として投稿していませんね。歌詞をよどみなく届ける滑舌のよさと、力強いハイトーンも魅力的な島爺さんの声によく合う気もするのですが。

島爺:なんででしょうね(笑)。特に理由はないので、今後歌わせてもらうかもしれません。

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