眠れる忍者たちの目覚めはいつ?「SHINOBI」「NINJA GAIDEN」の象徴的2作の復活で考える、まだ見ぬ復刻候補たち

いま……忍者アクションゲームが熱い。
1980年代から1990年代に人気を博した「SHINOBI」シリーズと、「忍者龍剣伝」改め「NINJA GAIDEN」シリーズが、揃って新作を発売したのだ。
先行したのは「NINJA GAIDEN」で、1月24日に2008年発売の『NINJA GAIDEN 2』のリマスター兼パワーアップ版の『NINJA GAIDEN 2 Black』、7月31日に『忍者龍剣伝』の2Dスタイルを継承した『NINJA GAIDEN: Ragebound』を発売。
続く「SHINOBI」は8月29日に『Shinobi 3D』(2011年)以来、約14年ぶりの完全新作『SHINOBI 復讐の斬撃』を発売。
さらに「NINJA GAIDEN」はナンバリング最新作『NINJA GAIDEN 4』の発売も10月21日に控える。
両シリーズの新展開は、忍者を題材にしたアクションゲームの中でも、ひときわ象徴的な出来事といっていいだろう。どちらも1980年代に誕生し、そこから10年にわたって数多くの続編が展開され、さまざまな試みに挑んできた忍者ゲームの象徴ともいえるシリーズだからである。同時に、近年は新作が長らく発売されず、沈黙が続いている状況でもあった。
それらがここに来て再始動するということで今後、同じ年代に誕生して好評を博した過去の忍者アクションゲームも続々と……と考えるかもしれない。
だが、実はすでにそのような動きは数年前から起きている。メジャーどころからマイナーまで、色んな忍者アクションゲームたちが現代の環境で遊べるようになっていたのだ。
2019年ごろから復刻が相次いでいた、かつての忍者アクションゲームたち
厳密な時期としては2019年ごろ。この年、2つの忍者アクションゲームが新展開を起こしていた。
ひとつはジャレコが手がけたコミカル忍者アクションゲーム『忍者じゃじゃ丸くん』。ファミリーコンピュータ(ファミコン)時代のオリジナル版に加えて、完全新作『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』をセットにしたコレクションタイトル『忍者じゃじゃ丸 コレクション』が発売されたのである。
なお、『じゃじゃ丸の妖怪大決戦』に関しては2022年、単品となったWindows PC版がSteamで発売されるに至っている。
もうひとつがタイトーの忍者アクションゲーム『ザ・ニンジャウォーリアーズ ワンスアゲイン』。1988年にアーケードゲームとして誕生した『ザ・ニンジャウォーリアーズ』を、格闘要素を持つベルトスクロール型アクションゲームへと一新させたスーパーファミコン向けタイトル『ザ・ニンジャウォーリアーズ アゲイン』に、さらなる強化を図ったリメイク版である。

オリジナルのスーパーファミコン版の開発は『東方見文録』『アイドル八犬伝』『メダロット』などを代表作とするナツメ(現ナツメアタリ)が担当。リメイクも当時と同じナツメアタリの制作陣が直接手掛けたこだわりの作品となっている。
2020年代に入ると「NINJA GAIDEN」シリーズも今後の布石と思しき動きを起こしていた。それが2021年発売の『NINJA GAIDEN: マスターコレクション』。

PlayStation向けに展開された『NINJA GAIDEN Σ』シリーズと『NINJA GAIDEN 3:Razor's Edge』をまとめたコレクションタイトルである。完全新作ではないが、シリーズとしてはだいぶ久しぶりの新展開だったのもあり、ファンの間で再始動への期待が高まった。
その後、約4年が経った2025年に『NINJA GAIDEN 2 Black』『NINJA GAIDEN: Ragebound』『NINJA GAIDEN 4』のリメイクを含む計3本が発表・発売されるに至っている。
2022年にはアメリカ発の忍者キャラクターとして、1980年代から根強い人気を誇る『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』(TMNT)のゲームも推参。完全新作『ミュータント タートルズ:シュレッダーの復讐』と、ファミコンやスーパーファミコンなどで発売されたKONAMI制作の過去作を1本に網羅した『ティーンエイジ ミュータント ニンジャ タートルズ ザ カワバンガ コレクション』が相次いで発売されたのだ。

残念ながら『カワバンガコレクション』は2025年現在、販売終了により新規購入ができなくなっている。他方、このシリーズは2024年にも『Teenage Mutant Ninja Turtles スプリンターの運命』や『Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutants Unleashed(ミュータント・タートルズ unleashed)』といった新作を発表し、継続的な展開を見せている。
2024年には前述の『ザ・ニンジャウォーリアーズ ワンスアゲイン』を開発したナツメアタリより、1990年にファミコン向けに発売された知る人ぞ知る名作忍者アクションゲーム『闇の仕事人 KAGE』のリメイク版も登場。

