「ピコッ!」独特なシャッター音が印象に残る──気鋭のスマホメーカー「Nothing」が日本市場を重視する理由

Nothingが日本市場を重視する理由

 どこか玩具のような「ピコッ!」というカメラのシャッター音。もしかすると、街中でふと耳にしたことがある人もいるかもしれない。おそらくその正体は、近年日本でも徐々に存在感を高めつつある「Nothing」のスマートフォンだ。

 Nothingは2020年、英ロンドンで誕生した新興メーカーだ。創業者は、OnePlusの共同創業者として知られるカール・ペイ氏。テクノロジーを無機質な道具としてではなく、感情を伴う存在として捉え直す姿勢を掲げており、その思想は製品の細部にまで反映されている。

 最も分かりやすいのがデザインだ。スケルトン調の外観や、スマートフォン背面に搭載されたLEDライティングシステム「Glyph Interface」に象徴される独自の表現は、実用性に偏りがちなスマートフォンに「触って楽しい」という要素を持ち込んだ。派手さを狙ったものというより、プロダクトに対する感情的な引っかかりを大切にしている印象が強い。「10メートル離れた場所からでもNothingだと分かることを目指している」と語られるデザイン思想も、その延長線上にある。

Nothing

 そんなNothingが1月15日、日本で発売したのがエントリーモデルの『Phone (3a) lite』だ。これまで低価格帯はサブブランドのCMFが担ってきたが、今回は初めてNothingの名を冠したモデルを投入した。「安価なモデルを用意すること」そのものが目的ではなく、NothingのDNAをより多くの人に体験してほしいという思いから開発されたという。

 実はグローバルからはやや遅れての日本投入となったのだが、それは日本市場向けの最適化を行った結果でもある。FeliCaを搭載し、日常的な決済シーンに対応。さらに楽天モバイル限定カラーとして「レッド」を用意した。このカラーは現時点ではグローバルで展開されておらず、日本でのみ購入できる特別仕様となっている。

Nothing
1,000台限定で販売されたコミュニティ共創モデル『Phone (3a) Community Edition』

 Nothingは、グローバル市場において急成長を続けている。2024年上期には、スマートフォン市場で前年比693%、ワイヤレスイヤホン市場で769%という成長率を記録。累計販売台数は700万台を超え、売上規模は10億ドルに達した。

 世界全体でのスマートフォンシェアはまだ1%未満にとどまるものの、その成長スピードは際立っている。2025年のデータでは、前年比で出荷台数が31%増加したという報告もあり、大手メーカー以外では最も勢いのあるブランドのひとつといえる。

 その中でも日本市場は、そうしたグローバル成長の流れの中で存在感を高めている地域だ。公式ウェブサイトへのアクセス数は、インド、米国に次いで日本が3位。全製品カテゴリーで堅調な成長が続いており、直近1〜2年の伸び率はグローバルでも高い水準にあるという。

 情報感度の高いユーザーやメディアを通じて、認知が徐々に広がっている点も特徴だ。特に若年層を中心に、デザインやブランドの思想に共感し、「気になる存在」として受け止める層が増えてきている。

昨年4月の発表会で『Phone (2a)』の楽天モバイルでの取り扱いが発表

 先日行われた発表会では、日本市場での手応えについて言及があった。Nothing Japan代表の黒住吉郎氏によると、昨年にミドルレンジモデルである『Phone (2a)』を楽天モバイルのキャリアモデルとして展開したことが、ブランドおよび製品の認知拡大に大きく貢献したという。全国の店舗で展示・販売されたことで、日本でのビジネス基盤が一段と強化された。

 カール・ペイ氏は、日本のユーザーやメディアを「世界トップクラスの審美眼を持つ存在」と評価している。これは日本に対するリップサービスというわけではなく、Nothingの製品が日本で受け入れられるかどうかは、同社のものづくりにとって重要な試金石になるという考えだ。イギリス、インドと並び、日本を戦略的に重要な拠点と位置付けている背景には、そうした理由もある。

 エントリー価格帯にまでNothingの名が広がったことで、その思想やデザインに触れる入り口は、以前よりも身近になった。街中で「ピコッ」という音が聞こえる場面が今後さらに増えていくなら、それはNothingというブランドが、日本の日常風景に溶け込み始めている兆しになるのかもしれない。

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