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冬将軍がBUCK-TICK新作を分析

BUCK-TICKサウンドはなぜ変貌し続ける? 大いなる実験作『或いはアナーキー』を紐解く

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20140604-buck-tick-01-thumb.jpg本日、6月4日19時よりニコニコ生放送の配信も決定しているBUCK-TICK。詳細は文末にて。

 BUCK-TICKは我々の期待を裏切ってきたバンドだ。もちろん良い意味で。目まぐるしく移り行く音楽シーンの中で、次々と先進的な音楽と予想だにしない世界を見せてくれた。チャートやブームに影響されることなく、メインストリームからは離れた場所にいた。世間からは大きく注目されることは少なくとも、邦楽に興味のない洋楽ファンにだって誇れることが出来るバンド、それがBUCK-TICKである。そして今ここに、またとんでもない1枚が放たれた。『或いはアナーキー』約1年9カ月振りとなるニューアルバムである。

 力の抜けたギターのカッティングで今作は幕を開ける。呪文のように連呼される“Gadji beri bimba – ガジベリビンバ -”が表すような、今井寿のナンセンスな言葉遊びが、櫻井敦司とのツインボーカルによって強烈なインパクトを与えるディスコナンバー「DADA DISCO」。そこから星野英彦作曲「宇宙サーカス」の流れは、ゴシックで妖艶なバンドイメージとは対照的な“ひねくれた”ポップ感が炸裂する。これもまた魅力の一つであるのだが、先行シングル「形而上 流星」のノスタルジックで優美な流れからは思いもつかなかった、予想の斜め上を行くものだ。まさに“GJHBKHTD”、そう、この“してやられた感”こそが、BUCK-TICK流の裏切りである。

森岡賢ら、多彩なアーティストの参加

 トリビュート盤『PARADE II』で、奇をてらったニュー・ウェーヴなセンスが今井のひねくれポップセンスと融合し、想像以上に相性抜群だったハヤシ(POLYSICS)を始め、今作には様々なアーティストがマニピュレーター、プログラミングとして名を連ねている。YOW-ROW(GARI)参加の「メランコリア」は先行リリースされたものとは一味違うエレクトロ要素があり、無機質ながら哀愁感を引き出している。Cube Juiceは「形而上 流星」のどこか和情緒漂う、わび・さびのコントラストをより色濃いものにして、今作の“死ぬほど美しい”最後を飾る。どの楽曲もクリエイター各々の個性が見え隠れするものの、打ち込み主体で引っ張るというより、あくまでBUCK-TICK世界の美をさらに強調するものになっている。

 注目すべきはやはり、森岡賢の参加だろう。「VICTIMS OF LOVE with 黒色すみれ」では和風ゴシックの演出に貢献していたわけだが、今回はピアニストとしての参加だ。櫻井の歌と森岡のピアノ、合わないはずがない。「世界は闇で満ちている」という、暗さを連想させるタイトルを、ピアノを基としたストレートなアレンジで、艶めかしい歌とともに美しいものに浄化していく。SOFT BALLETとBUCK-TICK、80年代に前衛的なインダストリアルロックを提示してきた盟友の共演にも関わらず、シンプルで王道な歌謡曲のアコースティックなアレンジに仕上がっている、というのが実に面白い。とは言え、イントロの“いなたい”ギターとアウトロのポストロックアプローチの対比も注目すべきところである。

稀有なツインギター

 BUCK-TICKの世界を彩るギターに注目してみよう。いつになく、全編を通してクリーン/クランチを中心とした歪み成分も音数も少ないシンプルなサウンドとアレンジだ。左チャンネルに今井、右チャンネルに星野と振り分けられた曲も目立ち、初期によく見られたカッティングなどの絡みが多いことが興味深い。かつてはギターシンセやノイズを駆使し、エフェクタリストという異名を持った今井だが、そのトリッキーなプレイを除けば、従来のツインギターバンドにおけるリードといったような明確な役割がないのもこのバンドの特徴である。1曲の2人分のギターを1人で担当する場合もあるという稀有なツインギターバンドでもあるのだ。そして、前衛的な音楽性を持ちながらも決してギターの音圧で勝負するようなバンドではなかったことに改めて気付く。

 「疲れるギターは星野、楽でおいしいフレーズは今井」は、お馴染みのBT流ツインギターの様式美。シンセベースとテンポ感が往年の名曲「M・A・D」をどこなく彷彿とさせる「Devil’l Angel」で聴くことが出来る、巧みに心地よく入る右チャンネルのカッティングとは裏腹に、自由奔放に弾いている左チャンネルのギター。弾きまくるわけでも音数も多くないのに、やけに耳に残るのは流石としかいいようがない。

      

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