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太田省一『ジャニーズとテレビ史』第八回:Hey! Say! JUMP『いただきハイジャンプ』

Hey! Say! JUMPが見せる“シェアハウス”的な関係性 冠番組『いただきハイジャンプ』から魅力を紐解く

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太田省一
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(C)タナカケンイチ

 グループ初の単独カウントダウンコンサートを京セラドーム大阪で開催することになったHey! Say! JUMP。今年2015年は日本テレビの「24時間テレビ」でメインパーソナリティーをV6とともに務めるなど、まだ発展途上と言っていいグループが全国的知名度を高めるきっかけになった一年と言えるかもしれない。

 個々のメンバーの活躍の場も広がっている。今年演技面でのことに限ってみても、山田涼介は『暗殺教室』で映画初主演を果たしたし、中島裕翔は『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系)で好演を見せ、来年1月公開予定の映画『ピンクとグレー』で初出演・初主演となる。同じく知念侑李も来年ではあるが、映画『金メダル男』で内村光良とダブル主演を務める予定だ。また舞台では、伊野尾慧が『カラフト伯父さん』で初主演、藪宏太は記念すべき『滝沢歌舞伎 10th Anniversary』に出演した。有岡大貴、八乙女光もそれぞれ連続ドラマへの出演があった。

 ただ、こうした俳優としての活動は、岡本圭人や高木雄也も含めてこれまでの延長線上にあるものだ。その点最近目につくのは、グループ、個人両方でのバラエティ番組への進出だろう。

 以前から山田涼介、知念侑李、八乙女光の『スクール革命!』(日本テレビ系)への出演などはあったが、その動きは昨年あたりからぐっと顕著になった。例えば、有岡大貴と八乙女光が『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)に昨年4月から火曜レギュラーとして出演、同じく10月からは『リトルトーキョーライブ』(テレビ東京系)(現在は『リトルトーキョーライフ』にリニューアル)で週替わりMCとしてグループでさまざまな企画に取り組んでいる。

 そして今年、グループ全員での冠バラエティも始まった。7月からレギュラー化された『いただきハイジャンプ』(以下、『いたハイ』)(フジテレビ系)だ。

 この番組、基本は毎回メンバーの誰かがロケに出て、「世の中の一大事」を解決するために体を張って奮闘するという挑戦ものである。例えば、食べ放題の店でどれくらい食べれば元が取れるのか、とかメンバー全員が力を合わせてボウリングでパーフェクトを達成できるか、といった具合だ。

 言うまでもなく見どころは、メンバーの素の姿や思わぬキャラクターが垣間見えるところにある。限界ぎりぎりになりながら頑張る姿やメンバー同士で協力し合う姿に、歌や演技のときとはまた違う表情がのぞく。『ごくせん』の不良役のイメージも強い高木雄也が、苦手意識のあった絵を先生に褒められて泣きそうになったり、「ゴーヤの妖精」の着ぐるみで一生懸命子どもとコミュニケーションをとろうとしたりする姿などは、まさにその好例だろう。

 ただそれは、この『いたハイ』だけに当てはまることではない。同じジャニーズグループによる体を張ったロケ番組ということならば、現在『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』(TBS系)もある。スタッフがメンバーをいじって盛り上げる演出がある点も似ている。

 そう考えたとき、ロケ企画自体も十分面白いのだが、『いたハイ』でむしろ新鮮に感じるのは、一見何気ないスタジオでの全員によるトークの場面である。

 それはフラットさの魅力とでも言えるだろうか。こうしたバラエティ番組のトークでは、ひとり決まったMC的な回し役がいて、他の出演者のキャラを引き出しながら進行していくことが多い。その場合、MCが主導権を握り、他の出演者がそれに従うという一種の上下関係がどうしても生まれる。ところが、この『いたハイ』を見ているとそうしたタテの関係性が全くといっていいほど感じられない。回替わりとは言えMCもいて、メンバーもそれぞれ個性豊かなのだが、それよりもその場全体を包む和やかな優しい雰囲気がまず伝わってくる。

