Elgatoの発表会「Wave Next」は何がスゴかったのか 『Wave Link』の進化と独自プロセッサー「Wave FX」の注目ポイントを解説

刷新されたラインナップと「Wave FX」が実現する優れた利便性
「Wave FX」プロセッサーを搭載したハードウェアの展開についても、非常に戦略的なラインアップが示された。まず、USBコンデンサーマイクの定番『Wave:3』が『Wave:3 MK.2』へと進化。筐体デザインの洗練に加え、入力レベルを直感的に把握できるLEDリングや、アップグレードされたヘッドホン出力回路など、ハードウェアとしての純粋な基礎体力が向上している。
さらに、XLRマイク用インターフェースの『Wave XLR MK.2』では、前述したLEDリングの搭載など視覚的なわかりやすさを向上させながら、75dBという驚異的な超低ノイズゲインを実現した。これにより、感度が低く増幅が難しいダイナミックマイクであっても、クリアな音質を保ったまま配信に乗せることが可能となっている。
また、既存のユーザー環境を活かすElgatoらしい提案についても語られた。同社の人気コントローラー『Stream Deck +』の背面に装着してオーディオインターフェース機能を追加できる『XLR Dock MK.2』は、デスク上のスペースを最小限に抑えつつ、最高峰のオーディオ管理を実現する。
そして、プロフェッショナル層に向けた最上位モデル『Wave XLR Pro』の登場は、今回の発表における一つの到達点だ。本機は2系統のXLR入力や、Type C接続による入力に対応しており、複数人によるポッドキャスト収録や、2台のPCを使った配信、コンソールゲーム機の音などをこれ一台で統合することができる。
また、これらのオーディオ製品に搭載された新機能「Auto Gain Wizard」にも注目したい。本機能は初心者が悩みがちな「適切な音量設定」を自動で設定してくれる優れもので、設定ウィザードの起動後に10秒ほど声を入力すれば、適切なゲインレベルに合わせてくれる。
進化した『Wave Link』やさまざまな入力系統を管理するためのインターフェースとして、「Stream Deck」ファミリーにも新顔『Stream Deck + XL』が加わった。36ボタンのキーにくわえて1つのタッチディスプレイ、6つのノブを備える本機は、これまでの「Stream Deck」シリーズ同様にショートカットやマルチアクションなどのプラグインを使用しつつ、『Wave Link』のボリュームや音声チャンネルを一括で管理するのにぴったりのデバイスだ。
田宮氏が「オーディオ管理の真ん中にElgatoを置くというコンセプトを体現した」と語る通り、これらすべての製品は、ハードウェアのスペック競争を超えた”使い勝手の革命”を目指している。プロの現場で培われたLewitt社との協力体制を維持しつつ、『Wave Link』の無料化などを通して誰でもElgatoのテクノロジーを扱える形にパッケージングする同社の姿勢は、まさにクリエイターオーディオの民主化を推し進めている。
新製品群は3月13日から順次発売される。Elgatoが提供する既存のエコシステムと統合されることで、ユーザーのデスク環境はこれまで以上にスマートかつ強力なものへとアップデートされることになるだろう。
「Voicemod」提携に見るエンタメの未来とElgatoの戦略
プレゼンテーションの後半に会場を沸かせたのは、世界的なボイスチェンジャーブランド『Voicemod』との提携発表だった。
これまで『Voicemod』を利用するためには、専用アプリケーションを立ち上げ、マイク音声を送り込み、さらに仮想デバイスを介して『Wave Link』に戻すという、非常に煩雑なルーティングが必要だった。しかし、今回の提携により、Voicemodのボイスチェンジ機能は「VSTエフェクト」としてElgatoのマーケットプレイス上で提供されることになった。
これにより、ユーザーは『Wave Link』上で直接『Voicemod』のエフェクトを適用でき、アプリを別で立ち上げる必要がなくなる。田宮氏は「VSTエフェクトのトグルをオンにするだけで適用できる。設定画面も専用UIが用意されており、インタラクティブに触ることができる」と、そのシームレスさを強調した。
この連携の真価は、低遅延で自然なボイスチェンジが可能になるだけでなく、「Stream Deck」製品との組み合わせによって瞬時にエフェクトのオン/オフが切り替えできる点にある。「配信の凸待ち企画などで、特定のタイミングだけ声を切り替え、誰だかわからないようにしてから、最後にパチッと外すといった使い方もできる」と、田宮氏も具体的な演出案を提示した。
サードパーティとの深い統合は、Elgatoが単なる周辺機器メーカーではなく、クリエイターの創造性を拡張するプラットフォーマーであることを示している。約50分にわたるプレゼンテーションを通じて語られたのは、複雑な設定に悩まされる時間を最小化し、表現そのものに没頭できる環境こそが「次世代」であるという強いメッセージだった。
この日示された「Wave Next」というビジョンは、日本のストリーミングシーンにおけるオーディオの在り方を根本から塗り替える、大きな転換点であるように見受けられた。
■関連リンク
Elgato公式WEBサイト






























