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宇野維正が3年半ぶりの"マイケル新作”を紐解く

世界最速!? マイケル・ジャクソン新作『XSCAPE』レビュー

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宇野維正
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 「マイケル・ジャクソンのニューアルバムが5月にリリースされる!」。3月31日、全世界を駆け巡った驚きのニュース。『XSCAPE』というタイトルと宇宙の向こう側からマイケルがこっちの世界を覗いているような印象的なアートワーク以外は、すべてがベールに包まれていたその作品を、いち早く聴くことができた。全8曲すべてが完全な「新曲」となるその音源は、ソニーミュージック本国のエグゼクティブが日本まで手荷物として持ってきたもので、視聴会はそのエグゼクティブ立ち会いのもと1回のみ、曲目リストやクレジットも一切非公開と、厳重な情報管理が敷かれていた。

 マイケル・ジャクソンのニューアルバムというと、思い出すのはマイケルが亡くなった翌年、2010年12月にリリースされた『MICHAEL』のことだ。その前年、亡くなる直前のマイケルのリハーサル風景を収めたドキュメンタリー映画『THIS IS IT』の大ヒットをピークとする世界的なマイケル再評価のムーブメントを一段落させてしまったのは、結果的にはその『MICHAEL』という作品だった。ニューアルバムと呼ぶにはサウンドの統一感を欠いていた『MICHAEL』は、今思えば「マイケルの新作」としてファンが素直に受け止めるには時期尚早だったし、収録されていたAKONや50 Centといった同時代のヒップホップ系人気アクトとの共演もあまり的を射たものではなかった。

 おそらくは、それを踏まえてのことだろう。あれから約3年半という年月を経てリリースされる今作『XSCAPE』を聴いた印象は、未発表曲集的な作品だった『MICHAEL』とはまったく異なるものだった。コンセプトに「コンテンポライズ」(=現代化)という言葉が用いられている今作は、確かにサウンドの処理やリズムのヘヴィさに今っぽい部分はあるものの、現在の音楽シーンの誰かに似ているようなサウンドではまったくない。マイケルの作品、特に全盛期の『THRILLER』『BAD』『DANGEROUS』の3作品の特徴は、それぞれの作品がその同時代のどこにもなかったサウンドを鳴らしているところにあった。その意味において、今作『XSCAPE』は極めて「マイケルの新作」的なキャラクターを持った作品と言える(曲によってはオーバープロデュースと感じさせるものもあるが)。

 また、楽曲そのもののクオリティも『MICHAEL』とは比較にならない。自分が聴きながら走り書きした手元のメモには、「『Rock With You』っぽい!」「『They Don’t Care About Us』に近いノリ」「『The Way You Make Me Feel』の続編?」「『Wanna Be Startin' Somethin'』的雄叫び!」といった言葉が踊っている。8曲中、少なくとも3曲ほどは全盛期の楽曲と遜色がないと断言してしまおう。バラード的なスローな曲が1曲もないのも個人的には好印象。膨大な未発表曲があると言われているマイケルだが、正直、これだけのレベルの楽曲がお蔵入りになっていたなんて、まるで狐につままれたような気分だった。

     
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