乃木坂46は今後どこに向かうのか? レイチェル×さやわか×香月孝史が徹底討論(前編)

 10月8日に10枚目のシングル『何度目の青空か?』をリリースした乃木坂46。これまでセンターは生駒里奈、白石麻衣、堀未央奈、西野七瀬の4人が務め、同シングルでは生田絵梨花が初のセンターに抜擢された。リアルサウンドではこれまで乃木坂46について、様々な分析・考察記事を展開してきたが、今回は節目の10枚目を迎えたこと、そして未だリリースされていない1stアルバムが待望されるなか、彼女たちについての対談を実施。ライター・物語評論家のさやわか氏、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者で、AKB48グループや乃木坂46に詳しいライターの香月孝史氏、講談社主催の女性アイドルオーディション企画「ミスiD2014」の準グランプリであり、乃木坂46の熱烈なファンとして知られる、わたしがレイチェル氏を迎え、乃木坂46の魅力についてや、ライバルグループであるAKB48との比較、アイドルシーンにおける立ち位置などについて、存分に語り合ってもらった。

「近年の『ラクロス部的』な体育会系アイドルとはちょっと違う」(さやわか)

――乃木坂46がほかのアイドルグループと異なり、オリジナリティを発揮できている部分はどこだと思いますか。

わたしがレイチェル(以下、レイチェル):安心感…ですかね(笑)? 私は地下アイドルも好きなんですけど、それに比べるとすごく安心感があるんです。衣装も上品な感じで、お嬢様っぽい膝丈の白いソックスとか、そういうところにグッと来るし、見ていて和やかな気持ちになります。同じ雰囲気を醸し出すアイドルは他にもいるとは思うんですけど、メジャーシーンでその雰囲気を全面に出しているのは乃木坂46がメインだと思います。曲もミドルテンポなものが多くて。

さやわか:乃木坂46の公式ライバルであるAKB48をはじめ、近年のアイドルってマッチョな体育会系で、言ってみれば「ラクロス部的な感じ」なんですよね(笑)。見た目は華やかだけど意外とハードというか。そういう意味で乃木坂46は、AKB48と対になるものとして、女の子たちの穏やかな人間関係を見せる、癒しを提供するグループという印象を受けます。もちろんAKB48も、女の子同士の人間関係が面白いグループではあるんですが、また一風変わったものがあります。

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左から、わたしがレイチェル氏、さやわか氏、香月孝史氏。

香月孝史(以下、香月):そうですね。AKB48には、女の子同士の仲の良い感じを楽しませつつ、運営側が恣意的な物語を頻繁に放り込んでくるので、戦わざるをえない状況が勝手にできてきます。ファンもそれに慣れきっていたところで乃木坂46を見ると安心します。一方でAKB48と比べて、物語の速度が遅いという見方もあります。

さやわか:それもある意味、AKB48に対する逆張りかと思いますが、たしかに見方によってはコンサバティブにも見えますね。ただ、あそこまで保守的な感じでやると、かえってラディカルな面白さがあります。ほかのアイドルグループがガツガツした感じでやっている中でゆったりとしていると、それが特異なものとして浮かび上がってくる。だからだんだん時間をかけて認知されるようになってきたわけですよね。面白いものだと気付かれるのに少し時間がかかる。

香月:単にコンサバティブというだけじゃなくて、AKB48のスピード感にみんなが慣れたところであの感じが放り込まれたので、ラディカルに見えるということですよね。

さやわか:AKB48と対比すると、まさに漫画なんかに登場するライバルキャラのように逆の個性が重視されていて面白いと思います。

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