TOWA TEIが語るソロ活動20年の原点「毎晩DJが作る時間のカーブを自分も描きたいと思った」

「ディー・ライトと出会って良かったのは、ポジティヴでいるとポジティヴなことが起こりやすいよって教えてくれたこと」

――そのへんのことはお話を聞くだけでワクワクしてきます。そもそもテイさんはデザインの勉強でニューヨークに行かれたんですよね。

テイ・トウワ:そうですそうです。

――それがなぜ音楽の道に進むことになったんですか。

テイ・トウワ:音楽は趣味の範疇でずーっとやってたんですよ。僕は一浪して武蔵美の短大に行ってて、4大に編入を狙ってたんだけど出来ず、ブラブラしてたんだけど親に、海外でデザインの勉強してこいって言われたんですよ。でも海外って言われても僕は英語なんて全然できない。その頃は坂本龍一さん周りのバイトとかやってて、ナム・ジュン・パイクさんの下の人とかと話す機会はあったんだけど英語が喋れないからすごいストレスで。”残念な自分”だったんですよ。デモ・テープを坂本さんに送ったのがレコード化されたり、そのディレクターの人にジャケットのデザインも頼まれたり、その人に言われてCMのコンペに出したら勝っちゃったりして。それで当時坂本さんがいたmidiレーベルでソロ・アルバム出さないかって言われたんですけど、”いや無理無理”って。そのころ同時期にやってたのがコンスタンス・タワーズとか。知ってます? 岸野(雄一)君とか常磐響とか松前(公高)君がやってた。でも僕はあんなに器用じゃないし無理無理無理って(断った)。だから音楽はあくまでも趣味のつもりだった。でもいざニューヨークに行ったら、クラブがほんと面白くて。昼間は学校に行かず一日中レコ屋をハシゴして、夜は毎晩クラブ通いですよ。そうするうち、行った年の秋にはDJになれちゃったんで…。

――(笑)展開が急すぎる。なぜいきなりDJになれたんですか?

テイ・トウワ:それ、いろんなところで話してるんではしょって言います(笑)。ある時1本目のテープを作ったんですよ。

――ミックステープ?

テイ・トウワ:はい。居候がタンテのセットを買って、帰ったあとに家賃代わりに置いていったものを使って、レコードは一杯あったから作ってみたんですよ。90分の、ファンクからハウスから入ってる。ジェイムス・ブラウンから始まって、というのは覚えてますね。それをコピーして好きなDJに渡そうと思って。その一人がディミトリ(ディー・ライトのDJディミトリ)だったんです。すごい(感覚が)自分と近いと思ってたから。P・ファンクからJBからロニー・リストン・スミスから、みたいな。いきなり"Riot in Logos"(坂本龍一)をかけてみたりとか。良く知ってるなあ、と思って見てたから。

――ディミトリはその頃もう有名だったんですか。

テイ・トウワ:町の有名DJ、人気DJ、ってとこですかね。彼がテープを聴いてくれて興奮して。会ったんですよ1週間後に。そうしたら”You are born to be DJ”って言ってくれたんですよ。”俺らはソウル・メイトだ”って興奮してて(笑)。それで〈Deee-Lite〉ってまだeが2つだった4曲入りのカセットをくれたんですよ。帰って聴いてみたら、クスクス笑っちゃうような拙い打ち込みだったんですけど、いい曲だなって思った。そこから何曲かはセカンドに入ったりしたんですよ。それはQティップやジャンブラを手伝う前なんですけど。それでディミトリに”テープ面白かったよ。ウチにコンピューターもサンプラーあるから、ちょっとしたことだったら出来るし、手伝うよ”って声をかけたのが最初だったんです。で、昼過ぎにウチに来てランチ食べて、毎日打ち込みやって作って。1発目に作ったーー未発表なんですけどーー「The Game」って曲があるんですけど、それの出来がすごく良くて、そこでみんな興奮して”トウワと作った途端にみんなの反応が変わった!”みたいな。

――その時はもうボーカルは(レディ・ミス・)キアーだったんですか?

テイ・トウワ:キアーです。で、それで既にある曲を僕がアレンジしたり、“What is Love?”とか“Grooves in the Heart”を僕が新たに作って、レコード会社にテープを送ったんです。“トウワと会う前はテープを送ってもいつも返事の文面が同じだった。<才能に満ちているとは思いますが今回はタイミングがあいませんでした>ってテンプレートみたいな返事ばかりだったのが、トウワが入ってから担当者が電話をくれるようになった”って(笑)。よかったねえ、って返事して。まだ他人事だったんですよ(笑)。ディミトリは週末の木金土はDJやってたんで、ダウンタウンの小バコに遊びに行ったら、“トイレに行くから今の曲終わったらこれかけといて”って言われてやったんだけど全然帰ってこなくて。そのままやってたら、背後に煙の匂いと人気を感じて、振り返ったら(店のオーナーが)来週から来てくれって。翌週からレギュラーでDJをやるようになって。

――めちゃくちゃ順調というかラッキーですね。

テイ・トウワ:そう思うでしょ? 昨日も言われましたよ。テイさんはラッキーな人ですねって。そんなことないんですよ(笑)。人生、みんな同じように辛いこともあるだろうし、楽しいこともある。辛いことがなければ楽しいことを楽しいとは思えないだろうし。僕はコンプレックスの固まりだし、もともと根暗だし。ほっとくと暗い曲ばかり作ってますから。でもダークな曲だったり人を脅かすような曲ばかり作っていると、調子が悪くなってきますよね。若かったり体力があって、怒りに満ちてる人はそれができると思うけど、僕は無理ですね。ディー・ライトと出会って良かったのは、ポジティヴ・シンキング…じゃないけど、ポジシンでいるとポジティヴなことが起こりやすいよって教えてくれたことですね」

――なるほど。じゃあ最初はディー・ライトのメンバーに誘われたわけじゃなくて。

テイ・トウワ:そう。2回目のライブを見たら、もらったデモテープの曲をやってて。ダンサーが2人いて踊ってるんですけどそれがめちゃくちゃ面白くて。3回目のライブの時には僕もステージの上にいました。無理やりあげさせられて。でもメンバーというよりはお手伝いしてる感覚で。

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