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スガ シカオの楽曲はなぜファンキーなのに胸を打つ? “のらりくらり”なコード進行などを分析

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黒田隆憲
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 今年1月にリリースされた、スガ シカオのニューアルバム『THE LAST』。前作『FUNKASTiC』からじつに6年ぶりであり、“二度目のメジャーデビュー作”かつ通算10枚目である本作は、ライナーノーツを村上春樹が寄稿したこともあって、各方面から大きな注目が集まっていた。そしてその内容も、本人曰く「J-POPになる前のスガ シカオ」。つまり初期の楽曲を彷彿とさせるような、高密度でヒリヒリとした緊張感が全体的に漂っている。それは、先行シングル「アストライド」を初めて聴いたときにも感じたものであり、21年というキャリアの中で、彼が試行錯誤を繰り返してきた様々な音楽スタイルを内包しながら、再び「スガ シカオ節」とでも云うべきエッセンスを凝縮した、まさしく集大成的な仕上がりとなっているのだ。

 そこで今回、その「スガ シカオ節」とは何であるか?について、主にコード進行などソングライティングの観点から検証してみたいと思う。

 ビートルズ(とりわけジョン・レノンとジョージ・ハリスン)を始めとする60年代ロックや、スライ・ストーンにジェイムス・ブラウンといった70年代ファンクミュージック、そして、それらに強い影響を受けたレニー・クラヴィッツなどから、大きなインスピレーションを受けたであろうスガ シカオのソングライティングは、デビュー当時からほぼ完成されていた。例えば、97年にリリースされた彼のセカンドシングル「黄金の月」は、リズムマシンと生ドラムの融合、ウラ拍を強調したベースライン、ワウワウギターなど、スライ&ファミリー・ストーンの「Family Affair」や「Runnin' Away」などを思い出さずにはいられない。コード進行は、Aメロが<D♭ - Cm7(-5) / F7 - B♭m7 B♭m7 - G♭ - Cm7(-5) / F7 - B♭m7 - B7 - B7>。キーはD♭で、3小節目、7小節目のVImは、「VIIm(-5) - III7」というツーファイブによって導かれている(III7はセカンダリー・ドミナントコード)。8小節目、9小節目のB7は、A♭( V=ドミナントコード)の代理コードだ。メロディはファルセットと地声を巧みに使い分け、中性的な雰囲気を醸し出す。そこからブリッジを挟まずいきなりサビへ。コード進行は、<D♭ - A♭m7 - G♭M7 /F7 - B♭m7 -  G♭M7 /F7- B♭m7 - G♭M7 /F7- B♭m7>。A♭m7はドミナントマイナーコードで、奥田民生も多用している響きだ(http://realsound.jp/2015/10/post-4787.html)。また、サビだけでも3回出てくるコード進行「G♭M7 /F7- B♭m7」は、ビートルズの「Sexy Sadie」(ジョン・レノン作)や、レニー・クラヴィッツの「I Build This Garden For Us」などでも印象的に使われている、いかにもビートルズっぽい(ビートリーな)コード進行だ。

 同じく97年にリリースされた、通算4枚目のシングル「愛について」はキーはBで、Aメロが<B - D# - G#m - C# - C#m - D# - G#m A>。D#は、G#mに対するドミナントコード(セカンダリー・ドミナントコード)となり、よりスムーズに進行しやすくなっている。サビは、<BM7 - D#7 - G#7 - C#m7 - D#7 - G#m7 C# - A>の繰り返し。ここでもセカンダリー・ドミナントコード(2小節目のD#7、3小節目のG#7)や、V(ドミナントコード)の代理コードAが用いられている。

 他にもスガ シカオの楽曲は、Aメロでは1コードないし2コードによるファンキーなリフレインと、主にペンタトニックモードを用いたメロディラインによって構成され、4~8小節程度のブリッジを挟んでサビで一気にバーストするパターンが多い。「かわりになってよ」(00年)や、「91時91分」(10年)などはこのパターンだ。

     
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