見た目が劇的に変化したグラフィックと新たな調整が施されたプレイヤーアクション、名曲揃いの音楽が異彩を放つ良作となっている。
ほかにもここ数年の間に復活した忍者アクションゲームには『忍者ハヤテ』『少年忍者サスケ』といったものがある。このように2019年辺りから、過去に好評を博した忍者アクションゲームはメジャーからマイナーなものまで、幅広く復活を遂げていた。
そんななかで「SHINOBI」と「NINJA GAIDEN」も帰ってきたというのが現状なのである。
いまが復活のピーク……ではない まだまだ眠れる忍者(アクションゲーム)たちがいる
では「SHINOBI」と「NINJA GAIDEN」の帰還により、忍者アクションゲームたちの復活劇はピークに達したといえるのだろうか。答えはノーだ。なぜなら復活を待つ過去の忍者アクションゲームたちはまだまだ多く存在するからである。
それらの中で、特に今後の復活を期待させられるものとしては『快傑ヤンチャ丸』『影の伝説』『ストライダー飛竜』『天誅』、そして『がんばれゴエモン』の5作品がある。
若干、筆者の主観と願望も含んだチョイスであることは否定しないが、80年代から90年代の代表格といえるものは、それらのタイトルになってくるだろう。異論は認める。
ただ、この中で『快傑ヤンチャ丸』と「影の伝説』については、元祖に当たるアーケード版の第1作がそれぞれ現行環境向けに復刻済みとなっている。一方で双方、移植作に当たるファミコン版は本記事執筆時点で復刻が実現していない。
ファミコン版『影の伝説』についてはWii、Wii U、ニンテンドー3DSのバーチャルコンソール版があったのだが、2023年のサービス終了と共に新規の購入はできなくなった。いずれも今後、遊べるようになることが待たれる。
また、『影の伝説』と『ストライダー飛竜』の2作は、2019年より前に再始動したことがあった。時系列の面で、比較的最近……と言ってもすでに10年ほど前だが、大々的に発表されたのは『ストライダー飛竜』。

ゲームシステムから世界観周りまで再構築した、新しい『ストライダー飛竜』がPlayStation 3、PlayStation 4、Xbox 360、Xbox One、PC(Steam)向けに発売されたのである。これは2025年現在もダウンロード版が販売中で、新規の購入が可能だ。ただ、そこから続編が発売されるといった展開はなく、過去のアーケード版やメガドライブ版が現行環境向けに復刻されただけに留まっている。
『影の伝説』も2008年、ニンテンドーDS向けに続編を発売したことがあった。その名も『影之伝説 -THE LEGEND OF KAGE 2-』。横スクロールのアクションゲームである点はそのままに、斬撃と手裏剣を駆使する戦闘スタイル、2名の主人公、術作成システム、ニンテンドーDSの二画面構成を活かした開放感のあるステージ構成を売りとしている。

軽快なアクションにシリアスで薄気味悪さも漂う世界観、敵も含め個性豊かなキャラクター、前作のアレンジ楽曲も収録された耳に残る音楽などの見所も持つ良作なのだが、本作はほとんど宣伝されずに発売されたのもあって、知る人ぞ知る作品になってしまった。現行環境への移植も実施されていないため、2025年現在は中古市場で探すしかないのが実情だ。
とはいえ、2作とも再起動を試みた実績があることからも、忍者アクションゲームが続々と再登場するこの機会に再びチャレンジする意義があると言えるだろう。特に『影の伝説』の続編は埋もれているのが勿体なくもあるので、どこかで再浮上のチャンスがあって欲しいものだ。
「天誅」シリーズは版権の推移などもあって複雑な事情を抱えているため、新展開の有無は読めない。ただし、現在『天誅』版権を所持するフロム・ソフトウェアは2019年に『天誅』の要素も持ち合わせた新作『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』を発売。

世界的な大ヒットとなり、直近ではアニメ化も発表されるなど、今後、さらなる新展開がありそうと期待させられる側面がある。逆に初期の『天誅』を開発したアクワイアは2000年代になって「忍道」なるシリーズを展開したが、本記事執筆時点では長らく中断状態にある。
それでもアクワイアはいまも健在ゆえ、再始動の可能性はゼロではない。本記事の対象である80~90年代のタイトルではないものの、次の再始動候補としては有力といってもいいかもしれない。
逆に今後が不安視されるのが『がんばれゴエモン』だろう。

