「東京ゲームショウ」2026年は5日間開催に 規模拡大は“リアル参加”の価値回復の一手となるか

『東京ゲームショウ』2026年は5日間開催に

 「東京ゲームショウ」(以下、TGS)を主催する一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(以下、CESA)は9月25日、来年度に行われる『東京ゲームショウ2026』について、史上初の5日間開催となる予定であると発表した。

 毎年多くの来場者でにぎわっている同イベント。誕生から30年の節目での規模拡大はどのような意味を持つのか。TGSの現在地、ゲームショウが直面する状況から、開催日増加の意図を読み解く。

2026年開催は史上初の5日間に

TOKYO GAME SHOW 2025 OFFICIAL MOVIE

 TGSは、CESAの主催によって1年に一度開催されるゲームの総合展示会だ。アメリカ・ロサンゼルスのElectronic Entertainment Expo(以下、E3)、ドイツ・ケルンのgamescomと並び、世界3大ゲームショウに数えられる。第1回の開催は1996年夏。以降、コロナ禍での規模縮小はありつつ、これまでに35回が行われてきた(※)。今年度は「遊びきれない、無限の遊び場」をテーマに、過去最多となる1,136の関連企業/団体のブースを誘致。例年とおなじく、4日間の日程(前半の2日がビジネスデイ、後半の2日が一般公開日)で実施された。

 2026年の開催は9月17日から21日の5日間になる予定とのこと。従来の木曜〜日曜の日程に、敬老の日で祝日となる月曜をくわえ、ビジネスデイ2日間、一般公開日3日間で行われる。これにより、イベントの盛り上がり、参加者の体験などにどのような影響が出るのか。その進化に注目が集まっている現状だ。

※1997~2001年は春・秋の年2回開催。コロナ禍の2020年はオンラインのみ、2021年はビジネスデイのみの開催となった。

TGSが直面するリアルイベント特有の課題とは

 CESAは来年度の日程とあわせて、同日に閉幕した『東京ゲームショウ2025』の来場者数を発表している。リリースによると、今開催には、初日の9月25日に52,352人、2日目の9月26日に54,779人、3日目の9月27日に77,415人、最終日の9月28日に78,555人の計26万3,101人が訪れたという。これは例年とほぼ同水準の数字。過去最多の動員を記録した2018年(29万8,690人)には及ばないが、引き続きTGSが業界に大きな影響力を持っていることが見て取れるものとなっている。

 他方、昨年度の開催と比較すると、1万人ほど、その数を減らしている。各日程を個別に見ていくと、前半のビジネスデイでは各日とも約1万人が増加した一方で、後半の一般公開日では、3日目で約2万人、最終日で約1万人が減少した。一昨年との比較においても、同様の傾向が見える。ビジネスデイの各日で来場者数が大幅に増加したことが、合計での約2万人の差につながった。

 このことからわかるのは、業界におけるTGSの立ち位置の変化だ。同イベントはコンシューマー向けの展示会、関係者向けの見本市という2つの役割を両立していたこれまでとくらべ、より後者の比重が大きくなりつつある。ここには、コロナ禍を経てゲームイベントの体験価値が失われつつあること、出展者数・来場者数の増加により参加者の体験の質が低下しつつあることの影響もあると考えられる。

 開催のタイミングで解禁される情報にかぎれば、Webメディアによる発信やメーカー公式の配信番組からも得ることができる。本来であれば、そのようにして得られる情報以外の部分――たとえば、話題のタイトルの先行体験など――がリアルイベントに参加することのひとつの価値であるはずだが、現地では試遊台に長蛇の列が発生しており、満足に遊ぶことが難しい。こうした状況がコンシューマーのTGS離れを加速させている面があると見られる。今開催においてもそうした傾向は顕著で、ビジネスデイであっても、試遊のための整理券の配布が早々に終了しているブースが目についた。

 仮にTGSがこのようなニーズの変化に抗うことなく、見本市としての役割を強めていくならば、影響力の維持は困難だろう。実際に、世界3大ゲームショウのなかでもとりわけ見本市としての性質が強かったE3は、コロナ禍を境にその求心力を低下させ、2022年、2023年の開催中止を経て、2024年に完全消滅している。つまるところ、TGSにおける開催日の増加は、コンシューマー重視の姿勢の表れ、リアルでの体験価値の担保といった意味を持つのではないか。

 事実、CESA会長の辻本春弘氏は『東京ゲームショウ2026』の5日間開催の狙いについて、来場者から「会場に来てもなかなか試遊参加できず、もっと体験の機会を増やしてほしい」との声が多く届いており、それに応えるためであるとコメントしている。

【TGS2025】TOKYO GAME SHOW 2025 開会式

 とはいえ、開催日の増加には、会場を押さえるための新たなコストも発生するはずだ。もしかすると、TGSは影響力の維持、さらには今後の存続に向けて、大きなターニングポイントを迎えているのかもしれない。一連の施策が想定した結果をもたらさなければ、E3と同様に、苦しい状況に追い込まれる可能性も拭いきれないだろう。

 はたしてTGSは、顧客体験の良化、コンシューマーからの支持の回復を実現できるだろうか。開催日の増加がどのような結果をもたらすか。動向に注目したい。

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