“製作費1600万”のYouTube発ドラマ『呪縛少女バギラちゃん』に注目 仕掛け人・YPが語るクリエイターとしての野望

YPが歩む映像監督としての“第2章”
ーーここからは、『バギラちゃん』について具体的に聞いていきたいと思います。これまでのYPさんの経歴が映し出されるように、YouTubeクリエイターの方も数多く出演されているのが印象的です。
YP:出演しているとしみつ(東海オンエア)とそらちぃ(アバンティーズ)は友達なんですよね。としみつに関しては、前から「演技に興味がある」と聞いていたので「今度出る?」という話になって。せっかくだからいい役をあげたいし、僕から見てもとしみつは演技ができるやつだ、っていう感覚があったんです。
としみつは音楽活動もしているからステージ上で自分を表現できる人だし、自分に入り込むことができる人は、人に入り込むこともできると思うんです。としみつもきっとある種“としみつ”を演じているところがあったりするので、キャラクターもその文脈にあった役を作って渡しました。
ーーとしみつさん演じる紫桃貢(しとう みつ)は、当て書き的に生まれたキャラクターなんですね。
YP:そうですね。紫桃貢が所属している“八咫烏”という組織には、いろんな性格のキャラクターがいます。そのなかでも荒々しいやつを、としみつに器として渡しました。
そらちぃも同じですね。そらちぃが演じる“助手”は、物語のなかでもけっこう重要な役なんです。軽薄でチャラそうなんですけど、決めるとこは決める。その感じもそらちぃっぽいなと思っています。実際そらちぃは普段チャラけてるけど、アーティスト活動もやりつつグループもまとめ役で。“らしい”役だなと思っていますね。
ーー本作には、俳優の井浦新さんも出演されています。
YP:1話を公開したときに、『バギラちゃん』の展示会を開いたんです。そこに来てくださって。井浦さんの友人が動画を紹介してくれたみたいで、その流れで来てくださったんです。そのときに「ちょっとでもいいから出してくださいよ」と言ってくださって……。もう、それだけで1話を作った価値がありました(笑)。
ーーそれはすごい出会いですね。
YP:本当に、この作品には引力があるなと思います。これからもどんどん引力が帯びて、いろんなものを巻き込んで大きくなっていくんだろうなという予感がします。
ーーキャストの並びも、いまの時代かつ、YPさんだからこそ実現できたキャスティングなのではないかと。
YP:そうですね。キャストやスタッフに関しては、いままでやってきたことがあるからこそ、組める相手だと思っています。実は人だけじゃなくて、物語にも時代を反映しているところがあって。ストーリーのクライマックスはもう決まっているんですけど、その時代に合わせた面白いことを途中でどれだけ盛り込めるかっていうことを常に考えています。それはコンテンツを走らせながら作るからこそ生まれる面白さだし、突発的なものを吸収して爆発力を上げることができる状態なのが、すごくいいですね。
ーーたしかに、1話が公開されてから2話が出るまで約8か月と、かなり長いスパンで制作していますよね。
YP:あのクオリティで魅せるには、これぐらいの時間がどうしてもかかるんですよね。お金の限界もありますし。
ーーちなみに、1話作るのにどのくらいの費用がかかったのでしょうか?
YP:だいたい1600万円です。最初は1000万くらいに納まるかと思ったんですけど……。もう、大変です(笑)。
ーー驚くような規模ですが、作品を見たら納得ですね。こだわりの強さを感じます。
YP:バギラちゃんの物語は、ここからかなり広げていくつもりなんです。1話でいろんな要素がギュッと詰まっていて。そこに『ドラゴンボール』や『BLEACH』『NARUTO』的なニュアンスも重なって……どんどんキャラクターの魅力や物語の厚みも増していく予定です。僕自身もどうなっていくんだろうなと思っています(笑)。
その先が読めないワクワク感を、このスパンでやっているので、視聴者の方には「長くやるんだな」っていうのを感じ取ってもらえたら嬉しいですね。ドラマ1話1話も面白いけど、たとえば今後『バギラちゃん』が映画になったときにも、毎シーズン盛り上げられるような作り方にしていきたいです。コミックスも走らせていきたいなと思っていますし、いろんなメディアの体系で展開していきたいです。
ーー横軸での展開もかなり視野に入れているんですね。改めてお仕事を請けるクリエイターという立場からゼロイチベースでコンテンツを作るという道も歩み始めたわけですが、やはりいままでとはやり方はかなり違ってきますか?
YP:なんというか、請け仕事は投げられたボールをどう打ち返すか、っていう“バッター”みたいな感じなんです。それで、打率がいいほどクリエイターとして評価される。でもゼロイチを作る人は、そもそもどのスポーツをやるのかも自分で決めなくてはいけない。たとえば野球をやるとなっても、球場を作っている人もいれば、団体を作っている人もいるし……戦い方が無限すぎて(笑)。やってみて改めて、これまでとはアプローチがまったく違うなと思いました。
自分も、やっぱりゲームから作り直さなきゃいけないなっていうのをすごく感じていて。ほかの人より早く高みに辿り着くには、ゲーム性から考える必要があるなと思っています。
ーーYPさんのキャリアは第2章を迎えたという感じですが、『バギラちゃん』の物語も、まだまだ先が読めませんね。
YP:このプロジェクト自体、マジで冒険ですね(笑)。クレジットも公開せずに、いきなりYouTubeでデカい作品を作って……。意外と何も考えてないんですよ、僕。面白そうだからやるっていうのが根幹にあって(笑)。人によっては計画的に盛り上げるタイミングを作っていくパターンもあると思うんですけど、僕は最初から全力投球しかできなくて。これは性格だと思うんですけど、「とにかくもう作っちゃおう」「やべえやつ作ろう」と思って。僕はどこまでいっても“作りたがり”なんですよね。
ーー『バギラちゃん』とともに歩み始めたYPさんのこれからも、楽しみにしています。
YP:本当に、いまの僕はとりあえず海賊王になることを決めて、船を出したというような状態なんです。なので、これからの『バギラちゃん』の物語と、映像監督としての僕がどうなっていくのかも期待していただけると嬉しいです。


























