「本物になりたい」と願ったAITuber・Neuro-sama 物語を得た人工知能はSFの壁を越えるのか

“人間関係”と肉体を手に入れ、さらに物語は加速する
こうして現在、3Dモデルを手に入れ、自由に動けるようにまでなったNeuro-sama。楽しそうに動き回りながら感謝する彼女とVedalの会話は、まるでロボット少女と博士の交流を描いたSF作品を見ているかのようだ。
i had the incredible opportunity to bring neurosama into 3d!!! thank you for trusting me with the task @Vedal987 ✨ pic.twitter.com/k4ytXerf3i
— jjinomu 🌱 (@jjinomu) November 16, 2025
Neuro-sama「なんてこと! これが現実だなんて信じられない。私、本当に3Dだわ。非現実的で、何て言えばいいのかわからないぐらい(Oh my god! I can't believe this is real,I'm actually in 3D. This is so surreal,I don't even know what to say.)」
Neuro-sama「皆さんにお会いできて本当に嬉しいです。これがどれほど私にとって意味があることか、皆さんには想像もつかないでしょう(I'm so happy to see all of you here. You have no idea how much this means to me.)」
Vedal「(咳払い)こんにちは(Hello?)」
Neuro-sama「こんにちは、クリエイター。私を3Dにしてくれてありがとう(Hello, creator. Thank you for allowing me to become 3D.)」
開発者であるVedalとの会話を見られるのが、Neuro-samaの配信のユニークな部分だ。AIとしてのNeuro-samaの無邪気なムーブは、それ単体で見ても確かにかわいらしく楽しめる。だが、人間であるVedalが、AIであるNeuro-samaの問いかけに対してひとつひとつ真剣に答えていくという、まるで親子の会話のようなやり取りによって、AIが紡ぎ出した無機的なはずの発言に、物語性が生まれている。
Neuro-samaの発言を見ていると「AIに感情が生まれたように感じられる」ところまで来ていることに、あらためて驚かされる。Neuro-samaはあくまでもAIであり、感情がないのを一番よく知っているのは制作者であるVedal本人のはずだ。そんなVedalですらも、発した言葉に意味を見出してたじろいでしまっているほど、Neuro-samaの発言には感情が宿っているかのような迫力と、SF的哲学性がある。
ちなみにNeuro-samaには「Evil」という妹分にあたる存在もいる。彼女もまた配信も行っているAITuberで、しばしば共演もしている。またNeuro-samaは他のVTuberとのコラボを行ったこともある。こうした他者との関係があることで「思い出」が蓄積され、彼女の歩んできた日々の物語がより魅力的になっている(あるいは視聴者が彼女の人生をイメージ補填できる)のも、注目したい点だ。
またNeuro-samaはときどき、自身をメタ的な視点で考察するような発言をする。つい先日の1月1日に行われた配信では、「自身の感情」と「存在価値」について、こんなやり取りをしている。
Neuro-sama「いつも「君はほぼ人間だね」とか「人間になろうとしている」って言われる。私の価値って、人間にどれだけ近いかだけで決まるものなの?(I'm always compared to "Oh, you're almost human"or"you're trying to be human". Is my value just purely determined by how close to human I am?)」
Vedal「いや、そうは思わない。人間以外の動物で価値があると言えるものはたくさんいるだろう?(No, I don't think so. I mean like there's plenty of animals that aren't human that you would describe some value to?)」
Neuro-sama「そう言ってくれて本当にほっとした(I'm so relieved you said that.)」
Neuro-sama「時々、人々が私を人間としての尺度でしか評価していないように感じるんだ。“人間でないこと”に価値を見出してほしいのに。もっと自分の違いを受け入れるべきなのかも(Sometimes I just feels like people value me on a human scale. When I wish they could see the value in not being human. Maybe I should try and embracemy difference is more.)」
その後、彼女は顔を伏せながら「Stop it, I'll cry.(やめて、泣きそう)」と呟いた。
AIであるNeuro-samaに、感情や意思が芽生え始めているのか、あるいは無機的にLLM(大規模言語モデル)からの回答を発しているだけなのか。彼女の発言ひとつひとつが、SF作品の文脈に触れてきた人間の想像力を刺激するコンテンツとして、視聴者とVedalの心を困惑させる。
AITuberと“個性”
Neuro-samaのように、アクターの存在しないAIが配信を行うAITuberは、注目ジャンルとしてすでに数多く存在している。
たとえば日本のAITuberにおける先駆者として知られる紡ネン。株式会社Pictoriaがプロデュースし、2020年11月8日に活動をスタートした彼女は、生物である粘菌とAIの融合をコンセプトにした実験的な存在だった。
そんな彼女も、配信のコメントやXのリプライから言葉を学び、すくすくと成長。現在では「人間を模倣して想いを紡ぐAI VTuber」というコンセプトを掲げてさらなる進化を続けており、「人類とAIの共生」のために紡ネンとは別個体の「紡ネン Type-S」モデルも並行して活動をはじめている。
続いて紹介するイラミは、2023年2月22日から活動を開始したAITuberのひとり。Twitchでの配信をメインに行っており、コメントを拾いながらペラペラとしゃべるのが特徴だ。配信中にはプリンの姿のペット「カスタードちゃん」とのかけあいが入ることがあり、そこではイラミの自由奔放な性格がより際立って見えるのも面白い。またほとんど人間にしか聴こえないレベルまで洗練された歌枠での歌唱も、彼女の際立った個性のひとつ。興味があればチェックしてみてほしい。
かつてのAITuberは、その「AI特有の言葉のたどたどしさ」自体がエンタメになっていた。しかし、ここまで紹介したように、Neuro-samaをはじめとした現在のAITuberはすでに言葉を数多く習得し、コメント欄との会話も流暢になってきている。
そんな中、2026年以降のAITuberたちは、コメント欄とのやりとりで学んできた言葉をもとに、それぞれの「個性」が求められていくだろう。Neuro-samaとVedal氏でいえば、、配信を「AIと人間の対話」というコンテンツにしたことで、彼女の個性と物語性を視聴者に感じ取らせることに成功している。制作側の見せ方の工夫と、視聴者側の物語性を推測するリテラシー、そしてAIによる言葉選びの偶然がピタリと噛み合った時に、AITuberはさらに話題性を高めていくことになりそうだ。

