 それはきっとHey! Say! JUMPというグループの特徴でもあるのだろう。メンバーが9人と大人数にも関わらず、最大3歳差と年齢差が他のジャニーズグループと比べても小さい。最年長が1990年生まれで今年25歳、最年少で1993年生まれの22歳、グループ名の由来にもなっているように全員平成生まれである。リーダーも公式には決まっていない。

 スタジオ部分のトークで醸し出される和気藹々さは、そんな同年代の仲間的関係ならではの気安さからくるのではあるまいか。加えて、そこには常に時間をともにしている同居人といった風情が漂う。その意味では、シェアハウス的な関係性とも言えそうだ。帰国子女ということもあってか、独特の穏やかな雰囲気を持つ岡本圭人が要所でいい味を出しているのも、そんなフラットな関係性ありきのことのように思える。

 ところで、この『いたハイ』は、同じフジテレビの深夜バラエティということもあり、かつてフジが若手芸人を集めて作った『夢で逢えたら』(1988~91)や『とぶくすり』(1993~95)を思い起こさせるところがある。前者には今のHey! Say! JUMPと同じ年頃だった若き日のダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコ、野沢直子が、後者にも同じくナインティナイン、よゐこ、極楽とんぼ、光浦靖子などが出演していた。『いたハイ』からそうした番組を思い出すのは、今振り返ってみれば、『夢で逢えたら』や『とぶくすり』の出演者同士の関係性もまた、誰が上で誰が下とかを感じさせないフラットなものだったからかもしれない。

 『とぶくすり』は、後に『めちゃ²イケてるッ!』(『めちゃイケ』)(1996年放送開始)へと発展したことでも知られる。そして『いたハイ』には、その『めちゃイケ』の匂いを感じさせる部分もある。

 例えば、レギュラー化初回の企画。母親と二人暮らしの幼い女の子が父親を欲しいと思っているのかどうかを聞き出すために、山田涼介が「1日パパ」になって遊園地で共に過ごす。伊野尾慧は影でいろいろ策を凝らしつつ、山田涼介を見守る。『めちゃイケ』でもおなじみの、企画の実行役とその見守り役という構図だ。

 またその回は、バラエティなのに企画のガチさが思わぬ感動を呼ぶところも『めちゃイケ』的だった。初対面では泣き出してしまったほどの人見知りの女の子が山田涼介の親身な接し方に少しずつ心を開いていき、最後本音を話すようになる姿は、VTRを見た後、八乙女光が「普通にリビングで観てたら泣いてるもん」と語ったほど感動的なものだった。

 さらに、気が置けない仲間同士のその場のノリが笑いを生むところも、『めちゃイケ』に通じるものを感じる。2015年12月2日放送回などは、その一例だ。

 この回、視聴者からのリクエストで山田涼介がデーモン閣下のメイクに挑戦した。予想以上の完成度の高い仕上がりやちょっと照れてしまう山田涼介も良かったが、その後の展開がさらに面白かった。「このメイクで言いそうにない一言は? 」というスタッフの問いかけに中島裕翔が最新シングル『キミアトラクション』内のいかにもアイドルらしい決めゼリフ「君がNo.1」と答えると、それに乗っかった全員が縦一列に並んで順番にカメラ目線でやっていく。そしてトリに登場した山田涼介がカッコよく「君がNo.1」と決めてみせるが、顔はデーモン閣下というわけだ。

 もちろんアイドルとお笑い芸人とでは、目指すところは自ずと違うだろう。だが、バラエティの系譜としては意外と近いのではないだろうか。『とぶくすり』も当初関東ローカル中心で始まり、最後は全国ネットゴールデンの『めちゃイケ』にまで成長した。『いたハイ』にもそんな未来をぜひ期待したい。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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