今井美樹ベスト盤に見る“2つの現代性”とは? 選曲とサウンドから探る

参考:2015年10月05日~2015年10月11日のCDアルバム週間ランキング(2015年10月19日付)(ORICON STYLE)

 米津玄師の3枚目となるアルバム『Bremen』がキャリア初の1位でフィニッシュ。「ニコニコ動画×ボーカロイド」というフォーマットで表舞台に登場したアーティストが自身の声を吹き込んだ作品で「(瞬間的にであれ)日本中で最も売れたアルバム」という称号を獲得するストーリーは、まさに「21世紀のジャパニーズドリーム」と呼んで差し支えないはず。本人もインタビュー(http://realsound.jp/2015/10/post-4852.html)において「自分ができるかぎりの普遍的な言葉と音を使って作品を作ってみたい」と語っているが、そんな心意気が現れた「王道」としての側面の強い今作によって、米津玄師は 90 年代のMr.Children、2000年代のBUMP OF CHIKENのような「世代の共通言語としてのメロディアスなロック」になり得る資格を獲得したのではないだろうか。

 さて、今回注目したのは米津玄師に次いで2位にランクインしている今井美樹のベストアルバム『Premium Ivory -TheBest Songs Of All Time-』。今作には2つの観点で極めて現代的な意味合いを感じたので、本稿ではそれについて考察したい。

 まず1つ目が、このベストアルバムのコンセプト。「今井美樹デビュー30周年目のアニバーサリーイヤーに、彼女のシンガーとしての足跡を辿る全レーベルの垣根を越えたオールタイム・ベストアルバム」という惹句は、7月の発売以来チャートにて驚異的な強さを見せている『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』(今週も10位にランクイン)が打ち出している「彼らが在籍した全てのレーベルの枠を越え、代表曲50曲がぎっしり詰まったコンプリートベストとでも言うべき内容」と重なる部分が多い(いずれも公式サイトより)。あらゆる音源がインターネットを介して聴けてしまう今の時代にベスト盤を出すのであれば、供給者の都合にとらわらず「文字通り“ベスト”な選曲」をしないと意味がない。「PRIDE」「PIECE OF MY WISH」といった90年代の名曲から最近の楽曲までがずらっと並ぶさまからは、そんな気概がうかがえる。

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