「人はどんな形であれ、音楽を求めていく」Plastic Treeの創作スタンスが変わらぬ理由

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ボーカル & ギター 担当の有村竜太朗。

 2013年に結成20周年を迎えたロックバンド・Plastic Tree(以下、プラスティックトゥリー)の音楽観や、その軌跡に迫るインタビュー後編。前編【Plastic Treeが振り返る20年の軌跡】では、その特有のバンド観や音楽的バックグラウンドに迫った。後編では、独自の詩世界や制作環境、そして3月5日にリリースするニューアルバム『echo』について、じっくりと語った。(編集部)

ーーでは歌詞のお話なんかも聞いていこうと思うんですが。確か2000年頃のインタビューだったと思うんですけど、有村さんのインタビューの中で『歌詞を書くっていうことは、自分の傷を人に見せて“大丈夫だよ”って言って欲しいことに近い』というようなことを仰っていて、凄く印象に残っています。今もそういう一面は今もありますか。

有村:うん、ありますよ。でもそういうのも最近は言葉を選ぶようになりましたけど(笑)。歌詞の中だけでそういう感情的になるようなことは伝えればいいかなって思ってて。多分元々歌詞を書いてる理由だとか、自己治癒的な意味合いっていうのは、あんまりもう念頭には置いてないですよね。もっとこう、どシンプルっていうか。

ーーどシンプル、といいますと?

有村:曲が出来たから歌詞を書くとか、メロディーに呼ばれたからそのメロディーで自分を紐解いていく、とか。曲によったりはするんですけど、まあ他のメンバーの曲もあるんで、曲があって後からそこに自分がどう出るか、っていうのもあるんですけど、自分が作るものに関しては同時発生です。

ーーなるほど。では楽曲の制作面ではいかがですか? ここ何作かの作品を聴くと、バンドの音楽的な欲求がより深くなっているように感じるのですが。

長谷川:そういう好奇心みたいなものは、作品を作る度にみんなあると思います。バンドのキャラクターとして“あれもこれもなんでもいい”ってバンドじゃないので、自分たちの中でルールみたいなものはあるんですけど。その最低限のルールみたいなものがちゃんとあれば、今はもうなんでもやってみたいよね、っていう感じ。

ーーその“ルール的なもの”というのは、どういうものですか?

長谷川:結局自分たちが楽しめるかどうかっていうことですかね。例えば新しい音楽がインプットとして入ってきてやってみたいと思っても、それをちゃんと自分たちで昇華して表現できるか、っていう、簡単に言えば自分たちが楽しめるかっていうのが大事なところで。音源作って、ライブでそれを演奏して、っていうサイクルが自分たちのなかでワンセットみたいになっているので。

ーーあまりライブで再現できないようなものは……。

長谷川:まあそういう、音源だけ存在してて、ライブではやらないみたいな曲がいずれあってもいいとは思うんですけど。でもなんとなく自分たちのキャラクターを考えると、今のところは音源とライブっていうのはわりと密接に存在してるんで。

個人がやってみたいと思うことを、どんどんやってみようと

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ベース担当でリーダーの長谷川正。

ーーそれでは新作の『echo』についてお伺いしていこうと思うのですが、非常に冒険作というか、攻めている作品だなと感じました。メンバーそれぞれがコンポーズした曲があって、1曲1曲のキャラがすごく強いけれど、きちんと1本の筋があって、ひとつの物語になっていて。その辺の擦り合わせの作業というのはしたんですか?

有村:初めに枠を作って、っていうのはなかったですけどね。でも今回はデモを集めてみんなで曲を選んでるときから、かなりパーソナルな曲が多くなるだろうなという感覚があったので、プリプロ作業にはかなり時間をかけました。これまではバンドでもうちょっと馴染ませて、手応えをしっかり掴んだものから選んでいって作っていくっていう方法論が多かったと思うんですけど、今回はもうちょっと個人がやってみたいと思うことを、どんどんやってみようっていう感覚があって。

ーー曲作りにおいてもかなり自由な感覚で作った、と。

有村:そうですね、デモを作る段階までは個人の作業なので、いつもは作っていく中で“バンド的にどうなんだろう?”っていう曲はちょっと置いとくんですけど、今回はそういう曲に関してもやってみようと思って。全員のノリが合わなくても、誰か反応する人がいたらそこでやってもらうっていう。

ーー先行公開されているラストチューン『影絵』も3連のロッカバラードで、今までのプラスティックトゥリーにありそうでなかったタイプの楽曲ですよね。

Plastic Tree - 影絵【MUSIC VIDEO】

 

有村:この曲に関しては自分が今作ってみたかった曲で。曲自体は昔からあったんですけど、自分がつくったものをバンドに投げて、肉付けしてもらって、それをそんなに整理しないで出した、って感じですかね。まあ今更ながらに気付かされたのは、“こういう曲作ってもプラになるんだなあ”っていうことで。結構ベーシックっぽい……でもありそうでなかった曲っていうのが作れて、プラスティクトゥリーの中にこういう曲が1ページ作れてよかったなあと思います。

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