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作詞家・zoppが小説執筆で得た経験値とは? 「格段に『ヒントを出す』のが上手くなった」

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 音楽を創る全ての人を応援したいという思いから生まれた、音楽作家・クリエイターのための音楽総合プラットフォーム『Music Factory Tokyo』が、2作目となる小説『ソングス・アンド・リリックス』を上梓したzoppのインタビューを公開した。

 同サイトは、ニュースやインタビュー、コラムなどを配信し、知識や技術を広げる一助をするほか、クリエイター同士の交流の場を提供したり、セミナーやイベント、ライブの開催など様々なプロジェクトを提案して、未来のクリエイターたちをバックアップする目的で作られたもの。コンテンツの編集には、リアルサウンド編集部のある株式会社blueprintが携わっている。リアルサウンドでは、今回公開されたスペシャルインタビュー2本の前編を掲載。同記事では、作詞家が小説を書く意味や、それによって得た新たな技術などについて、大いに語ってもらった。

「“分かりやすさ”自体が諸刃の剣になるときもある」

――zoppさんは普段作詞家として活躍されているわけですが、今回小説を書こうと思った理由は?

zopp:歌詞って、いろんな職業の人が書くじゃないですか。タレントさんもアイドルも脚本家も書いていて、作詞家は言葉を扱う職業の中でも「誰でもできる」一番キャッチーな仕事に見られているように思えたんです。だから、僕は逆転の発想で、作詞家でも小説を書けるし、しっかりとしたブランドを作れることを証明したかったんです。

――以前のお話で「作詞家のその次にキャッチーだと思われているのが小説家」と言っていたのが印象的でした。

zopp:小説に関しては、麒麟・田村裕さんが書いた『ホームレス中学生』あたりから、どんどん執筆のハードルが下がっていきましたよね。どちらが軽いとか偉いというわけではないのですが、世間的なイメージとして、小説のほうが難しいというイメージはまだ定着していますし、そこで僕が小説を書いて「これくらいできるよ」って言いたかったという。将来は映画の脚本も作りたいと思っているので、その延長線上ともいえますしね。

――小説と作詞に関しては、同じ言葉を使うことではありますが、使う筋肉というか、ルールが違う感じですよね。

zopp:作詞は書き手や歌い手の思いを言葉に乗せ、短い言葉で綴る場合が多く、さらに一番重要な点として“音に乗せてある種の違和感でリスナーを刺激する”というルールがあります。これに比べ、小説は地の文と台詞という主観と俯瞰の視点で常に物語を進めなければならないですし、文量も多いので、書いているうちにキャラクターの状態が変わってきたりする。全く自覚のないまま、小説の担当編集者さんに「キャラクターが変わってきています」と何度か指摘されたのですが、作詞で「1番のAメロと2番のBメロに整合性がない」と言われたことはなかったので、難しさを感じた部分です。

――文体も違いますし。

zopp:J-POPの作詞では使わないような言葉遣いをよくするので、戸惑いはありました。Mr.Childrenの桜井和寿さんや椎名林檎さんなどは、小説に近い文体で歌詞を書いている方なのですが、職業作詞家に求められるのはそういったものではないので、アウトプットの方向性を融合させることもできませんでした。

――そうは言っても、小説の執筆と並行して本業の作詞活動も行なっていたわけですよね。スイッチの切り替えはやはり大変でしたか。

zopp:すごく大変でしたね。いまだに慣れていません。作詞の案件をひとつ終えたあとに小説の執筆に入ると、作詞の癖がまだ残っていたり、小説を書いたあとに作詞をしようとすると、小説の癖が残っていたりします(笑)。もちろん、小説を書き始めたことによって、言葉のボキャブラリーがどんどん増えていったので、プラスの面もありますよ。ただ、並行してやるのが楽しくもあり難しいだけで。

――小説を書いたことで、作詞面に波及したプラスの作用について、詳しく教えてください。

zopp:前よりも格段に「ヒントを出す」のが上手くなったと思います。純文学的なものでない限り、小説はなるべく読み手にとって親切なほうがいいと思っているので、物語を進めるにあたり、ところどころにヒントというか伏線をちりばめて、辻褄を合わせる必要がありますよね。でも、作詞の場合は良くも悪くもフランクなので、1番と2番で辻褄が合っていなくてもOKだったりするんです。

――“聴き手に委ねる”ことが許されるということでしょうか。

zopp:そうですね。ただ、小説を書いて以降「サビで主人公がこの感情を抱く理由は、Aメロのここに含んでいます」としっかり言えるようになったというか。「青春アミーゴ」のころと、今の僕が書いている作品って、圧倒的にわかりやすいと思うんです。ただ、それも難しいところで、“分かりやすさ”自体が諸刃の剣になるときもあって。『Music Factory Tokyo presents「Music Creators Workshop」~作詞編~』でも「7割表現の美学」という授業を行っているように、物語の7割を表現して、行間の3割を聴き手に想像させるのが、僕の美学だと考えているので、そこが薄まってしまう危険性もありますから(参考:http://musicfactorytokyo.com/special_detail.html?id=641)。

――歌詞に深読みできる要素が少なくなってしまうんですね。

zopp:実際に執筆中には、「7割表現」ができなくなってしまったこともあったんです。並行して作業を進めているうちに、自分の脳の回路がどちらになっているのかわからなくなって。自分の中でしっかりと切り離しても、また作業をすると元通りになったり。両方を一緒にやった人じゃないとわからない感覚だと思います。

――だとすると、どちらかにした方が健全なのかもと思うのですが、そういうわけではないのですか。

zopp:そうですね。あくまで作詞をメインとして、小説は定期的に書いて、読んだ人に「あ、この人、作詞家だったんだ!」と気付いてもらって、作詞家という職業がもっと広く浸透してほしいです。

     
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