古古米も美味しく炊けると噂のパナソニックの最新炊飯器 実際に食べて、その驚きの実力を試してみた

新米の季節になりつつあるけれど、新米はいきなり高価だし、放出された政府備蓄米はまだ大量に余っているしで、備蓄米の販売期間は1カ月延長された。日照りが続く地域がある一方で、局地的な豪雨で田畑が水浸しになる地域もあり、秋以降も米騒動は続くのだろうか。
そんな米の話題が尽きない中で、パナソニックが炊飯器の2025年フラグシップ・モデルを発表した。パナソニックの炊飯器は以前から「新米も古米もおいしい」をスローガンにしており、発表会においては新米と古米の炊き比べがおこなわれた。テレビクルーも多数駆けつけるほど注目度バツグンだった、最新炊飯器で炊いたお味は如何に。
リアルタイム赤外線センサーが美味しさを引き出す進化の秘密
9月上旬に発売する Wおどり炊き・可変圧力IHジャー炊飯器「X9D」シリーズは、5.5合炊きの『SR-X910D』と1升炊きの『SR-X918D』の2種類。予想実売価格は、5.5合炊きモデルが9万9000円前後、1升炊きモデルが10万5000円前後。ともにブラックとライトグレージュの2色展開となる。

パナソニックでは、長年続けてきた可変圧力と高速交互対流IHによる「Wおどり炊き」と2023年に導入した「ビストロ匠技AI」により、銘柄・新米古米・室温湿度・米の状態関係なく、いつでも美味しく炊けるというのが特徴だった。
新製品では、「ビストロ匠技AI」の精度を上げ、甘みアップを実現
そこにはいくつかの新技術の投入がある。ひとつはセンサー。従来は釜底の温度センサーで内釜の温度を測っていた。接触型のセンサーで安定している温度を見るのには適しているが、急激な温度変化の検知は得意ではなかった。ここに新たに0.1℃刻みで検知できるリアルタイム赤外線センサーを追加することで、タイムラグなく細かい温度変化を検知できるようになる。これにより、約9600通りから精度高く釜の中のお米の状態を検知し、より細かい火加減・圧力加減を自動で調節できるようになったとする。


この繊細な火加減・圧力調整が炊飯工程に進化をもたらした。炊飯には4つの工程があるが、最初にお米に水を浸透させる「前炊き」工程において、お米が甘くなる40〜60℃の温度帯に素早く到達でき、さらに長く維持できるようになったのだ。この段階で60℃を超えると酵素が失活して旨味が損なわれるので、従来はゆっくりと慎重に加熱していたのだが、これではお米本来が持つ甘みを十二分に引き出せていなかったのだ。


さらに、お米のα化が進む「沸騰維持」工程においては、釜内の水の残り具合を精度高く推定し、従来より早いタイミングで急減圧ができるようになった。同工程では急減圧を4回行っているが、急減圧すると釜内で爆発的な沸騰が起きる。水が多いほどに沸騰が激しくなり吹きこぼれるリスクが高まるため、精密な温度調節が必要になる。リアルタイム赤外線センサーにより、どのくらい炊飯が進み、どのくらい釜内に水分が残っているかが正確に分かるようになったので、吹きこぼれないギリギリのタイミングを判断し、水が多い段階で沸騰を起こすことが可能になった。

特に2回目の急減圧を前倒しすることに成功している。水が多い段階で爆発的な沸騰が起こせるからよりお米を強く踊らせることができ、一粒一粒に熱をしっかり伝えられるので、甘みを十分に引き出せるようになる。これらが重なり、従来品に比べて約8%の甘みアップが実現したのだ。

じつはこれ、新米だけでなく古米を炊く際にも威力を発揮する。新米に比べて乾燥している傾向がある古米は吸水するスピードが速い。釜の中の水分量が速く減っていくので、リアルタイム赤外線センサーの検知結果をもとにAIが判断して火力と加圧時間を調整し、古米でも甘みを引き出してふっくら炊き上げる、という寸法だ。

分かる、私にも違いが分かるぞ
説明が終わったら実食タイム。まずは2022年度産の政府備蓄米(ブレンド米)、いわゆる古古米を、新製品『SR-X910D』で炊いたものを二膳。「ビストロ匠技AI」機能で炊いたものと、「ビストロ匠技AI」機能を切って炊いたものだ。

ご飯茶碗を手に取った瞬間、違いが分かる。“無し”はわずかに臭みがある。“あり”は炊きたてごはんの香りしかしない。口に入れるとその差はさらに歴然。“あり”の方はお米の表面がツルツルしており、口の中で一粒一粒がパラパラとほぐれていく。食感も柔らかくてもちもちしている。それに対して、“なし”のほうがベタつきが強く、ほぐれない。食感は硬く、噛み応えがある感じ。米粒の表面を包む水分量が明らかに違うのがよく分かるのだ。
次に、24年度産の会津産コシヒカリ、いわゆる新米(8月上旬時点)を「ビストロ匠技AI」で炊いたものを試食。いやもう、明らかに違う。香り、舌触り、食感、甘み、どれをとっても段違い。パナソニックの炊飯器は、粒立ちがよく、みずみずしい炊き上がりが特徴だが、新米にこそその真価を発揮するのがよく分かる。古古米も決して不味いわけでなく、「ビストロ匠技AI」によってある程度瑞々しさを回復でき美味しく炊きあがっていたが、新米はもともとの含水量が異なるため、やはり比べるしまうと美味しさの違いをはっきりと感じてしまう。

記事作成時にはすでに25年度産新米(早場米)が一部出回っており、価格はさらに高騰する傾向にある。一方で、備蓄米の販売が1カ月延長されたが、10月以降は販売中止となり、高い新米だけになりそうだ。

パナソニックでは25年度の新米の出来栄え、収穫量、価格を厳しく見ており、来年夏にはまた流通量が不足する可能性があると予測している。その時、備蓄米をまた放出するのか、それとも外国産を増やすのかは不透明だが、日本人としては、どんなお米が来ても美味しく食べたいもの。炊飯器の力でそれを補うのも、ひとつの選択肢としてありだろう。






















