Flower、乃木坂46、chay……アーティスト出身“専属モデル”はなぜ増えた?

 近年、アーティストがモデル活動を行うケースが増加している。

 例えば、乃木坂46の白石麻衣は2013年より『Ray』(主婦の友社)の専属モデルとして活躍しているが、これに続けと西野七瀬が『non・no』(集英社)の5月号より同誌の専属モデルに起用されることが決定。さらに同グループの齋藤飛鳥が『CUTiE』(宝島社)に、橋本奈々未と松村沙友理が『CanCam』(小学館)にそれぞれ専属モデルとして起用されることが発表された。

 他方、これまでの音楽業界を振り返ると、以前に掲載したように(参照:【木村カエラ、きゃりーから、タカハシマイまで……モデル出身ミュージシャンの系譜を追う】)したように、木村カエラやきゃりーぱみゅぱみゅ、mimmamや三戸なつめなど、モデルからアーティストデビューを果たすケースが多かった。それがここにきて、前述の乃木坂46だけでなく、E-girlsの中心メンバーによるグループ・Flowerの藤井萩花が『JJ』(光文社)、佐藤晴美が『Ray』、坂東希が『Seventeen』(集英社)でそれぞれ専属モデルを務めているほか、シンガーソングライターのchayは『CanCam』専属モデルとしても活躍している。ほかにも大川藍(アイドリング!!!)や前島亜美(SUPER☆GiRLS)など、アーティストとしてデビューしたのち、専属モデルとして起用されるケースが増えている。

 こうした動きの背景とは何だろうか。ライターの香月孝史氏は、音楽業界・モデル業界の動きをこう分析する。

「2012年に白石麻衣をレギュラーモデルとして起用した『LARME』が現れ、創刊号と2号目が共に即日完売するという快挙を成し遂げました。これにより、雑誌にとっては元来女性ファンの多かった白石が読者を連れてくる形になり、白石にとっても普段のアイドルの顔とは違った一面を、世界観を作り込んだ同誌特有のテイストの中で表現してみせることにより、これまでアイドルに触れてこなかった女性ファンを開拓しました。『LARME』がアイドルを積極的に起用していることからもうかがえるように、このあたりから、女性の読者層が、ファッション雑誌を通じて同性のアーティストやアイドルをファッションアイコンやあこがれの対象として見る機運が高まっているように思います。一方で雑誌モデルから音楽業界に進出する例としては、きゃりーぱみゅぱみゅの大ブレイクが同時期にあり、またCzecho No Republicのタカハシマイのようにモデルとしてのイメージを強く残したまま音楽活動をする例もありますね。両業界がタレントを相互供給していくことにポジティブになっていることが背景にあるでしょう」

 さらに同氏は、各ファッション誌のアーティスト起用はよく練られたものが多いと続ける。

「グループの場合、適材適所で仕事が割り振られるため、モデル仕事にふさわしいメンバーが紙面に掲載されます。グループのことを知らない層にはまだ知名度の高くない乃木坂46の齋藤飛鳥が『CUTiE』の専属モデルになったのは、現在の同誌がとるガーリー路線との相性の良さが買われてのことでしょう。いわゆる赤文字系雑誌の『Ray』に起用されている同じ乃木坂46の白石やFlowerの佐藤晴美、『JJ』に起用されているE-girlsの藤井萩花・夏恋姉妹などをみても、アーティスト側と雑誌側がともにメンバーの適性を考え、不自然な起用に見えないように一番輝ける場所をしっかり提供している印象を受けます」

 最後に香月氏は、今後の見通しとして「現在のファッション雑誌はアーティスト育成の機能も果たしている」と明かした。

「雑誌側は、ブレイクする前から専属モデルとして継続的に起用していくことにより、媒体の中でそのアーティストを育てていこうとしています。そのアーティストが大成したとき、どの雑誌で専属モデルを務めていたかということも大々的に宣伝されることのメリットも大きい。これからもアーティストと雑誌が互いに利益を得るための構図として、モデルデビューは続々と起こるのではないでしょうか」

 今後もモデルとアーティストの交流はより活発になりそうだ。

(文=編集部)

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