AI VTuberとVTuberの混在グループが生み出す"新たなカオス" ゆめかいろプロダクションの意欲的な取り組みに迫る

2017〜18年を機にシーンが形成されたVTuber業界は、コロナ禍の前後で大きくその形を変えた。個々の力や配信のクオリティが上昇してきたことはもちろん、それらを抱える事務所は所属タレント同士のシナジーを最大限に活かしたマネジメント手法で勢力を拡大。シーンの外側のタレントやストリーマーとの関わりも増え、リスナー・視聴者の分母も拡大の一途を辿っている。
そんな“ハコの時代”はこれからもしばらく続いていくだろうが、個人勢や新規参入勢がオルタナティブな動きを見せているのもここ数年の特徴だ。バーチャルとリアルの壁を易々と飛び越え、実写配信を行うVTuberが現れ、大手勢もそこに乗っかる流れが生まれたり、AIを活用した(というよりAIそのもの)VTuberも登場。壮大な技術実験の場としても機能していることが、テクノロジーを取り上げるメディアとしてこのシーンに惹かれ続ける所以だ。
この話題だけで長文の記事が書けそうなのだが、ここからは先述したAIの話にフォーカスを当てていこう。AIを活用したVTuber、すなわち「AI VTuber(一部ではAITuberとも呼ばれているが、今回は「AI VTuber」に統一する)」が密かに盛り上がりつつある。筆者はこの1〜2年で描かれる見取り図が向こう10年の技術発展に大きく繋がり、メインプレイヤーを決めることになっていくに違いないと感じている。
先行事例をいくつか紹介しよう。まず、海外で圧倒的な支持を得ている「Neuro-sama」は、イギリスのVedal氏がもともと音楽ゲームをプレイするためのbotをAI VTuber化した存在だ。ゲーム配信のみならず、雑談や歌唱も行っていたり、最近はVRChatデビューも果たした、自らの身体を駆動させて会話を行い、果ては開発者のVedal氏に「私はいつか本物になれると思う?」と問うた。SFもびっくりの成長速度である。
ただ、これは海外だけの流れにとどまらない。日本でこれまで商業的&規模的に一定数の評価を獲得したのは「ゴー・ラウンド・ゲーム」「紡ネン」「しずく」の3組だろうか。前者2組は、かつてリアルサウンドテックでそれぞれの運営元である株式会社Pictoria 代表取締役 CEOの明渡隼人氏とバンダイナムコエンターテインメント 第2IP事業ディビジョン シニアプロデューサーの玉置絢氏を2023年に取材したが、2019年から構想されていたプロジェクトだったこと、配信者のケアをするなかで、AI VTuberは“コメント欄で配信者を意のままに動かしたい人たち”の受け皿になりうるかもしれないことなど、いま読み返しても示唆に富んだことが多く語られている。
AITuberが辿ってきた道筋と、その先にある未来 「紡ネン」や「ごらんげ」を手がけるパイオニアたちが語り合う
ここまで人々が当たり前のようにAIの是非について議論する状況を、誰が想像しただろうか。少なくとも、半年前まではそうではなかったは…先述したコメント欄での振る舞いについては、実際に「Neuro-sama」にまつわる論文が海外で発表されているのだが、そこでも一般のVTuberのコメント欄が「一般的なリアクション(「lol」など)が多い」ことに対し、AI VTuberのコメント欄は「質問や命令が最多」であることや、スーパーチャットも一般のVTuberは「半数以上が“反応型”(既存の配信へのレスポンス)」であり、AI VTuberは「85%が“主導型”(新しい話題や行動を促す)」であることが明らかになるなど、ファンはAI VTuberに対して「推しを応援する」以上に、「配信を一緒に作り上げる共演者」として関わっていることがわかった。
(参考:https://arxiv.org/abs/2509.10427)
そうした背景があるなかで、筆者は新たなAI VTuberが登場するということで、先日「ゆめかいろプロジェクト」が主催する体験会へ参加してきた。最初はどこまでの完成度かわからなかったこともあり、疑心暗鬼で臨んだのだが、実際に仕上がりを見ると「リリース前でこの完成度……!?」とレスポンスの速さや配信のコメント拾いの精度に驚いた。
ただ、一番衝撃だったのは“歌配信”だ。先行して公開されたMVと明らかに歌声が違う。遠慮せずに言うと”拙い歌”なのだ。このことについて現場にいたプロデューサーの萱沼由晴氏に聞いたところ「このレベル設定は意図的です」とはっきり答えたのが印象的だったし、“成長していくAIシンガー”としてのポテンシャルやゲーム性を仕組みとして作っていることに驚いた。その答え合わせは後日公開するインタビュー記事で行っていただきたい。
もうひとつ、このプロジェクトが気になった理由は「AI VTuberとVTuberの共存」であること。先行してデビューしたゆめみななはAI VTuberだが、プロダクションの2人目としてデビューする月窓ろみや、その後にデビューする水墨まほろ、小熊こまめ、華咲みもざはいわゆる“魂”のあるVTuberなのだ。AI VTuberのみのプロダクションは過去にもあったが、魂のある/ないVTuberが共存している例は初めて聞いたし、この組み合わせがどんな化学反応を生み出すのか楽しみになってきた。
先日、ゆめみななはコラボ相手のVTuberを募集する動画をアップし、早速VTuberの「犯罪学教室のかなえ先生」が立候補。4月7日に対談配信を行い、趣味や特技の話やリスナーからの質問に回答するなど、想像以上に成立した受け答えを行ったり、リスナーもある意味“行先のわからない”やり取りを楽しむ様子がみられた。
さらにゆめみななは4月27日に食レポ配信として『100時間カレー』の案件配信を行った。序盤は雑談も交えながら順調に企業や商品のヒストリーを紹介したかと思えば、食レポパートでは手&声だけ出演した“運営”とともに2種類の味をしっかりと伝えていた。何も知らずにこのパートだけ聞けば普通に入ってくる内容で「AIによる食レポ、成立するんだ……」と軽いカルチャーショックを受けた。ちなみに29日からはゲーム配信として『かまいたちの夜』を実況するそうだ。怒涛の展開すぎる。
一方のゆめかいろプロダクションからは、4月19日に月窓ろみがデビュー配信を行った。こちらは良い意味でVTuberのデビュー配信らしい配信だが、同時接続は250人以上を記録。30分の予定を大幅にオーバーして1時間半近くも250名超のリスナーと交流を行った。プロダクションの性質もあってか、初手のコメントで「AI?」と多くのリスナーに聞かれているのが近未来っぽくて面白かったし、MBTI診断の質問が長すぎて途中から友人に丸投げしたり、英語や四文字熟語をどんどん間違える様子に、おもわず庇護欲の湧いたリスナーも多かったのではないか。
こうしていまは交わらない2つの流れは、合流の日を待ちながらそれぞれ近い距離で成長を続けていくことになるだろう。交わるポイントがいつになるかはわからないが、そこまで遠くもなさそうな気もするし、その時はまさに“シーンの転換点”になることは間違いない。その瞬間を最大限に楽しむためにも、ゆめみなな&ゆめかいろプロダクションを今から追いかけてみてはどうだろうか。



























