TAMTAMが最新作で打ち立てた“音楽的な自由”とは?「今のダブ・バンドとしてどこまでやれるか」

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 ダブを土台にしつつ、シューゲイザー、ポストロック、さらにはクラブミュージックの多彩な要素を融合させた最新型“ダブ・ロック”バンドのTAMTAMが、9月17日にメジャー1stフルアルバム『Strange Tomorrow』をリリースした。リリースから1ヶ月経った今だからこそ、客観的に捉えることができる今作の全貌とは? 今回のインタビューでは作品論に加え、日本の音楽シーンにおけるダブバンド・TAMTAMの位置づけや、“ダブバンド”のそもそもの定義、さらには楽曲の構築方法など、TAMTAM自体の成り立ちについてもじっくりと話を訊くことができた。聞き手は小野島大氏。

「偶発性があって面白いのがライブで、狙って作っていくのが楽しいのが録音物」(Affee)

――リリースされて約1ヶ月ほど経ってますが、だいぶ冷静に聞けるようになってきたんじゃないですか。

Kuro:そうですね。個人的に自分の作品は出してもあまり聴かなかったんですけど、今回…その前のぐらいから普通に聴けるようになりました(笑)。

Affee:聴いちゃうねえ。僕、自分のはまったく聴かなかったんですけど。

――なぜ?

Affee:他の曲を聴きたいっていうのもあるし、あとアレンジをどんどんやらなきゃいけない。できるだけ新しいものに更新していかなきゃいけないので。

――レコードになってもそれが最終形ではなくてどんどん変わっていくと。

Affee:ライブ用にどんどん変えていくんです。今作もそうなんですけど、ライブでやってる曲を入れてるわけじゃなくて、アルバム用に曲を書いて、録音してからライブでやる感じなんです。

Yuthke:レコーディングの時は部屋で聴く前提で作ってるんですけど、ライブで見せる時のアレンジはまた変わってくるし。

Affee:今回特に重ね録りを積極的にやったんです。今回は録音物としてちゃんとやっていこうと。エフェクターもダブ系のエフェクターをいろいろ使って。ライブの時はそこからまた削ぎ落として見せることを考えて。

――じゃあ今作はライブでは再現できないところもある。

Affee:一部あります。

Yuthke:再現性はそれほど気にしてないところがあるかもしれないですね。

Kuro:多重録音してると楽しくなっちゃうところもあって(笑)。音源として聴いた時にミチッとしたところがあった方がいいかなと思っています。

――レコーディングとライブはどっちが楽しいですか。

Affee:どっちも楽しいですけど…全然違いますよね、感覚的には。ライブだとお客さんの反応がすごく大切で、ある意味丁寧にやるよりもかっこよくやる方が大切ってところがあると思うんですけど、レコーディングは構築物として作っていったほうが楽しいかなと。

――ダブはもともとレコーディング・アートだから。

Kuro:はい。

――レコードだと最終的に自分たちが納得いく形まで仕上げられるけど、ライブだと最終的にお客さんにどう聞こえてるか自分たちにはわからない。

Affee:そうですね。

Yuthke:僕ら演奏している時、ダブした音はモニターで返ってきてないんです。ダブの音がお客さんにどう届いているか、実は本人たちは知らない。

――ダブワイズした状態でモニターしてもワケわからなくなっちゃいますもんね。

Yuthke:そうなんです(笑)。

――ライブだとPAエンジニアの方にある程度お任せという形になるけど、レコーディングだと最終形まで自分たちで納得いくように作れる。

Affee:そうですね。偶発性があって面白いのがライブで、狙って作っていくのが楽しいのが録音物かなと思いますね。

――最近自分たちの作品を聞き返すようになったというのは、録音物として納得のいくものが作れるようになってきたということですか。

Kuro:私はもろにそうですね。歌詞とか前向きな気持ちで書いてなかった時期もあったんですけど…最近あまりためらいがなくなってきて。
――前向きな気持ち?

Kuro:歌詞を書くこと自体、あまり好きじゃなかったから。何言ってるかわかんないぐらいがちょうどいいと思ってたし。歌詞なんて響きぐらいでいいじゃんって。思ってることを書いて出すなんて恥ずかしい行為だと思ってたんです。Spangle call Lilli lineとか、あまり歌詞に意味がないんだけどーーあったら失礼だけど(笑)ーー言葉の響きがいいからいい、みたいなバンドが前は好きだったから。でも最近はそうでもなくなってきて、歌詞を書くのがけっこう楽しくなってきたんですね。となると自分の歌を聴くのも苦痛じゃなくなってきて(笑)。

――苦痛だったんですか(笑)。それが変わってきたのはなぜですか。

Kuro:なんか…たぶん人前でいっぱい歌うようになったから、歌ものなんだし、聴く人に届くような言葉の方がいいなって。お客さんと向き合ってると、そういう心境の変化みたいなのはあったかもしれない。

――ボーカリストって一般には歌うのが好きな人が多いですけど…。

Kuro:(笑)全然そうじゃなくて。もともとトランペットやってて、インディーズの時は、ずっとインスト・バンドにしようよって言ってたぐらいで。歌いたいとか、歌うことで何かを伝えたいと思ってボーカルを始めたわけじゃないから。

Affee:ダブ・バンドをやろうと思って始めたバンドだったんで、トランペットを吹きつつ時々歌うみたいなポジションだったのが、徐々に歌うことが中心になってきてね。

Kuro:曲を作るのは楽しかったんですけど、歌うことには比重がいかなかったですね。

――なぜ歌うようになってきたんですか。

Kuro:なぜですかねえ…曲が歌ものライクになってきたというか。メロディがすごくしっかりしてきて、そういう曲もだんだん作るようになってきたからかな。

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