インテルの最新CPU『Core Ultra シリーズ3』搭載機もついにお披露目 「AIファースト」なPCの現在地と未来戦略とは

PCはこの数年、外観こそ大きな変化は見られないものの、その中身は着実な進化を遂げてきた。かつてはCPUのクロック周波数やコア数が性能を測る主な指標だったが、現在では製造プロセスやアーキテクチャを重視し、省電力性能やグラフィックス性能、さらにはローカル環境でAIを動かすための設計が重要視されている。
こうした変化を象徴する製品として、2月3日に東京都内で開催されたインテルの業界関係者向けイベント「Intel Connection Japan 2026」で、国内向けに披露されたのが「インテル Core Ultra シリーズ3プロセッサー(開発コード名:Panther Lake)」だ。本イベントでは、この最新プロセッサーを軸に、インテルが描くAI PC時代のビジョンが示された。
「インテル Core Ultra シリーズ3」が国内で初披露

本イベントは「最新AI PCで輝く未来」をテーマに業界関係者に向けて開催され、AI PC向け最新プロセッサーの技術的な特徴に加え、エンジニアリングAIやフィジカルAIといった注目分野の動向、それらを支えるインテルの技術基盤が紹介された。
基調講演では、1月に米ラスベガスで開催されたIT・ガジェットの展示会「CES 2026」で発表された次世代CPU「インテル Core Ultra シリーズ3 プロセッサー」が、日本で初めて紹介された。インテルのデビッド・フェン氏は、この製品について「Intel 18Aは、今後数年にわたる製品戦略の方向性を示す大きな前進」と述べ、同プロセッサーが単なる新製品ではなく、今後のインテルの基盤となる存在であることを強調した。
インテル Core Ultra シリーズ3は、インテルの最先端プロセスノード「Intel 18A」を採用した初のSoCとして発表された製品だ。PコアとEコアを組み合わせた最大16コア構成に加え、次世代NPUや新世代GPUを統合し、AI処理を含むプラットフォーム全体の性能と電力効率の向上を特徴とする。
こうした設計により、AI PCとして求められる高い演算性能と長時間のバッテリー駆動を両立している点が強調された。プロセス技術やアーキテクチャの詳細については、既報の弊部記事にて詳しく紹介している。
インテルは、現在を「AIファースト」の時代と位置づけ、PC上でのAI活用を前提とした体験設計を進めている。その中心にあるのが、クラウドだけに依存せず、データが存在するローカルデバイス上でもAIを動かす「ハイブリッドAI」という考え方だ。
この点について、インテルは「AIはデータがあるところで実行される。だからこそ、私たちは未来はハイブリッドだと信じている」と説明。個人データを端末内に保持しながら、必要に応じてクラウドの計算資源も活用することで、ユーザーの作業を支援するエージェント型AIの普及を狙うという。
すでにISV(独立系ソフトウェア・ベンダー)との連携も進んでおり、PC上で利用できるAI体験は72カテゴリに広がっているという。
国内PCメーカー展示とデモで見る「Core Ultra シリーズ3」の実力

会場では、ASUS JAPAN、LGエレクトロニクス・ジャパン、サードウェーブ、Dynabook、デル・テクノロジーズ、日本エイサー、日本HP、マウスコンピューター、ユニットコムの9社が参加し、20機種以上の最新AI PCが披露された。
薄型・軽量設計の筐体に、高いグラフィックス性能とAI機能を組み合わせた製品が多く、用途の広がりを感じさせるラインアップとなっていた。

会場では、Core Ultra シリーズ3の性能を活かした具体的なデモも行われた。
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AI Swing Coach(ゴルフスイング分析):OpenVINOを用いて開発されたアプリで、スイング動画をAIが解析し、理想的なフォームとの差分を可視化。推論はすべてローカルで行われ、プライバシー面にも配慮されている。
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AI Playground:写真から不要な人物を削除したり、オフライン環境で画像生成ができるデモ。ネットワーク接続を必要としない点が特徴。
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Speech Connect(リアルタイム文字起こし・翻訳):8ビット量子化したWhisperモデルをNPU上で動作させ、動画や音声をリアルタイムで文字起こし・翻訳する。GPU負荷を抑え、他の作業と並行して使える。
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クリエイティブ制作(Adobe Premiere):オブジェクトマスクなどの処理をNPUで実行可能。背景の差し替えや人物の切り抜きも、ローカル環境でスムーズに行える。
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ゲーミング性能:内蔵グラフィックスながら、レイトレーシングやAIアップスケーリング技術「XeSS 3」のマルチフレーム生成(MFG)に対応。デモでは『サイバーパンク2077』を用い、フレーム生成なしで約52fpsだった描画が、MFG有効時には約155fpsまで向上する様子が紹介された。
「AI PC」から「データセンター」までを見据えた「次世代メモリ」への挑戦

イベントでは、ソフトバンク子会社のSAIMEMORYとの協業についても紹介された。AI需要の拡大により、データセンターでは電力消費と発熱が課題となっている。両社はその解決策として、次世代メモリ技術Z-angle Memory(ZAM)の実用化を目指す。
ZAMは、従来のHBMのような平面的な積層とは異なり、メモリを縦方向に配置する独自構造を採用する。放熱性を高め、性能と消費電力のバランス改善を狙う技術で、DDRやHBMを補完する存在として期待されている。
こうした構想は、PC向けプロセッサーにとどまらず、AI時代のコンピューティング全体を視野に入れたものだ。Core Ultra シリーズ3がエッジ側でのAI処理を担う存在だとすれば、ZAMはその先にあるデータセンターやインフラ層を支える技術となる。インテルは、デバイスからクラウドまでを一体で捉えた技術戦略を描いていることがうかがえる。
インテルが今回のイベントで示したのは、新プロセッサーの性能そのものだけではない。デビッド・フェン氏は基調講演で、「50年前、コンピューターがパーソナル化されたように、今、テクノロジーの民主化のために、皆様と共に技術革新を目指していきたい」と述べた。
PCが個人のための道具として普及してから約50年を経たいま、AIを誰もが活用できる環境をどう築いていくのか。その問いに対し、インテルはデバイスからインフラまでを含めた技術で応えようとしている。今回の「Intel Connection Japan 2026」は、AI PC時代に向けた次の転換点が、すでに現実のものとして動き始めていることを示す場だった。

























