ハードとソフトの両面から紐解く 『iPhone Duo』が目指した折りたたみスマホの真価とは

Apple初の折りたたみiPhone「iPhone Duo」

 Appleは、同社初の折りたたみiPhoneとなる『iPhone Duo』を10月23日に発売する。日本での価格は36万4800円(税込)〜で、ストレージは256GB・512GB・1TB・2TBの4種類を用意。カラーはスターホワイトとナイトスカイを用意する。

 正直なところ価格はかなり高い。同時に発表された『iPhone 18 Pro』は21万9800円〜、『iPhone 18 Pro Max』は23万9800円〜。Samsungの『Galaxy Z Fold8』も26万9880円〜なので、『iPhone Duo』はそれよりも10万円以上高いことになる。ノートPCが買えてしまう値段であることから、スマートフォンとして考えればかなり思い切った価格設定だ。

 Appleは折りたたみスマートフォンの後発でもある。SamsungやGoogleなどはすでに複数世代の製品を投入しており、この市場では先行メーカーが折りたたみ端末の使い方を模索してきた。Appleはそこへ後から参入することになる。

 しかも、『iPhone Duo』のフォルム自体、これまでにないものというわけではない。閉じた状態では縦長になりすぎず、開くと4:3に近い大画面になる、いわゆる「パスポート型」は、『Galaxy Z Fold8』や『HUAWEI Pura X Max』などですでに採用されている。

 それでもAppleは、この市場に36万4800円からという価格で参入した。では、どのような折りたたみiPhoneを作ろうとしたのか。ハードウェアの設計だけでなく、折りたたみ端末に合わせたソフトウェアの作り込みにも、その狙いが表れている。本稿では、『iPhone Duo』がどんな折りたたみスマートフォンを目指したのかを、ハードウェアとソフトウェアの両面から見ていきたい。

「折りたたみ」という既存概念を落とし込んだ『iPhone Duo』

 まずはハードウェアから見ていきたい。『iPhone Duo』は、外側に5.4インチ、内側に7.6インチのディスプレイを搭載。本体を折りたたんだ状態では外側の画面を、開いた状態では内側の大画面を使い分けられる。

 開いたときの表示領域は『iPhone 18 Pro』より80%、『iPhone 18 Pro Max』より50%広い。普段はスマートフォンとして持ち歩き、必要なときだけ開いて大きな画面を使う2つのスタイルを併せ持つ。

 この形そのものはAppleの新発明ではなく、閉じた状態でも横幅を確保し、開くと4:3前後の大画面になるパスポート型のフォルムは、すでにほかのメーカーが製品化している。

 Samsungの「Galaxy Z Fold」シリーズが代表的で、2026年に発売された『Galaxy Z Fold8』も7.6インチ・4:3の内側ディスプレイを採用する。Huaweiも『HUAWEI Pura X Max』で同じ方向の設計を採用しているほか、Googleの「Pixel Fold」シリーズやMicrosoftの『Surface Duo』など、スマートフォンを横に開いて画面を広げる製品は以前から存在するものになる。

 そこでAppleが力を入れたのが、折りたたみという形そのものよりも、その形を日常的に使えるiPhoneへ仕上げることだ。まずは耐久面。折りたたみスマートフォンでは、ディスプレイとヒンジの耐久性が重要な課題になる。『iPhone Duo』では、内側のディスプレイを複数の薄い層で構成し、折り曲げる部分への負担を抑える構造を採用している。ナノテクスチャー仕上げも施され、反射や映り込みを抑えながら、折り目を目立ちにくくする工夫も盛り込まれている。

 また、ヒンジに関しては100個以上の小型精密部品を使った設計を採用し、ディスプレイ中央部はカーボンファイバー製のサポートプレートで支える仕組みだ。筐体にはグレード5チタンを使い、IP68の防塵・防水にも対応した。

 パフォーマンス面もハイエンド級の構成だ。「A20 Pro」チップに加えて専用のディスプレイエンジンを搭載し、冷却にはベイパーチャンバーを採用する。一時はミドルクラスの性能になるとも予想されていたが、実際には3Dゲームも快適に楽しめるだけの高い処理性能を備えていた。

 バッテリーは本体左右に分けて搭載し、それぞれをひとつのシステムとして管理する。動画再生時間は内側のディスプレイで最大31時間、外側のディスプレイでは最大44時間。内外のディスプレイを同程度使った場合でも最大24時間ということで、一般的なスマートフォンと同等のバッテリー性能になっているようだ。

 カメラは48MP Fusionメインカメラと48MP Fusion超広角カメラの2眼構成で、2倍の光学品質ズームや4K/120fpsの動画撮影に対応する。また、折りたたみ構造の良いところとして、三脚要らずで撮影できるというメリットがある。端末を途中まで開いて自立させることで、外側のディスプレイをプレビュー画面にして、背面の高画質カメラで自撮りすることも可能だ。

 Appleは「折りたためること」に加えて、開閉する動作そのものを前提に、ヒンジ、ディスプレイ、筐体、冷却、バッテリー、カメラまで使いやすさを考えて設計している。折りたたみスマートフォンとして必要になる要素を、かなり高いレベルでまとめ上げた製品といえる。

 もちろん、将来的に折り目が劣化しないのかなど、長期利用では気になるポイントもある。それでも、現時点で考えられる折りたたみスマートフォンの理想像をAppleなりに突き詰めたのが、『iPhone Duo』なのではないか。言ってしまえば、「Appleが考えた最強の折りたたみiPhone」を形にした製品だ。

