コンパクトボディなのに圧倒的な機能性と高画質 4Kレーザープロジェクター『VisionMaster Pro2』体験記

『VisionMaster Pro2』体験記

 BOX型の見た目から、その実力を侮っていた自分を大いに恥じたーー

 Valerionの4Kレーザープロジェクター『VisionMaster Pro2』を体験した際の正直な思いである。筆者はこれまでホームシネマ用のプロジェクターを3機種ほど愛用してきた。現在は4K/HDR対応のプロジェクターを天吊りするような自分がGoogleTV搭載の『VisionMaster Pro2』を使ってみたら、全力でその機能性と高画質に嫉妬し、しばらく感動の余韻が抜けないほどだった。

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 異次元の高画質、簡単設置&設定、STB要らずの全部入り高機能。これらがテストを終えた筆者が注目するイチオシのポイントである。実売40万円前後という4K/HDR10+対応のプロジェクターとしては破格のコスパも見逃せない。なお、本製品を試用するに当たり、親ブランドであるAWOL Visionの100インチスクリーン『ALR-D100』が用意された。

圧倒的な再現力と多彩な機能性が両立

 さっそく製品の概要を見ていこう。搭載OSはGoogleTVを採用。MediaTek製のAI-SoC MT9618に128GBのストレージ(ROM)、4GBのメモリが搭載され、アプリや設定動作はサクサク動く。NetflixやAmazon、Huluなど、大手映像配信サービスなら最初からインストールされており、外付けのSTBは必要としない。

 セットアップは手間いらずだ。自動スクリーン調整、自動台形補正、自動フォーカス、障害物自動回避により、ホームシネマプロジェクター=設置が大変というイメージを払拭している。Apple AirPlay 2、Chromecast、Miracastに対応し、手元のデバイスからストリーミング再生も可能。また、Google Home、Apple HomeKit、Alexaといったスマートホーム連携も完備している。

 0.9~1.5倍の光学ズームにより、一般的なホームシネマプロジェクターと比べて短距離の投写距離に対応する点もメリットだ。筆者が常用するプロジェクターと比べると、例えば100インチにおいて、最小投写距離が3.06m(筆者所有機)と1.99m(本機)という1m以上の差があった。部屋が狭くても広くても使えるのは頼もしい。

 画質関係の仕様は、プロジェクターとして驚きの内容が目白押しだ。IMAX  Enhanced、Dolby Vision、HDR10+、HDR10、HLGといったフォーマットに対応するほか、フレームレートは24/48fpsにも対応。UHD Allianceが開発したフィルムメーカーモードを備え、マスター画質を忠実に楽しみたいニーズにも応える。また、1080p/240Hzにおいて、入力遅延4msという超高速スペックを実現。4K/60Hzにおいてもわずか15msという、快適なゲームプレイが楽しめる。

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 Rec.2020(BT.2020)に110%対応する広色域は、市場で最も広いと謳う。他社の高級4KプロジェクターでもBT.2020をフルで包含するのは難しい中、110%というのは驚きだ。輝度は3000 ISOルーメン。制作者の意図を忠実に再現する基準となるISF認証を取得している。Valerion独自の特許技術EBLを適用すると、最終的なコントラストは15000:1を達成するという。「Enhanced Black Level(EBL)」は、シーンの明るさに応じてレーザーディミングを動的に調整し、真に深い黒と視覚的深みを実現するというもの。

 さらに、ダイナミックトーンマッピング(DTM)により、HDRコンテンツをリアルタイムに分析し、明るさとコントラストを最適化することで、ぼやけや色歪みを排除。鮮明度を向上させ、ハイライト部の露出オーバーやシャドウ部の露出アンダーを解消するという。ネットワークは、100Mbpsの有線LANとWi-Fi 6Eに対応。プロジェクターで6GHz帯 が使えるのは稀少だ。映像入力はHDMI 2.1が2系統、HDMI 2.1(eARC)が1系統。オーディオ出力は、S/PDIF(光角型)が1系統と、3.5mmヘッドフォンジャック、Bluetoothスピーカーも接続可能。

実際に触れて分かる良好なる使い勝手

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 筆者は開梱から調整まで一通り自分でやってみたが同梱物は、『VisionMaster Pro2』本体の他に、リモコン、ACアダプター、クリーニングクロス。しっかり日本語マニュアルも付属しているのが嬉しい。まずは、投写のセッティングから。自動台形補正はあるものの、水平な場所に設置するのが基本だ。本体底部のスタンドもあるが、今回は専用のスタンドを活用した。排熱は、バックパネルの端子側から見て右吸気の左排気だ。内蔵ステレオスピーカーは、この吸排気のスリット内部にある。

 セットアップはため息が出そうなほど簡単だった。スクリーンに対して、本体の位置や向きを物理的に理想に近い状態に整えた方がいいのはその通りだが、自動補正がとにかく優秀で「こんな簡単でいいの?」と拍子抜けするほど。自動補正が終わると、ほぼスクリーンと同じくらいの大きさで投写される。はみ出た場合の微調整は、「画面の拡大/縮小」で行なう。何回か試した限りでは、1~2段階ほど光学ズームで縮小すると個人的に収まりがよかった。

