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でんぱ組.incは新たなフェーズへ! 柴那典がニューアルバム『GOGO DEMPA』を徹底分析

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 でんぱ組.incは、新たなフェーズに足を踏み入れた。着実な人気の高まりを経て、持ち前のカラフルな個性は失わないまま、より広い地平を目指し始めた。

 グループのキャッチコピーは今も変わらず「萌えきゅんソングを世界にお届け」だ。でも、その「萌えきゅんソング」の内実は、もはやオタクカルチャー由来の電波ソングでなく、前山田健一や玉屋2060%など数々の作曲家が手掛ける「でんぱ印」のユニークな音楽性になった。そしてそこには、ストレートなポップソングも、様々なジャンルの音楽をでんぱ組.incなりに吸収した楽曲も含まれるようになった。通算4枚目のニューアルバム『GOGO DEMPA』は、その象徴となる1枚だ。

 現体制となって5年目を迎えたでんぱ組.incは、どこに辿り着き、どこに向かおうとしているのか? この記事では、楽曲分析と過去のメンバーインタビューの発言から、それを紐解いていきたい。

 まず新作の収録曲のポイントとなっているのは、「ドキュメントからシンパシー」への変化だ。好評を集めたファッションブランドSPINNSとのコラボなどを経て、でんぱ組.incは徐々に「女の子の憧れ」としてのアイドル像を獲得するようになっていった。だからこそ、そういうファンの共感を引き受ける楽曲を歌うようにもなっていった。

 以前にも書いたが(「でんぱ組.incの新曲に見るグループの戦略転換 「ドキュメント」から「シンパシー」への変化を読む」)、その象徴となっているのが、アルバムのラストに収録された「あした地球がこなごなになっても」。13曲目「キボウノウタ」、14曲目「ユメ射す明日へ」と、終盤に並ぶ楽曲も真っ直ぐなエモーションを歌い上げるナンバー。破天荒なエンターテインメント性よりも、センチメンタルな余韻が残るようなアルバムの聴き応えになっている。

 『ミュージック・マガジン』誌5月号に掲載されたメンバーインタビューでは、多くのメンバーが「ユメ射す明日へ」をフェイバリットに挙げている。

 〈なんでこんなうまくいかないの? 転んでばかりの日々にゲンメツ〉という歌い出しの「ユメ射す明日へ」は、かつて「W.W.D」(2013年1月リリースシングル『W.W.D / 冬へと走りだすお!』表題曲)で〈マイナスからのスタート〉と歌ったグループのヒストリーを彷彿とさせるものだ。

 筆者はアイドルたちのライフストーリーを紐解くインタビューマガジン『IDOL AND READ』でメンバー6人の取材を担当したのだが、そこでも古川未鈴はメジャーデビュー当初のグループをこんな風に振り返っている。

「やることなすことダメでしたね。振り付けも全部私がやってて、見よう見まねのダンスしかできなくて。しょっぱい感じでしたね(笑)」(古川未鈴、『IDOL AND READ』 vol.1より)

 そもそも、でんぱ組.incは秋葉原のディアステージで古川未鈴が「アイドルをやりたい」と言ったことから始まったグループだ。夢眠ねむも、センターをつとめる彼女がグループの軸であることを語っている。

「やっぱりでんぱ組.incの骨は古川未鈴なんですよ。だから未鈴ちゃんが辞めたかったら私は辞めるし、続けたかったら続ける。古川未鈴についていくって決めたんだからそうしている、って感じですね」(夢眠ねむ、『IDOL AND READ』vol.2より)

 そんな古川未鈴は、ニューアルバムでの変化をこんな風に語っている。

「昔の私たちじゃ歌えない曲がたくさんあるんですよね。とても前向きで、明るくて。以前は私たちが背中を押して欲しいって感じだったんですけれど、いつの間にやら、そっと押している、みたいな曲が多くて」(古川未鈴、『ミュージック・マガジン』2016年5月号より)

 メンバーそれぞれの暗い過去もあったし、活動を重ねていく中で向き合う葛藤もあった。新作にはそういう5年間の積み重ねがあってこそ歌える楽曲が詰まっていると言えるだろう。リーダー、相沢梨紗も今のでんぱ組.incについて、こんな風に語っていた。

「現実に違和感みたいなものがあって、しんどい子たちが、こういう世界もあるんだって思ってくれるきっかけになったらいいなって思うんです」(相沢梨紗、『IDOL AND READ』vol.4より)

 一方、ニューアルバムの前半には「破! to the Future」や「STAR☆ットしちゃうぜ春だしね」などハイテンションな楽曲が並ぶ。様々な音色やフレーズを詰め込んだ高密度なポップソングなのだが、ポイントはバンドサウンドがベースになっていること。ライブでも「でんでんバンド」という専属のバックバンドを従えた生演奏のステージがでんぱ組.incの魅力の一つになっている。

でんぱ組.inc「破! to the Future」LIVE Ver.

 また、カントリー&ウエスタンを取り入れた曲調に加え、ミュージックビデオの映像でもかなり面白い演出を見せるのが「STAR☆ットしちゃうぜ春だしね」。映像では6人のメンバーがアルバムの初回限定盤に描かれたキャラクターイラストを実写化したようなコスチュームを身にまとう。先日行われた「GOGO DEMPA TOUR 2016」でも、映像制作集団「最後の手段」によるイラストが大きくフィーチャーされ、戯画化された6体の可愛い妖怪たちのキャラクターをメンバーに見立てるユニークな演出が徹底されていた。

 こういうアイドルグループの枠を飛び越えたヴィジュアル演出やコンセプトも、でんぱ組.incの魅力と言っていいだろう。成瀬瑛美はこんな風に言う。

「でんぱ組.incって存在は本当にすごく面白いですから。日本の文化としてずっとあったほうがいいんですよ。だから、できるだけ長く続けていきたいです。たとえメンバーがみんなやめるのであれば、ちゃんと何か永遠に残るものとしてやめたい」(成瀬瑛美、『IDOL AND READ』vol.3より)

      

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