画面を開く動作まで考えられたソフトウェアとUI

 そして、『iPhone Duo』を語るうえでもうひとつ重要なのがソフトウェアだ。『iPhone Duo』では、内側の7.6インチの大画面を使ってiPadのように2つのアプリを左右に並べて効率よく作業できる。よく使う組み合わせは「App Pairs」として保存することもでき、次からすぐに呼び出せるようになる。

 また、画面が広くなったときに指がボタンに届きづらくならないよう、Dockや主要な操作ボタンが親指の届きやすい位置に配置され、使いやすさも確保されている。このあたりが、これまでのiPhoneとの大きな違いだ。

 『iPhone Duo』は画面を大きくしただけではなく、開いたときに「何をするか」まで変えられる。メールを確認しながらブラウザを開く、資料を見ながらメモを取る、動画を見ながら別のアプリを操作するといった使い方が、iPhoneでもできるようになる。

 ただ、ここには気になる点もある。『iPhone Duo』では既存のiPhoneアプリがそのまま動くものの、すべてのアプリが最初から7.6インチの画面をキレイに使えるわけではない。古いサードパーティアプリでは大画面の周囲に余白が残ることがあり、開発者が『iPhone Duo』向けにアプリを最適化するかどうかによって使いやすさが変わってくる可能性がありそうだ。

 また、ユニークなのが開閉時の画面遷移。外側ディスプレイが半透明にボヤけ、光を含んだガラスのように内側へ溶け込みながら、表示領域が広がっていくトランジションが採用されている。

 このトランジションによって、外側から内側へ画面がシームレスにつながるため、ユーザーは表示が切り替わったことを意識せず、そのまま操作を続けられる。ただの演出のように見えて、開閉という端末固有の操作に合わせてユーザーの戸惑いを抑える役割も果たしている。

 この表現は、2025年にAppleが発表した次世代のユーザーインターフェース「Liquid Glass(リキッドグラス)」の延長線上にあるものと考えられる。Liquid Glassが持つ半透明感や光の反射、奥行きのある表現は、こうした「画面が変化する」体験とも相性がいい。

 Appleではこれまで、カレンダーやメモ帳などに革や紙の質感、立体的な影を取り入れた「スキューモーフィズム」デザインが使われていた。それが2013年の「iOS 7」で大きく変わり、装飾を抑えたフラットなデザインへ移行した。

 当時のフラットデザインには、見た目をシンプルにするだけでなく、異なる画面サイズに対応しやすくするという実用的な意味もあった。特に「Apple Watch」シリーズのような小さな画面では、細かな質感や立体的な表現よりも、情報や操作を分かりやすく配置することが重要だった。

 だからこそ、2025年にAppleが「Liquid Glass(リキッドグラス)」を発表したとき、筆者は少し疑問に感じていた。なぜ、ここまで大きくUIを変える必要があるのだろうか、と。フラットなデザインに移行してから長く経った今、半透明の素材や光の反射、奥行きのある表現を再び取り入れる根本的な理由が、当時は今ひとつ分からなかった。

 ところが、『iPhone Duo』を見ていて、その疑問についてひとつの答えが見えた気がした。Liquid Glassそのものが『iPhone Duo』のために設計されたわけではないとしても、折りたたみというハードウェアの変化を自然な画面体験として見せるうえで、非常に相性のいいUIだったのだ。端末の使い勝手を大きく左右する機能ではないものの、ハードウェアの構造変化とソフトウェアの表現を一体で設計できるAppleだからこそ成立する、細かな工夫のひとつと言えるだろう。

Appleが考える「1台2役」は36万4800円という価格を正当化できるか

 ここまでを見ると、『iPhone Duo』が狙っているものが見えてくる。普段は5.4インチのiPhoneとして持ち歩き、必要なときには7.6インチまで画面を広げる。画面が大きくなれば、OSやアプリもそれに合わせて表示や操作方法を変える。

 メールを確認しながら別のアプリを使う。資料を大きな画面で読む。Apple Pencilで操作する。動画を見ながら別の作業をする。これまでiPhoneとiPadを使い分けていた場面の一部を、1台にまとめられるわけだ。

 もちろん、大画面を長時間使うならiPadのほうが快適な場面もある。それでも、普段はiPhoneとして使い、必要なときだけ画面を広げられることには、タブレットとは違う価値がある。

 とはいえ『iPhone Duo』を評価するうえで重要なのは、折りたたみ機構そのものよりも、画面を開いたときに何ができるのかだろう。開く動作に合わせてOSやアプリの使い方まで変わり、その状態を実際に日常で使いたいと思えるか。そこが、この製品の価値を左右する。

 そして、もうひとつ大きな判断材料になるのが36万4800円(税込)という価格だ。iPhoneとiPadを別々に持つのではなく、1台で両方の使い方ができることに、この価格を払う価値があるのか。実際に使ってみなければ分からない部分もあるが、ここが『iPhone Duo』を評価するうえで最大のポイントになる。

AIスマートグラス『Ray-Ban Meta』を2カ月使って分かったリアルな使用感 意外にも毎日使うのはカメラとスピーカー、AIは今後に期待

Ray-Ban Metaを2カ月使用。カメラとスピーカーは日常使いに便利だが、日本でのAI機能は発展途上。日常に自然に馴染むが、…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる