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兵庫慎司「ロックの余談Z」 第7回

日本人は「演歌のリズム感」から脱却したか? コンサートの手拍子について考えた

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兵庫慎司
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 日本の音楽リスナーのリズム感って、すさまじく変化したんだなあ。

 と、実感した出来事があった。昨年の暮れ、2014年12月16日&17日に横浜アリーナで行われた星野 源のライブ、その2日目=17日の方でのことだ。

 本編全22曲中の21曲目に「夢の外へ」をやったのだが、その時、超満員のオーディエンスほぼ全員のハンドクラップが、ちゃんとスネアの位置に入っていたのだ。

 いわゆる「裏」ということになるのか。「夢の外へ」は、「♪スッタンスッタン」というドラムの、とてもテンポが速い曲だ。うちのBPMカウンター付きCDJで再生してみたところ、平均BPMは113前後(中盤の3拍子になるところを除く)。これ、半分で計測しているから、2倍にすると226くらい、ということになる。

 そんな速い曲なのに、その「♪スッタンスッタン」のうちの「スッ」じゃなくて「タン」の方で手拍子を打っているのだ、横浜アリーナをびっしり埋めた1万数千人が。全体にすっごくいいライブで終始ステージに釘付けになっていたのだが、この時ばかりは星野 源よりもお客さんの方に感心してしまった。

 日本人は、表でリズムをとりたがる民族である。そしてそこが、日本人がロックに向かないことを表す、もっとも重大なウィークポイントである。

 というのが、僕が中高生の頃の、高尚っぽい音楽雑誌や音楽評論家の決まり文句だった。あ、「高尚っぽい」というのは、のちに僕が勤めることになるロッキング・オンではありません。ロッキング・オンはそのあたりのことは一切言わない雑誌でした。もっと音楽論とか技術論とかの方面に強い雑誌や評論家の方です。

 曰く、洋楽アーティストが来日公演を行った時に、まず最初に愕然とするのがそこである、と。表と裏でいうと表、キックとスネアでいうとキックの位置でハンドクラップを打たれる、その事実に英米から来たバンドは驚き、日本人との間にとてつもない溝を感じる、と。そもそも表でリズムをとるのは演歌や民謡のセオリーであって、日本人の身体にはそのリズム感がもう拭い難く染みついていると。だから日本人はロックなんか無理なんだ……。

 思い出しつつ書いてるうちに「おまえ何人なんだよ」と言いたくなってきたが、まあロックに限らず、映画でも小説でもなんでも「海外ではこうなのに日本では違う、だから日本はダメなんだ」みたいなもの言いが多かった気がする、1980年代あたりまでは。

 戦後すぐの生まれで、アメリカにカルチャーショックを受けながら育った世代がそういうことをよく言ったり書いたりしていた。作家でいうと景山民夫とか。で、その著作をすべて買っていた僕のような田舎のガキが、読んでいちいち怯えたり、気を落としたりしていたのだった。「そうか、日本人はダメなんだ」と。不健康な時代だったんだなあと思う。逆に「日本はこんなにおもしろい」みたいなテレビ番組だらけな現在も、それはそれで不健康な気がするが。というか、現在の方がさらに不健康か。

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