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 当初、内蔵ステレオスピーカーは、サウンドバーやAVアンプを所有していない人向けのおまけ程度に捉えていたが、意外と使える機能性を備えていた。リモコン内蔵マイクでテスト信号を収音すると、オーディオキャリブレーションを有効にできる。音質的にはデスクトップスピーカー相当なものの、離れたところにあるスクリーンから音が出ているよう感じられた。音の広がりも本体の幅からは想像できないほど、それこそ100インチのスクリーンに迫るダイナミックさが楽しめた。ちなみに冷却ファンの駆動音は、28dBというスペックよりもだいぶ静かに感じられた。

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 映像メニューは複数のプリセットから選択できる。テレビ番組やYouTubeを見るなら「標準」や「節電」、映画や映像作品は「映画」や「フィルムメーカー」を選ぶと相性が良い。ゲーム機は、繋ぐと自動でゲームに最適なモードに設定され、低遅延モードもオンになる(ALLM対応)。

 ソース機器は今回はゲームも合わせて試用するために『PlayStation 5(PS5)』を利用。Blu-rayやUHD-Blu-rayソフトの再生、PS5にプレインストールされているASTRO's PLAYROOMを遊んでチェックしている。最初はゲームから試す。ASTRO's PLAYROOMをしばし楽しんだ。HDRが有効なPS5のソフトは、自動でHDRゲームモードが選択される。メリハリの利いた適度にビビットな発色と輪郭をやや際立たせた描写が好印象。コントローラーの操作に対する画面の反応は一切の違和感がない。低遅延性能は実用的といえそうだ。

 アニメーション作品のBlu-rayから「ガールズ&パンツァー 最終章第4話」。モードは、ムービーメーカーを選択した。色温度はウォーム1が選ばれていたが、やや暖かみがあるので、ウォーム2がちょうどよかった。部屋の照明や外光によって、自然な色味になるよう微調整してもいいだろう。

 色味がとても自然で鮮やか。背景の美麗さが格段に高い。自宅で見た記憶を思い越しても、明らかに色域が広いと感じる。精細感もちょうど良い具合だ。サウナを前にして、キャラの位置に合せて台詞が聞こえてくる場面では、スクリーンの該当エリアから音が聞こえるほどに定位感がワイド。本体内蔵のスピーカーとは思えない、一端のバーチャルサウンドだ。

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 実写映画作品は、通常のBlu-rayと、4K/HDR10(Dolby Vision採用)のUHD-Blu-rayが同梱された『グランツーリスモ』をチョイス。PS5が残念ながらDolby Visionに非対応のため、HDR10での視聴となった。まず、SDRのBlu-ray版から。ル・マンレース、夜間雨のシーンを視聴。シャープで鮮明なレーシングカーと夜の深い闇。ライトの鮮烈な明かり。ピットに入ったときの安心感まで伝わるのは、照明の色味や明るさがリアルゆえか。

 コントラスト関係の機能も各種試した。画面の明るさをリアルタイムで分析し、明るさを自動的に調整する「暗部ディテール調整」は常時ONでよさそう。HDRエンハンサーは、SDRのソースをHDR風にしてくれる。これがとてつもなく自然。照明などのピーク輝度が自然に向上し、宵闇は深い漆黒へと変わる。ダイナミックコントラストという機能もあるが、HDRエンハンサーとは排他になっており、自然なコントラスト感のアップを求めるならHDRエンハンサーを強く推したい。

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 本機はDLP方式のプロジェクターのため、宿命とも言えるレインボーノイズは心配していた。筆者も初めてのプロジェクターはDLP方式で、レインボーノイズが見えてしまい難儀した経験がある。しかし、本機はノイズの知覚が少なかったことを特筆しておく。わざと首を振ったり、視線を外してから急にスクリーンを見るなどしてみたが、たまに虹状のノイズが局所的に見える程度。一方、UHD-Blu-ray版では多少ノイズが見えやすくなった。感じ方には個人差があるので、絶対ではないものの、DLPが心配という方にも検討してほしいと思う。

 最後に同じ『グランツーリスモ』のUHD-Blu-rayを再生。ネイティブ4Kならではの圧倒的な高精細感。テクスチャー表現は非常に緻密だ。特にコース脇の林の解像感に目を見張る。コントラストは、深く沈み込む暗黒と自然にピークが伸びた車のライトの明かりが格別で、思わず顔がニヤけてしまう。

 そして、一番感動したのは色域の広さだ。肌やユニフォームの質感、車体の実在感などが段違いなのだ。それこそ自宅のプロジェクターに戻るのが辛くなるほどに。夜から朝になって雨が止み、太陽の光がヤンの顔に当たったときの肌色がリアルなこと!

 なお、HDRコンテンツを再生すると、選べる設定項目が一部変わる。HDRコンテンツの明るさレベルを分析して明るさとグラデーションバランスをリアルタイムで調整する「HDRトーンマッピング」は必須ともいえる機能だ。オフすると、全体的に暗くなってしまい、画面内のコントラストにメリハリが足りない印象だ。車のライトや太陽光といった一際明るい要素を自然に見せるには、常にONにする方がよい。しかも、ONにしても暗い部分はちゃんと暗いまま魅せてくれる。

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 『VisionMaster Pro2』は、ホームシネマプロジェクターとしては破格でありながら、驚異的なスペックと、その数値に恥じない没入感のある映像が伴った本格派の逸品だった。慣れない方でもすんなり導入できる使いやすさと、テレビ並みの多彩な機能を備え、新しいホームシネマの在り方を家庭にもたらしてくれるだろう。

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