スケルトンカラーも魅力 JBL初となるイヤーカフ型イヤホン『JBL Soundgear Clips』をレビュー

ブランド初のイヤーカフモデルとして、装着感と音質に磨きをかけた注目作
ハーマンインターナショナルから、JBLブランドの新製品として、ブランド初となるイヤーカフ型の完全ワイヤレスイヤホン『JBL Soundgear Clips』が発表された。発売中で、価格はオープン(実勢価格1万8700円前後)。
現在、イヤーカフ型のイヤホンは、続々と新製品が登場しており、市場での人気が拡大し、ユーザーへの認知度も向上している。そこに名門ブランドJBLが満を持して、新アイテムを投入してきた。

JBLでは2023年という比較的早い時期に、オープンタイプの中でも耳掛け式(イヤーフック型)の完全ワイヤレスイヤホン『JBL SOUNDGEAR SENSE』を発売しており、今年8月にはそのフラグシップとなる『JBL SENSE PRO』のクラウドファンディングを開始、早くも高い人気を集めているという。ちなみに“SENSE”とは感じるの意で、イヤホンをしていても周囲の状況を感じられる、という意味が込められているそうだ。
多少前置きが長くなったが、JBLは今年で、ワイヤレスイヤホンを発売して8年目を迎えるということで、幅広いユーザーの要望にあわせるべく、製品化については、「パーソナルサウンド」(ユーザー毎に適したサウンドの再生)、「インディビジュアルフィット」(ユーザーに合わせた快適な装着性)、「ユニバーサルプレイ」(さまざまなデバイスで再生できる汎用性)という3本の柱を以て開発を行っているということだ。

その過程で生まれたのが、イヤーフック型の『JBL SENSE PRO』であり、現在市場を賑わせているイヤーカフ型にJBLならではのこだわりを詰め込んで新登場となったのが、本稿の主役である『JBL Soundgear Clips』となる。
一見したところでは、オーソドックスなイヤーカフ型、という印象も強いが、実は二つのユニットを繋ぐブリッジには、他にはない大きなこだわりが投入されている。それが、「JBL SonicArc」と名付けられた独特なカーブを持った構造だ。

写真のように、『JBL Soundgear Clips』のドライバーを内蔵した球体部分に繋がるブリッジは、球体の中央ではなく、少し外側にオフセットしており、カーリングで使うストーンのハンドルのような形状となっている。このデザインを兼ねた形状が、快適な装着感(確かに耳をつままれる感触は弱い)と、装着時に音の放射口が耳穴に向かうことで、オープン型でありながら聴こえ方も向上する、という効果を生み出している。
その他、主な仕様も紹介しておきたい。搭載ドライバーは11mm径のダイナミック型、音漏れ防止機能「OpenSoundテクノロジー」搭載、4つの通話用マイク(ビームフォーミング)でクリアな通話が可能、専用アプリ「JBL Headphones」対応、防水防塵規格IP54準拠、マルチポイント対応、Bluetoothの対応コーデックはSBC/AAC、バッテリー持続時間はイヤホン単体で約8時間、収納ケース併用で最大約32時間、となる。
オープン型とは思えない広大な音空間を再現 音に包まれる楽しみを存分に味わえる
さっそく、気になる音質をチェックしてみたい。基本はスマホと組み合わせてAACコーデックでテストしてみた。馴染みの楽曲を一通り再生してみて一番印象に残ったのは、オープン型とは思えない音場の広いサウンドが楽しめたこと。カナル型……とまではいかないが、再現される音空間は、耳穴を塞ぐ形となるインナーイヤー型に近い感覚で、左右の耳を繋いだ線上からおでこのあたりまでをカバーするような空間を創造してくれるのだ。これは、ドライバーユニットを内蔵したパーツ前面に設けられた音の放射口が広いことも、大きく影響しているのだろう。しばらく聴いてみたが、リアルなステレオスピーカーで聴いているような雰囲気が楽しめた。

音調としては、ボーカルの再現が優秀で、目の奥のあたりに音像がフッと立ち上がるような感覚が味わえ、歌詞の一語一語も聴き取りやすい。伴奏(メロディ)はボーカルを邪魔しない音量感でいて、しっかりと空間を満たしてくれる厚みと繊細さを兼ね備えている。JBLだけあって低音の再現は少し強めだが、オープン型で減衰しやすい低域をうまく補ってくれる感覚で、量感の増した低音を含め、全体的に厚みのあるサウンドを聴かせてくれた。
ハイレゾコンテンツでは、音の細やかさが増し、音空間が上方に拡大するさまが感じられるし、一方でmp3のような圧縮率の高いものでも、音場感(音空間)はグッと狭くはなるものの、くっきりとしたボーカルの再現をメインに、力感のあるサウンドを楽しませてくれる。配信系では、圧縮率の高いコンテンツも多いが、そんなデメリットも、『JBL Soundgear Clips』ならではのパワフルなサウンドで再現してくれる。聴いていて、楽しい気分になる製品と言える。
動画コンテンツでもセリフ・SEの再現は優秀で、映像への没入感も高い
動画コンテンツも試してみた。全体的な傾向としては、音楽聴取時と同じで、しっかりと聴き取りやすいセリフの再現をはじめ、SEや劇伴なども臨場感のあるサウンドで、大きな空間を創造してくれることもあり、映像への没入感は高い。ただし、AACコーデックの割には少し遅延も感じたので、スマホアプリ「JBL Headphones」の項目「スマートオーディオ&ビデオ」を「ビデオモード」にしてみた。モードの切り替えには5~10秒ほどかかり、切り替え中は音が途切れるので、チャカチャカと切り替えるのは難しいが、遅延に対しては効果はあり、映像とセリフの合いはよくなった。少しセリフの音量が抑えられるようだが、聴き取りやすさには影響はなかった。

ちなみに、「スマートオーディオ&ビデオ」は機能そのものをオフにできるので、オフもテストしてみた。オン・オフを繰り返してみると、オンでは音調にメリハリを出す設定になっているようで、ボーカルの再現が少し大きめになる。オフにするとボーカルの音量は少し低く(小さく)なるが、一方で演奏(メロディ)はより繊細に再現され、細かい音が聴き取れるようになるし、響きや音の消え際の余韻も増している。より音楽的な再現性になる、という感触だ。オープン型は周囲の環境の影響も大きいので、静かな場所では「スマートオーディオ&ビデオ」をオフ、屋外やカフェ、図書館などある程度の騒音がある場所では「スマートオーディオ&ビデオ」をオン、という使い分けをするといいだろう。
JBL初のイヤーカフ型として、練り上げられた装着感をはじめ、まさにJBLらしさを体現する量感のある低音の再現、広大な音場の創造と、初号機から他社に勝る機能・性能を備えた『JBL Soundgear Clips』。スケルトンのデザインも秀逸で、音質・機能・デザインとまさに三拍子揃った逸品。JBLファンだけでなく、広くワイヤレスイヤホンユーザーに届く形にまとめられている、と感じた。


●商品情報
製品名:イヤーカフ型ワイヤレスイヤホン
型名:『JBL Soundgear Clips』
価格:オープン価格(実勢価格18,700円前後)
製品サイト:https://jp.jbl.com/SOUNDGEAR-CLIPS.html























