アドビが提案する新たな音楽フェスの楽しみ方を体験して 『BLARE FEST.』Adobe Firefly&Adobe Expressブースレポート

2026年2月7日、8日にかけてポートメッセなごやにて開催された『BLARE FEST. 2026』。日本を代表するロックバンド・coldrainが地元・名古屋にて主催する大型音楽フェス。待望となる3年振りの開催ということも相まって、国内外から錚々たるアーティストが集結した。
10-FEET、ONE OK ROCK、SiM、[Alexandros]、HEY-SMITH、LiSA、マキシマム ザ ホルモン、THE ORAL CIGARETTESといった国内の人気バンドに加え、海外からはMemphis May Fire、House of Protectionなど豪華アーティストが出演し、2日間にわたって熱いパフォーマンスを繰り広げた。
会場には朝から多くのファンが詰めかけ、特に2日目は雪がちらつく寒さにもかかわらず、ステージ間を半袖で移動する若者の姿も見られるほど、会場全体が熱気に包まれていた。
そんな『BLARE FEST.』に、今回初めてアドビがオフィシャルブースを出展した。同コラボは、単なる企業ブースの枠を超えた、音楽カルチャーとクリエイティビティを融合させる意欲的な取り組みとなった。本稿では、ブースや現地の様子などをレポートしていく。(赤井大祐)
『Adobe Firefly』と『Adobe Express』で実現した“自分だけのフェスグッズ作り”
今回アドビが提案したのは、来場者自身が無料からでも利用可能な『Adobe Firefly』と『Adobe Express』を使ってオリジナルのフェスグッズをデザインできる体験だ。具体的には、『BLARE FEST.』のロゴをベースにしたオリジナルステッカーと、フェスのタイムテーブルテンプレートをカスタマイズしたタトゥーシールの2種類を制作できる。
『Adobe Firefly』は、テキストから画像や動画、音楽などを生成できる生成AIツールである。AIモデルの学習データにはAdobe Stockのライセンス済み画像、オープンライセンスコンテンツ、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツなどを使用しているため、商用コンテンツの制作にも安全に利用可能な点が特徴だ。『Adobe Photoshop』や『Adobe Illustrator』など既存のアドビ製品にも機能が組み込まれており、クリエイターたちの作業効率化にも貢献している。
一方の『Adobe Express』は、SNS投稿やポスター、チラシ、ロゴなど多様なデザインを直感的に作成できるオールインワンのデザインツールだ。操作画面がシンプルで直感的な操作が可能なため、デザイン経験がない人でもすぐに使いこなせる設計となっている。豊富なテンプレートが用意されており、それらをカスタマイズするだけで誰でもプロフェッショナルなクオリティのデザインを短時間で完成させられる。また、Adobe Stockの素材やAdobe Fontsの高品質なフォントも利用できるため、素材を別途探す手間もかからない。
今回『BLARE FEST.』とアドビの取り組みでは、事前参加と当日参加で二度楽しめるキャンペーンが企画された。フェス開催前にはSNS上で参加型キャンペーンを開催、『Adobe Firefly』を使った『BLARE FEST.』オフィシャルロゴのリデザインチャレンジと、『Adobe Express』を使ったマイタイムテーブル作成チャレンジがおこなわれた。参加者は作成したデザインをXまたはInstagramに指定のハッシュタグをつけて投稿することで応募でき、coldrainのメンバーが審査に参加することに。事前に600を超える応募が寄せられ、優秀作品にはチケットプレゼントなどの特典が用意された。
そして当日、事前に応募した参加者は会場のアドビブースで自分のデザインをステッカーやタトゥーシールとして受け取ることができた。さらに、事前応募していない来場者も、ブースでスタッフのレクチャーを受けながらその場でデザインに挑戦し、オリジナル作品の印刷が可能に。デザインから印刷まで約15分という手軽さも、フェスの合間の空き時間を活用しやすい設計となっており、ブースを訪れる参加者たちによって、2日間で400以上の作品が生み出された。
coldrainとアドビの“共鳴”
同コラボレーションが単なる企業協賛にとどまらない理由は、『BLARE FEST.』そのものが持つ特性にある。coldrainは2007年に名古屋で結成され、日本だけでなく世界的な人気を博すバンドだ。その一方で、地元名古屋に根を張った自主企画イベント『BLARE DOWN BARRIERS』そして、同イベントの流れを組んだ『BLARE FEST.』をバンドとして“主催”してきた。メジャーシーンで活躍しながらも、自分たちの手でシーンを作り上げていくという姿勢──それは、来場者自身がデザインツールを使って「自分だけのグッズ」を作り出すという今回の施策と呼応しているように見えた。
また、「ロゴカルチャー」との親和性も見逃せない。バンドカルチャーにおいては、バンドのロゴそのものが重要なアイデンティティであり、ファンはTシャツやステッカーを通じてそのロゴを身につけることで、自分たちのカルチャーを表現してきた。今回の「来場者に『BLARE FEST.』のロゴをカスタマイズしてもらう」という取り組みは、そうした文脈を理解した上で、新たな楽しみ方を提示したものと言えるだろう。
さっそくオリジナルデザインを作成してみた
実際にブースを訪れると、スタッフが丁寧にツールの使い方をレクチャーしてくれる体制が整えられていた。
ブースに設置されたQRコードからロゴデザイン(『Adobe Firefly』)、タイムテーブルデザイン(『Adobe Express』)それぞれのページにアクセスできる。
ロゴデザインの場合、特設ページから『BLARE FEST.』の公式ロゴデータ(白または黒)をダウンロードできる。このロゴを『Adobe Firefly』にアップロードし、「構成参照」機能を使ってロゴの形状を維持しながら、テキストプロンプトで背景やエフェクトを生成していく。「炎、爆発、エネルギー、赤、紫、オレンジ」といった言葉を入力するだけで、AIがラウドロック的な世界観の画像を生成してくれる。スタイルギャラリーから好みのビジュアルスタイルを選ぶこともでき、デザイン経験がなくても直感的に作業を進められた。
一方、タイムテーブル作成では、『Adobe Express』上にあらかじめ用意されたテンプレートをベースに自由にカスタマイズできる。お目当てのアーティスト名をテキストで入力したり、「FIRE STAGE」、「WATER STAGE」、「THUNDER STAGE」といった『BLARE FEST.』のステージ名に対応した公式アイコンを配置したりと、自分だけのタイムテーブルを作り上げることができる。『Adobe Express』の操作は非常にシンプルなので、デザインツールに不慣れな人でも、スタッフのサポートを受けながらスキマ時間でデザインを作ることが可能だ。その後、それぞれのデザインをハッシュタグとともにXまたはInstagramに投稿すれば、約15分後にはブースで印刷されたステッカーやタトゥーシールを受け取れる。
会場では昼食時や休憩時間を利用してブースを訪れる来場者が多く見られた。特に近くに設置された「THUNDER STAGE」の転換時間には、多くの来場者がブースに押し寄せる場面もあった。
ブースで実際にデザイン作成を体験した来場者の声を聞いた。男女2人組の来場者は、なんと事前応募で大賞を受賞し、2日間の通し券を手に入れたという。普段生成AIに触れていなくとも、20パターンほどのアイデアを作れたというのだから、驚きだ。
「coldrainの公式Instagramでキャンペーンのことを知って、ロゴデザインで応募して大賞をいただきました。普段生成AIを使うことはほとんどありませんが、触ってるうちにだんだん掴めてきて、最終的に20案ぐらい応募しました。生成した数はもっとたくさんです。賞をいただいたデザインは海外のグラフィティのようなデザインになればと思って考えたプロンプトで『BLARE FEST.』らしさを表現したものです」
また、普段からデザインの仕事に携わっているという来場者は、自分なりにツールを楽しみ倒してくれていた。
「もともとデザイナーなので(デザインの)トレンドとかはチェックしていて。最近流行りの3DCGベースの流体メタルだったり、バルーンっぽい、ぷくっとした表現をデザインに取り入れたくて、ついつい作り込んでしまいおもしろかったです。フェスや音楽イベントにはよく参加しますが、他のイベントにはないブースだったので、もっと広げてほしいです」
印象的だったのは、体験した人のほとんどがアドビのツールはおろか、デザインツール自体を使用したことがなかった点だ。それでもスタッフのレクチャーを受けながら、自分の思い描くイメージをデザインに落とし込み、世界に一つだけのグッズを手にして満足そうに会場へ戻っていく姿が数多く見られた。カップルや家族で体験した人の中にはお揃いのデザインを手にする光景もあり、フェスの思い出をより特別なものにする効果を生んでいたように思えた。
くわえて、今回ブースを訪れた人々は20代から50代以上まで、幅広い年齢層だった。音楽を楽しむだけでなく、自らの手でクリエイティブな体験に参加できるという付加価値が、世代を超えて支持されていたことがうかがえる。
音楽フェスが持つクリエイティブな可能性
この取り組みについて、アドビ・マーケティングマネージャーの轟啓介さんは次のように振り返る。
「特に印象的だったのは、普段デザインツールに触れる機会がないノンプロフェッショナルの方々が、生成AIの力を通じて『自分の中のクリエイティビティ』が形になる瞬間に見せた驚きと笑顔です。『Adobe Firefly』が、誰もが自由にアイデアを表現できる世界の扉を開くツールになりつつあることを改めて確信しました。coldrainメンバーの皆様の熱い想いと、生成AIという新しいテクノロジーが融合することで、これまでにないフェス体験を創出できたのではないかと思います」
そして今回の応募作品の審査にも参加したcoldrainのKatsumaさん、および『BLARE FEST.』実行委員会も、自身らで作り上げてきたイベントとアドビとの新たなコラボレーションに手応えを感じたという。
「『BLARE FEST.』は『音楽のジャンルの壁を壊す』というコンセプトのもと始動しました。こういった新たなクリエイティブツールによって自分の思い描いたものが形になる喜びを来場者に感じてもらえたことは、今後切り離せなくなるであろうAIの能力と、人間特有の感情や思考との共存を促し、表現することに対するハードルや壁も壊すきっかけになるなと思いました」(coldrain・Katsuma)
「アドビさんにご協力いただいたことで、当日のブース体験にとどまらず、開催前から『BLARE FEST.』の熱量を高めることができました。事前に実施した参加型SNSキャンペーンでは、フェス当日を待ちきれない気持ちや、それぞれの“表現”が目に見える形で広がっていくのを実感しました。実際に当日は、事前にデザインを制作して来場される方も多く、会場内でもそれらのアイテムがコミュニケーションのきっかけになっていたことが印象に残っています。
また、来場者の皆さまが『Adobe Firefly』や『Adobe Express』を使って自分だけのアートを生み出し、音楽を楽しむだけでなく、フェスの思い出を“自分だけの作品”として持ち帰る体験が生まれました。こうした取り組みは『BLARE FEST.』ならではの新しい形となり、主催者としても非常に印象深いものとなりました。
フェスのコンセプトである「壁を壊す」というメッセージとも親和性が高く、音楽とクリエイティブが自然に交差する場を共につくれたことに感謝しております。」(『BLARE FEST.』実行委員会)
今回の取り組みへの取材を通じて浮かび上がってきたのは、音楽フェスという場が持つ「クリエイティブな可能性」だ。
従来、音楽フェスにおける企業ブースは、サンプリングや物販が中心で、来場者は受動的な立場にとどまることが多かった。しかし今回のアドビブースでは、来場者自身が能動的にデザインというクリエイティブ行為に参加し、その成果物を持ち帰ることができる点で一線を画している。
「自分だけのオリジナルグッズ」という価値は、会場で販売されるオフィシャルグッズとはまた違った特別感をもたらしてくれる。フェスという体験の一部として自分が創造したものであり、その日の興奮や感動がデザインに反映されている。タイムテーブルのタトゥーシールであれば、フェス参加中に使える実用的なアイテムにもなる。こうした「体験の一部としてのデザイン」という発想は、音楽とクリエイティビティの融合における「新しいモデル」と言えるだろう。
また、生成AIやデザインツールに触れたことのない人々が、スタッフのサポートのもとで気軽にクリエイティブな体験に参加できる環境を整えたことも重要だ。アドビが掲げる「Creativity for All」という言葉に代表されるように、日常生活におけるちょっとしたデザイン行為——たとえばSNS投稿のビジュアル制作や、プレゼン資料のデザイン——の裾野を広げる入口として、また日々の楽しみとして、こうしたイベントでの体験が果たす役割は小さくない。
『BLARE FEST.』やcoldrainのファン、そしてラウドロックミュージックのファンを中心とした来場者が持つ高いモチベーションとエネルギーも、この施策を後押しした要因だろう。会場全体が熱気に包まれ、ステージでのパフォーマンスに熱狂するだけでなく、ブースでのクリエイティブ体験にも積極的に参加する姿勢が見られた。音楽だけでなく、フェスという体験全体を楽しむ——その一環としてデザイン体験が組み込まれたことは、今後の音楽フェスの在り方を考える上でも示唆的なものだった。

































