「ポストロック×アイドル×ジュブナイル」は何を生み出す? sora tob sakanaサウンドプロデューサー・照井順政に訊く

「ポストロック×アイドル×ジュブナイル」は何を生み出す?

 株式会社Zi:zooが手掛けているアイドル育成プロジェクト「ふらっぺidolぷろじぇくと」。sora tob sakana(そらとぶさかな。愛称はオサカナ)は、 このプロジェクトから選出された、芸能事務所・テアトルアカデミーに所属する女子中高生4人グループだ。2014年7月に結成され、ASOBISYSTEMとアイドル横丁によって新設されたアイドルレーベル<フジヤマプロジェクトジャパン>より、2枚のシングルをリリースしている。

 サウンドプロデュースを行っているのは、ロックバンド・ハイスイノナサの照井順政。楽曲は、ハイスイノナサと同じく、ポストロックやエレクトロニカなサウンドが特徴的だ。歌詞世界は独特で、少年少女の抱える葛藤や後悔について触れられることが多く、ノスタルジックで切ない世界観が描かれている。メジャー、インディーズを問わず、アイドルシーンにおいてかなり異色かつハイレベルな楽曲クオリティーを維持できている、稀有な存在だ。

 今回はそんなsora tob sakanaのサウンドプロデューサー・照井氏に、グループのプロデュースや目標、表現したいことなどについて、話を訊いた。(岡島紳士)

ポストロックではなく「ノスタルジーなもの」をやろうと思った

--クリエティブ面に関してはどこまで関わっているんですか?

照井:まず、ユニット名は事務所が付けたもので、僕はサウンドプロデューサーとしてお手伝いするところからスタートしました。ただ、現在は音楽だけではなく、衣装や振り付け、ミュージックビデオの制作など、クリエティブ全般にも関わっています。チームに加わったのが途中からなので、別の方が提供したオリジナル1曲目「DASH!!!!」の方向性からいきなりバキッと変えるのではなく、徐々に今の方向性にシフトチェンジしていて、今は好きにやらせて貰ってます。

--ユニットの元々のコンセプトはどういうものだったんですか?

照井:当初からはっきりしたものはなくて。「未完成が完成に向かって空に飛び立っていけるように、成長して行く姿を見て欲しい」っていう、アイドルとしてはありがちなものくらいで。僕が入った時点からユニットのカラーを固めて行こう、という方針でした。Zi:zooさんから「ポストロックアイドルをやりたい」、ということで呼ばれたんですけど、僕はtoe(2000年結成のポストロックバンド)以降のポストロックをそのままアイドルと組み合わせても単純に食い合わせが悪いだろうと思っていて。1回聴いただけで口ずさめないし、変拍子は難しいし、踊れないし。だから僕はそのままの「ポストロックアイドル」をやる気はあまりなくて。低年齢のアイドルなら「ノスタルジーなもの」をやろうと思ったんですよ。

--「ポストロック」とは具体的にどういう音楽なんでしょうか?

照井:元々はロックに対するカウンターとして始まったものです。最初のうちは「エレキギター、ドラム、ベースを使うロックバンドの形態だけど、ロックっぽい音楽をやらない音楽」のことでした。ただジャンルって、どんどん形骸化していくもので。今のポストロックは、変拍子があって、楽器が細かいフレーズを弾いていて、派手な音をあまり入れず、比較的淡々と進む、という感じが一つの主流です。インストも多くて、匿名性は高いというのも特徴かもしれません。

--そのなかでノスタルジーをどう表現しようとしましたか。

照井:よく2ちゃんねるに「ノスタルジーな画像スレ」みたいなのがあるんですよ。青空と田舎と校舎と、みたいな。イラストレーターのたかみちさんみたいな世界観。僕はそこに一定の需要があるとずっと思っていて。特にアイドル好きに対して、その世界観と低年齢のアイドルの組み合わせは響くのかもしれないと感じたし、僕自身はエレクトロニカにも影響を受けているので、どちらかというと、ポストロックよりもこの子たちにはそのほうが合うのかもと思いました。ジブリっぽいノスタルジックな感じを基本に置きつつ、尖らせているようなイメージですね。

--その他にはどういったことに関わっていますか?

照井:ミュージックビデオは事前の打ち合わせから参加します。でも映像のことは監督におまかせして、僕はアイディアを出して、話し合いながら落とし込んでいく形ですね。定期公演でバックに流している映像は、フジヤマプロジェクトジャパンから紹介して頂いたTONTONさんという方が作ってくれたものです。彼は、ファッションパーティー「GIRLS AWARD」できゃりーきゃりーぱみゅぱみゅさんやでんぱ組.incさん、乃木坂46さんのVJをしている方なんです。あと、関わっていることは、最近なくなりましたが、ずっとオサカナの現場に通って、物販を手伝ったりチェキを撮ったりしてました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる