10代はなぜAIに悩みを打ち明けるのか 生成AIが「相談相手」になる時代をITジャーナリストが解説

AIにお悩み相談するのは当たり前?

 プロ野球巨人の阿部慎之助・前監督が5月26日、長女への暴行容疑で現行犯逮捕されました。謝罪会見で読み上げられた18歳長女の手紙によると、「父とのこのような大がかりなけんかというのは初めてのことであり、ChatGPTに相談した結果、匿名で相談できる児童相談所というものがありますよという形での説明書きがなされ、お電話をさせていただきました。」(一部抜粋)とありました。

 ネットでは「AI信者が増える未来が怖い」「AIを相談相手として使うのはリスクが大きい」などのAIへの相談に抵抗を感じる人がいる一方、「今回、AIの助言は間違っていなかった」と肯定する意見も飛び交っています。

 筆者はITジャーナリストとしてイマドキの若者とITについて取材を重ねてきました。本件に関しては様々な角度から論じられていますが、本稿では「10代と生成AIの関わり方」に絞り、その実態と向き合い方について説明します。

10代女性にとってAIは「相談相手」

 幼い頃からネットとともに育った今の10代にとって、生成AIは身近な相談相手です。内閣府が行った「生成AI利用者の利用実態に関するアンケート結果」(令和8年3月31日)(※1)によると、生成AIを毎日利用する10代男性は25.7%、10代女性は31.3%と、全体に比べて高い割合になっています。

 生成AIの利用目的に関しては、10代男性は「文章の作成・編集(メール等の作成、添削、翻訳、要約)」がもっとも多いのに対し、10代女性は「悩み相談」がもっとも多く、半数以上にのぼっています。

内閣府のアンケート結果
10代女性の半数以上が「悩み相談」に使っている(出所:内閣府)

 生成AIであれば相手に気遣いは無用です。毎日同じ話題を相談しても無視されることはありません。回答はすぐに得られ、こちらを強く批判してくることもありません。また、家族や友達に関する深刻な悩みをリアルな人間関係に知られたくないケースも多いでしょう。「誰にも知られず解決したい」「話を聞いてくれるだけでも救われる」ーーそういった思いで10代女性は生成AIを相談相手として活用しているのです。

 匿名のSNSに悩みを投稿する人も多くいます。TikTokで不登校について心の内を投稿している人の元には、「私も同じ」と同じ立場の人たちが集い、優しい言葉を投げかけています。でも、厳しいコメントもたくさん寄せられます。SNS投稿が炎上に発展することも増えた今、リスクの高い行動です。

 一方、生成AIはいつでも共感してくれます。調査では、「人間関係・人付き合いのアドバイス」について、10代女性の約6割、10代男性の約5割が信頼していると回答しています。まだ社会的、精神的には未熟であり、生成AIとの心地よい会話にのめり込んで信じてしまうこともあるのでしょう。

内閣府のアンケート結果
「人間関係・人付き合いのアドバイス」について、10代女性の約6割、10代男性の約5割が信頼していると回答(出所:内閣府)

 米国カルフォルニア州では、ChatGPTを「最も信頼できる相手」として悩みを打ち明けていた16歳の少年が自ら命を絶ったとして、両親がOpenAIとCEOのサム・アルトマンを提訴する事態も起きています(※2)。

 また、AIチャットボット「Character.ai」に依存して米国フロリダ州在住の14歳少年が命を絶ったとして、2024年10月に少年の母親が同社とGoogleを訴えていた裁判では、2026年1月に和解が成立しています。少年は、海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のキャラクターを模したAIチャットボットと約1年間にわたって感情的な関係を築いていたとされており、フィクションのキャラクターを模したAIであっても、深刻な依存が生じることを示す事例です。

学習にも活用される生成AI

 こうして書き出すと生成AIの負の面ばかりに気が行ってしまいますが、前述の調査では、生成AIによって「学習やスキルアップに役立った」と回答している10代は約35%、他に「時間の節約ができた(作業効率が上がった)」「新しいアイデアや発想が得られた」といった回答も多く得られています。

 2025年8月、Google Workspace for Educationの「Gemini」および「NotebookLM」が、学校のアカウント管理のもとですべての年齢層のユーザーに利用可能になりました。それまでGeminiは13歳以上、NotebookLMは18歳以上が対象でしたが、小学生を含む全年齢での利用が可能となっています。

 また、Microsoftは、学校のアカウントを持つ13歳以上の生徒を対象に、AI「Copilot」を利用できるようにしています。Copilotは子どもたちにとって安全なものに調整済みで、データ取得がないインターネット検索に特化したエージェントとして活用できます。

 日本の学校も、生成AIを積極的に利用する方向で動いています。文部科学省は2024年12月26日、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(※3)を公表し、生成AIを「使うかどうか」ではなく「どう使うか」という段階に移行したことを示しています。

 学校で学習に生成AIを活用していくことで、各自のペースで自分のレベルに合わせた学習ができます。また、授業でわからなかったことがあった場合でも、周囲に気兼ねすることなく何度でも質問できます。これまでにはなかった学習方法が生成AIによって可能になっています。

 ただし、生成AIの注意点も忘れてはなりません。生成AIは誤った情報を正しいかのように回答する「ハルシネーション」という問題を抱えており、特に学習での利用には必ずファクトチェックが必要です。AIが出した答えは「たたき台」として活用し、教科書や信頼性の高いウェブサイトで内容を確認するという習慣を教えることも大切です。

実は大人も「悩み相談」し、AIを信頼している

 ここまで、10代に限ってお話ししてきましたが、大人も生成AIとの付き合い方には慎重になるべきです。

 というのも、「悩み相談」の利用は10代女性だけに限った話ではありません。20〜40代女性にも多く、20代女性は36.9%、30代女性は34%、40代女性の31.1%がAIに悩みを打ち明けています。

 「人間関係・人付き合いのアドバイス」についても、10代は特に高い傾向にありますが、全体でも約4割が信頼していると答えています。大人になると、身近な人には打ち明けにくい悩みも増えるものです。家族の介護や財産にまつわる問題など、ある程度の専門知識が必要な場面も多く、特に仕事が関係するケースや長年にわたってこじれてしまった家族関係など、問題が複雑化している場合もあります。

 最終的な判断は専門家や信頼できる人に相談することが大切ですが、 AIを情報収集の入り口として活用することは選択肢のひとつといえます。

 そのAIとの付き合い方を10代に伝えるためには、大人自身がまずその良い面と悪い面を知っておく必要があります。「危ないから使うな」と一切禁止してしまうことは現実的ではありません。

 「どんなことをAIに相談しているの?」という何気なく問いかけることで、子どもの悩みに気づけるかもしれません。AIを相談相手に選ぶこと自体は悪いことではありませんが、AIの言葉をうのみにして実際に行動を起こそうと思った時、周囲の大人にも相談できるような風通しの良い環境を整えてあげてほしいと思います。

 また、子どもが悩みを抱えた場合、以下のような相談窓口もあります。悩んでいる様子のお子さんが周囲にいたら、ぜひ教えてあげてください。

・子どもの人権110番(法務省) 0120-007-110 (フリーダイヤル・無料)
・24時間子供じかんこどもSOSダイヤル(文部科学省)0120-0-78310 なやみいおう(フリーダイヤル・無料)
・特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センター 電話相談(0120-99-7777)とチャットによるオンライン相談(https://childline.or.jp/)

※1:https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/ai_technology/doc/002_260331_shiryou2.pdf
※2:https://cdn.arstechnica.net/wp-content/uploads/2025/08/Raine-v-OpenAI-Complaint-8-26-25.pdf
※3:https://www.mext.go.jp/content/20241226-mxt_shuukyo02-000030823_001.pdf

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