WHITE ASHはロックミュージックをどう再定義した? 新アルバムのモダンな音楽性を分析

 先日テレビ番組でWHITE ASHのメンバーにインタビューをした際、現場の収録スタッフと面白いやり取りがあった。「アルバムリード曲の『Orpheus』のミュージックビデオはご覧になりました?」「はい」「オンエアではあれのフルバージョンが流れますので」「え? あれがフルバージョンですよね?」「え?」「いや、ホントに」。

WHITE ASH / Orpheus 【Music Video】

 まるでクイーン「We Will Rock You」のようなシンプルかつヘヴィなリズムトラックが印象的なアルバムの1曲目「Orpheus」。その全尺は2分8秒。というか、このアルバム、全11曲中、2分台の曲が6曲。で、残りの5曲もすべて3分台という圧倒的な潔さを信条としている作品なのだ。フェスで踊るためのロックだとか感情移入できる歌詞だとか、ロックが「何かの機能のため」に鳴らされがちな昨今のロックシーンにあって、ただ単にカッコいいだけのロックを鳴らせてみせた『THE DARK BLACK GROOVE』。そのアルバムタイトルからは、ただ明るいだけで(≠DARK)、黒人音楽からの影響など微塵も感じさせない(≠BLACK)、単調なビートに支配された(≠GROOVE)、現在のロックシーンへのカウンター意識を感じずにはいられない。

 もっとも、のび太(ボーカル&ギター)を筆頭とするメンバーたちには別にそのような裏の意図はなく、単に自分たちがカッコいいと思うロックを追求していった結果、辿り着いたのが今回の作品なのだという。4人で「せーの」で録っていったこれまでの作品とは違って、コンマ何秒単位の意図的なズレまで神経を研ぎ澄ませてパートごとにレコーディングしていったという今作。実はドラムのトラック一つとっても、打ち込みの音に生の音を何重にも重ねていくという念の入れよう。とことんシンプルでソリッドなサウンドを追求していく過程で、実は複雑で手間のかかる手法をとっているというのが興味深い。

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