『Pragmata』試遊レポート:TPSとパズルの“二人羽織”がやみつきに 「面倒では?」の不安を打ち砕く圧倒的爽快感

「謎に包まれたカプコンの新規IP」のベールがついに
数年前に、当時はまだ「次世代機」として語られていたPlayStation 5のソフトラインナップの一つとして『Pragmata(プラグマタ)』が発表された時に感じたのは、率直に言えば「困惑」だった。カプコンが何か新しいことをしようとしているのは分かっているけれど、そこにあるのは幼い少女の姿と宇宙の光景のみで、具体的にどのようなゲームなのかは何一つ分からない(「宇宙飛行士」といえばコジマプロダクションということで、関連性を推察する人も少なくなかった)。トレーラーにおいてゲームプレイ映像を出さないことは珍しくはないが、それにしたって抽象的すぎると誰もが思ったことだろう。
だが、その「謎」自体が、『Pragmata』というタイトルを、何百、何千という作品の情報を浴びながらも、多くの人々が気にかけていた理由でもある。筆者もそのひとりで、大きなゲームのショーケースが実施されるごとに「そういえば『Pragmata』の続報は?」と思い出していた。
実際に試遊体験を経て思うのは、カプコン側も『Pragmata』というタイトルをどのように打ち出すべきなのかを悩んでいたのではないだろうかということである。今でこそ、「宇宙を舞台にした探索アクションTPS」というラベルを貼ることはできるだろうが、それだけではあの奇妙なプレイフィールを表現することは難しそうだ。
興味深いのは、本作のディレクターを務めるチョウ・ヨンヒ氏が、過去には『バイオハザード RE:3』のアートディレクターを務め、それ以前はプラチナゲームズで『NieR:Automata』や『メタルギア ライジング リベンジェンス』のコンセプトデザインを担当してきたという、いわゆるデザイン畑の出身であるということ。開発においても、若いスタッフを中心とした新興チームであることが明らかになっており、あらゆる意味で従来のカプコンのタイトルとは毛色の異なる作品であることは間違いない。それは、「間違いなくカプコンらしい手触りを感じる一方で、これまでのどのカプコンの作品とも異なっている」という試遊後の感覚を裏付ける。ここからは実際のレビューを書き進めていくが、少なくとも実際にデモ版をプレイしないことには、その魅力を感じ取ってもらうのは難しそうだ。
「戦いながらパズルを解かなければならない」異色のスタイルが生み出す爽快感
試遊版における『Pragmata』の基本的な構造は、概ね「探索」と「戦闘」に二分される。探索パートでは、月面に建造された謎の施設を探索し、行く手を阻むパズルなどのさまざまな障壁を、主人公の一人であり、これまでのトレーラーでも印象的だった謎の少女型アンドロイド・ディアナの能力を駆使して突破していく。

パズルの多くは、表示された図形の一部を回転させて線を繋いだり、指定の順序でボタンを押したりといったシンプルなもので、(少なくとも試遊版の時点では)取り立てて悩まされることもなく、これまでのさまざまなゲームに導入されてきたパズルミニゲームのように、ゲームプレイにメリハリをつけるためのちょっとした要素であるように感じられる。それよりも興味深いのは、近未来SFのエッセンスが隅々まで詰まった月面施設そのもので、どうやらこの世界では3Dプリンターのようなものを活用して、家具はもちろん食べ物に至るまで何でも生成できるらしく、配置されたメモを読むと、そうした環境の中で暮らす住人の生活の様子が垣間見ることができた。だが、どこにも人間の姿はない。果たして彼らはどこに行ったのだろうか?

また、マップ内には多くの武器の補充物資やサポート系のアイテムなどが配置されており、探索を進めていくと、一見すると壁のようでも、近づくとホログラムであることが分かり、その中にはたくさんのアイテムが保管されているといったギミックも見受けられた。探索と言えば、やはり「バイオハザード」シリーズが脳裏をよぎるが、あちらが狭い空間を中心としたレベルデザインが多いのに対して、『Pragmata』ではより広い、オープンな空間づくりを意識しているように感じられたのが印象的だ。筆者は試遊時間内でデモを2周したのだが、2回目にプレイした時には、初回には気づかなかった要素が数多くあることを発見し、探索の魅力をより実感することができた。
とはいえ、試遊における最も印象的な要素は、やはり主人公たちの目の前に立ちはだかる月面AI(アンドロイド)たちとの戦闘である。基本的には手持ちの銃を使って「バイオハザード」のようなTPSスタイルでの銃撃戦に臨むのだが、ただ撃つだけでは僅かなダメージしか与えることができない。ここで重要なのが、銃を構えた時に、ディアナ側でハッキング(=画面の右側に表示されるパズルを解く)をして、相手の抵抗力を下げることである。パズルは『The Witness』のように開始地点から終了地点までを線で引くようなもので、ルートの合間に特定のマークを通れば通るほど、与えるダメージを大幅に増やすことができる。実際の操作感としては、トリガーとアナログスティックを使ってTPSの操作を行いながら、十字キーを使ってパズルを解くという感じだ。実際のイメージとしては、TPSをしながら『サイバーパンク2077』のハッキングパートをこなしているような感覚に近いかもしれない。
恐らく、この仕様を聞いたほとんどの人は「面倒じゃない?」と思うのではないだろうか。実際、慣れないうちは、主人公のヒューとディアナと同様に、まるで二人羽織のようなこのスタイルに戸惑い、あたふたしているうちに、迫り来るアンドロイドたちの猛攻を何度も食らってしまった。だが、徐々に慣れていくにつれて、素早くパズルを解き、高威力のダメージを食らわせる爽快感に、やみつきになっていったのである。これは、ゲーム側がこのシステムならではの魅力を最大化するために、さまざまな調整を凝らしているというのも大きいだろう。





















