POLYSICS・ハヤシ、サシ飲みで本音明かす「もっと『What's This???』なバンドになりたいのよ」

POLYSICS・ハヤシにサシ飲み取材

「『歌詞でトライするって、やったことなかったなあ』と思って」

20160229-ps12.jpg

 

──で、『What's This???』になるわけですが。このアルバムを作る上で、特に注力したところっていうと──。

ハヤシ:『HEN 愛』の2枚で、自分の偏った部分とかは伝えられたんだけど、音楽的な偏愛部分っていうのは、俺、基本は変わんないでしょ? ニューウェーブ、テクノポップ、っていうのは。なんかね、そこで「よし、すぐ制作」っていう気が起きなくて、いったん考えたかったんだよね。それで家でデモを作る期間を長めにとってもらって、その時にいろいろ聴いたね。それこそXTCのファーストとか、自分がルーツで聴いてたものも……ファーストを出した頃のXTC、『BBC SESSIONS』のライブ盤があって。それ俺すっごい好きで、でも5年ぐらい聴いてなくて、久しぶりに聴いてみたのね。そしたら、すっげえよかったのよ。当時のキーボードのバリー・アンドリュースが、ソロで鍵盤の上にガーッて座ってるような、はちゃめちゃなパフォーマンスが聴けて。今聴くとみんなめちゃ下手なのよ。でもなんか、このテンションは……あの頃のXTCは、俺はすごい影響受けてて。で、やっぱ俺、歌いたいなあ、みたいな気がして。歌うの好きだなあ、しかもそれが3分弱とかで、1曲の中にいろんな要素が詰まってて、展開の読めない構成だったり、せわしない感じだったり。やっぱ好きだなあ、それを今一度やりたいなあ、と思ってできたのが、このアルバムの「アルプスルンルン」だったり、「Goody-Goody」だったり。その青写真的なものが、パッと浮かんだんだよね。

──今言ったハヤシくんがやりたい音楽って、「それ、POLYSICSなんですけど」と、ファンの誰もが言いたくなると思うんですけども。

ハヤシ:そうなんだよね。それで、曲はできて、歌詞もできて、全部形にはなったの。で、レコーディングしたんだけど、なんかねえ……いいものにはなってたんだけど、歌詞の部分でちょっと「もっといきたいな」っていうのがあって。それまでPOLYSICSにとって歌詞って、言葉の響きだったり、発して気持ちいい言葉だったり、それがうまくはまればOKだったりしたんだけど。意味なんて伝わらなくていいし、響きさえよければ言葉が伝わらなくてもいいと思ってた。それが『ACTION!!!』までだったんだけど、それをまたやっていいのかなあ? という気がしたの。もちろん前までのままでも形になるんだけど、はたしてほんとにそれでいいのか? みたいなところはあって。歌詞に、多少の意味だったり……意味じゃないんだけど……意味なのか? ……あの、意味を感じる? この歌詞。

──じゃあ言いますけど、取材前に音と資料をもらったんだけど、それに歌詞が付いてなかったんですね。で、これまでだったら気にしなかったかもしれないけど、今回、アルバムを聴いて、「すみません、これ、歌詞あったら送ってもらえません?」って電話しました。

ハヤシ:へえー! ヤバい(笑)。そうなのかあ。だからまあ、「そこで歌詞でトライするって、やったことなかったなあ」と思って。何かを変えなきゃいけないと思ってる自分にとって、必要だったことなんだなあと思って。

「どうでもいいことを全力で歌うほうが俺は好きだし、そういうバンドが好きだね」

20160229-ps6.jpg

 

──そこでさらにややこしいのが……言葉で共感を得るとか、情に訴えるとか、そういうことをとにかくしたくない人じゃないですか、ハヤシくんは。

ハヤシ:(笑)。うん。

──だからこのアルバムの曲、言葉を武器にしたい、おもしろいものにしたい、でも情に訴える以外の方法を探さないといけない、というものになってるんですよね。

ハヤシ:あのねえ、そうなの。そこは全然変わってないよ。情に訴える音楽なんて……POLYSICSみたいなバンドをやってて、そんな音楽に影響を受けてない人が、そんなの歌ってもどうしようもないし。そんなこと歌う人はいっぱい世の中にいるし。それよりも、どうでもいいことを全力で歌うほうが俺は好きだし、そういうバンドが好きだね。

──ただ、本当にどうでもいいことではないんですよね。

ハヤシ:ええ? ああ、そう?

──共感を求めないし、情にも訴えないけど、「こういうふうに視点を変えるとこう見えます」みたいな発見はあるし、メロディとリズムにのっけることによって、その言葉が自分の知ってる言葉とは違うように響いたりするし。

ハヤシ:ああ、そうかあ……まあ、とにかく、歌詞は模索はしたねえ。わからないのもよくないし、説明しすぎるのもよくないし。そういうのでけっこう歌詞は書き直して、大変は大変だったけど、それがうまくはまった時に、曲の魅力がさらに増して……「こういう振り切り方もあるんだなあ」っていうのは、やってよかったなあと思った。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる