2025年度にインテルは引き続き「AIPC」に注力、カスタムPC文化にも野心的に取り組む

2月6日、Intelの日本法人・インテル株式会社が事業戦略を説明するメディア向け発表会を開催した。昨年の振り返りに始まり様々な取り組みへの展望が提示されたなかから、今回は主にAIPCとゲーミングPCの取り組みについて抜き出してレポートしたい。
2025年度も「AIPC」を戦略的に推進
はじめに登壇したインテル株式会社代表取締役社長・大野誠氏は、2024年の世界情勢を振り返り、異常気象や米中対立、円安、インフレ、政治的な選挙の年だったことを指摘した。そして、それらの変化の中で横櫛を担ったのがAIの発展であり、2025年も引き続きAIが主要な話題だろうと述べた。
大野氏はインテルの経営体制の変化について言及し、前CEOのパット・ゲルシンガーの退任に伴い、暫定的にミッシェル・ジョンストンとデヴィッド・ジンスナーが暫定CEOとして指揮を執ることになったと報告した。現在、慎重かつ迅速に新CEOの選定を進めているとし、日本市場におけるインテルのリーダーシップを維持するために強い使命感を持っていると語った。
2024年第4四半期の決算については、売上高や利益が予想通りの堅調な結果となったと説明し、特にAIPC分野の成長に触れ、2024年末までに累計1億台以上のAIPCを出荷予定であり、次世代AIPC向けプロセッサ「 Panther Lake」の開発が順調に進んでいることを明かした。これまで他社のファウンドリーを利用していたAIPC向けSoCは、今後インテルの自社生産に移行する計画であり、これにより製造コストの最適化や競争力の向上を期待しているという。
大野氏は、インテルの歴史において幾度もの変革があったことを振り返り、かつてはメモリービジネスを主力とする企業だったが、40年前にCPU事業へとシフト、その後もモバイル、クラウド、IoTなどの技術進化に対応してきたと語った。近年では「XPUカンパニー」として、CPUに加えGPUやNPUなどの多様なプロセッサを提供する方向へと舵を切ったと説明した。
また、半導体の微細化技術において、かつては世界の先頭を走っていたが、近年では競争力を失いつつあったと認めていた。しかし、新たな戦略「 IDM 2.0」を採用し、自社製品を他社工場で生産する一方、自社工場で他社製品を製造するというモデルに転換した。これにより、競争力の回復とグローバルな半導体サプライチェーンの強化を図ると説明する。続いてAI専用半導体の市場も急拡大していることに触れ、現在、AI市場では一部の企業が独占的な地位を築いているが、インテルはオープンエコシステムを推進し、特定のベンダーに依存しない市場の構築を目指すとした。

日本市場ではPCゲーム市場の成長にも注力するといい、CPU・GPUの開発を進めつつ、国内のPCメーカーやゲームメーカーと協力し、PCゲーマー向けの製品最適化を進めている。調査によると、日本のゲーマーの5割以上がPCに移行しつつあり、この分野での成長が見込まれると述べた。
AI技術を活用したPC向けの取り組みとして、国内の教育機関と連携し、デジタル人材の育成にも力を入れている。2024年には全国44チームが参加したデジタル教育プログラムを実施し、特に名古屋のデザイン&テクノロジー専門学校のチームが優れた成果を上げたことを紹介した。
Window10のサポート終了に伴う買い替え需要も
続いて登壇したのは執行役員技術本部本部長の町田奈穂氏とIA技術本部部長の太田仁彦氏。町田氏は市場動向について、2025年のPC市場は4%の成長が見込まれ、これは2021年以来の最高水準に達すると語った。特に Windows 10のサポート終了に伴う買い替え需要が市場を押し上げる要因になるだろうと指摘した。また、AIPCの需要が高まり、2025年に出荷されるPCの40%がAI対応になると予測する。インテルはクライアントからエッジ、データセンターまでAIを統合し、消費者や企業がその価値を引き出せるよう支援していく方針を示した。
続いて町田氏は2025年1月のCESで発表された新製品についても言及し、社内では「AIPC3兄弟」と呼んでいるという「 Meteor Lake」、「 Lunar Lake」、「 ArrowLake」の3つのプロセッサーを紹介。続いて太田氏がAIPCの基本概念と各製品の詳細を説明した。AIPCは単なるAI機能を備えたPCではなく、優れた性能やバッテリーライフなど基本的なPC性能を備えた上でAI機能を追加するものだという。"長男"である「 Meteor Lake」は初めてNPU( Neural Processing Unit)をPCのSoC(System on Chip)に統合し、CPUやGPUに加えてAI推論のワークロードを効率的に処理できるシステムアーキテクチャを確立した。次に、「 Lunar Lake」は"次男・次女"のような立ち位置で、「 Meteor Lake」を基盤に大幅な性能向上を実現した。特に、x86アーキテクチャを基盤としながら高性能とバッテリーライフを両立し、従来のPCに対する常識を覆す製品となった。
また、「 Arrow Lake」は"末っ子"であり、ノートブックでもデスクトップでも、幅広い層のユーザに支持される製品であるとした。「ArrowLake」の1製品である「 Core Ultra 200S」は、デスクトップPC向けとしては初めてNPUを搭載、モバイル環境で培われたAIワークロードの活用をデスクトップでも実現
する。また、インテルはディスクリートGPU市場にも引き続き投資し、「 Intel Arc Bシリーズ」の開発を継続すると語った。特に、ハイエンドゲーミングやクリエイター向けの用途を意識し、高性能なグラフィック処理能力を提供する。
コンシューマー&ゲーミングPC&「 Intel Blue Carpet Project」も推進
最後に登壇した執行役員マーケティング本部長の上野晶子氏からは、2025年上半期のマーケティング戦略について説明がなされた。特にコンシューマー向けのキャンペーンとしては、以前より取り組んでいる施策に加えて、2025年春に新生活を迎える学生や社会人を応援する新たなキャンペーンを開始するという。その一環として、エイベックス所属の8人組アイドルグループ「 ONE OR EIGHT 」を起用し、インテルの Core Ultraプロセッサー搭載PCを活用して彼らの音楽活動を支援するプロジェクトを展開する。また、クリエイター支援プロジェクトとして「 Intel Blue Carpet Project」も継続すると語られた。高性能PCをクリエイターに貸し出して制作活動をサポートする取り組みだ。
また、継続する取り組みとしては自作PCの文化を「カスタムPC」として再定義し、PC組み立ての魅力を広めるための施策「インテルPCマイスタープログラム」の実施も挙げられた。「PCに対して深い知識と実践体系を持った人たちを、たくさん増やしていきたい」ということで、はPC販売店のスタッフを対象に組み立てアドバイスができる専門家(マイスター)を育成し、秋葉原のPC文化を活性化させたいということだ。また、ゲーム市場の拡大を目的とした新キャンペーンも開始する。このキャンペーンでは「ハイスペックPCはもちろん、ミドルスペックのPCでも快適にゲームが楽しめる」ことを強調し、ゲーム文化の発展を促すためゲームタイトルメーカーやPCメーカーと連携し、ゲームプレイに適したPC環境を提案するそうだ。


