海外では『The Legend of the Mystical Ninja』の名で、堂々たる忍者アクションゲームの一角として展開された『がんばれゴエモン』は2025年現在、過去作に触れる機会がほぼ皆無な状況にある。加えて2005年発売の『がんばれゴエモン 東海道中 大江戸天狗り返しの巻』を最後に新展開は完全に中断。20年にもわたって「がんばることをやめた」状態になってしまっているのだ。
それでも一時期はニンテンドー3DS、Wii Uのバーチャルコンソールで過去作に触れられる機会が辛うじて残されていた。しかし、それも2023年3月をもって終了。その後、現行機への復刻も実現されないまま、今日に至ってしまっている。
忍者も侍も血と暴力と闇のイメージが強まりつつある昨今だからこそ……
筆者個人がこれから先、新展開を強く願っているのは『がんばれゴエモン』である。前述したように同作を取り巻く状況は大変厳しい。過去作は現行環境で体験できず、新作も当時の開発スタッフが解散しているため、先行き不透明な状況にある。

『がんばれゴエモン』の販売元であるKONAMIは、『悪魔城ドラキュラ』『魂斗羅』『グラディウス』などの過去の名作たちをひとまとめにしたコレクションタイトルを近年、積極的に展開している。そのたびに『がんばれゴエモン』もコレクションタイトルの登場を期待する声が当時のファンを中心にあがるのだが、いまだ実現には至っていない。
背景にはいくつかの要因が考えられる。そのなかでも大きいのは『がんばれゴエモン』自体が海外展開において非常に限定的だったこと、現代の倫理基準に照らすと問題となりうる表現が一部含まれていることの2点だろう。

実は海外での『The Legend of the Mystical Ninja』というのは、スーパーファミコンで発売された『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』の海外版タイトルである。その前のファミコン版の作品は海外ではすべて未発売。『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』以降のスーパーファミコンで発売された続編も海外では一切展開されていないのである(※)。そのため、現代に復活するとなれば、複数作品に対する新規ローカライズ作業が避けられない。そこに倫理絡みの問題も重なってきてしまうのだ。
復刻に課題があれば、新作も開発スタッフの現状もあって絶望的。そして、気付けば最後の新作が発売されて20年。もはや『がんばれゴエモン』は過去のタイトルとして、時代と共に忘れられていく存在も同然になってしまっているのは否めない。
ただ、筆者はいまこそ『がんばれゴエモン』が復活するのに最良の時であると考えている。これは忍者を題材にしたゲームに限らず、他の侍が主人公のゲームもそうなのだが、近年ヒットするタイトルの大半が暗くて殺伐としていたり、硬派で血生臭さの漂うものが中心になっている。

それらのゲームが悪いとは断じて言わないし、むしろ筆者も好んでいるものが複数あるのだが……正直、バリエーションが偏重気味と思えるのだ。加えて、表現周りが過激になるのが避けられないため、どうしても対象ターゲット層も高くなってしまう。
冒頭で取り上げた『忍者じゃじゃ丸くん』のように、低年齢層や一連の表現に抵抗があるプレイヤーも手を出しやすいタイトルをもう少し、フォローする必要があるのではと感じるのである(2020年より配信されている『Ninjala』なる低年齢層向けタイトルもあるが)。
その中でも直撃世代からの根強い支持と知名度で定評のある『がんばれゴエモン』には、一連の偏った状況に一石を投じる力がある。シリアスで殺伐としたものだけじゃない、明るくて楽しい時代劇(忍者)ゲームもあるんだと、いまなら効果的に訴えられると同時に、大きな強みとして発揮されると思えるのだ。

『SHINOBI』に『NINJA GAIDEN』という、忍者アクションゲームの復活は非常に象徴的で大きな出来事だ。侍を題材にしたゲームでも、懐かしのシリーズ作が再始動するとの話題が近ごろ出ている。もっともっと、当時の色んな素晴らしい関連タイトルがこれからも再始動していってほしい。
ただ、作風面でのラインナップが偏り気味なのはひとつの課題であると思える。今後、どういったタイトルが出てくるのかはまさに時の流れに身を任せるしかないが、少しでも作風面に広がりが生まれる展開が起きてほしいと願うばかりだ。
だからこそ……がんばってくれよ、ゴエモン。
※補足:海外で発売されたシリーズ作は『がんばれゴエモン〜ゆき姫救出絵巻〜』(スーパーファミコン))、『がんばれゴエモン さらわれたエビス丸』(ゲームボーイ、欧州版『コナミGBコレクション Vol.3』に収録)、『がんばれゴエモン〜ネオ桃山幕府のおどり〜』(NINTENDO64)、『がんばれゴエモン 黒船党の謎』(ゲームボーイ)、『がんばれゴエモン〜でろでろ道中 オバケてんこ盛り〜』(NINTENDO64)の5作のみ。ほかにPlayStation 2向けに発売された『冒険活劇ゴエモン』も当初、『Mystical Ninja Goemon Zero』の名で海外で発売予定だったが、最終的に中止となっている。






















