“製作費1600万”のYouTube発ドラマ『呪縛少女バギラちゃん』に注目 仕掛け人・YPが語るクリエイターとしての野望

『バギラちゃん』仕掛け人・YPが語る野望

 YouTubeに突如として舞い降りたドラマ『呪縛少女バギラちゃん』が話題だ。好きピのために妖怪化け猫となったメンヘラ女の子・バギラちゃんが人を生き返らせる力を持つ“輪廻鏡”を巡り、トラブルに巻き込まれていく……。というストーリーの本作。豪華すぎるキャスト、ハイレベルな映像表現、謎に包まれた制作陣といった要素が注目を集め、2024年8月に公開された第1話は、2025年5月時点で100万回再生を突破している。

 その後徐々に作品の全貌が明らかになり、今回は本作の仕掛け人である映像クリエイター・YPにインタビューをすることができた。

 『呪縛少女バギラちゃん』とはなんなのか? そして、本作の背景にあるYP自身のキャリアについても聞いた。(はるまきもえ)

映像監督YP × YouTubeの距離感

ーー今回は、YPさんが“再現VTR”の制作を担当している『呪縛少女バギラちゃん(以下、バギラちゃん)』についてお伺いしていきたいと思います。まずは、これまでのYPさんのキャリアについて振り返っていきたいのですが、YPさんはいままでYouTubeというプラットフォームで数多くの作品を制作していますよね。

YP:そうですね。メインはミュージックビデオの制作なのですが、付随してYouTubeでどんなクリエイティブを展開するかということも、自分の人生ではずっとやってきたなと思います。

ーー最初のきっかけはなんだったのでしょうか?

YP:株式会社VAZのプロモーションビデオを制作したことが、最初の大きなYouTubeクリエイティブですね。

JAPANESE BUZZ | 侍イヤホンガンガンかまってスク水双子10回アクロバット女装筋肉角度ダンス魔貫マネキン着席ドント全然MiMiMiアイスPPAP女子高生 【VAZ inc.】

ーー映像を拝見させていただいたのですが、若手YouTuberが大勢出演しているのが印象的でした。

YP:当時、日清食品さんの『チキンラーメン』のWebCMで、バズった事象を詰め合わせにしたパロディ動画が投稿されていたんです。その動画は最後に「流行るより、愛される味を」というキャッチコピーで締め括られていて。それは、そのころ話題になっていた“バズ”に対するアンチテーゼでした。

 そのとき僕は20歳だったんですけど、「でも僕らの話題の中心にはいつも新しいバズがあって、それ自体はすごく自然なことだよな」と感じて、そのWebCMとまったく同じロケ地、フレームで、YouTuberやTikTokerの人たちが自ら発信してバズを楽しんでいる姿を写したんです。「バズを知らない恥を知れ」というキャッチコピーをつけて。

ーーまさにカウンターですね。

YP:そうですね(笑)。それが日本で初めてのYouTuber発信のリッチコンテンツだったんじゃないかなと思います。それからは水溜りボンドさんと一緒に「ハッピー毎日投稿終了前ソング」というミュージックビデオを作ったり、スカイピースさんと「YouTube Rewind in JAPAN 2021」という動画を作ったりして、自然とYouTuberの方と交流は深くなっていきましたね。

【MV】ハッピー毎日投稿終了前ソング【4K】
【最高傑作】すごい動画作ってみた。YouTube Rewind in JAPAN 2021

 とくに水溜りボンドのカンタさんとは、お互いクリエイティブに対しての興味が一緒で、そこでも交流が続いてきましたね。

Gorilla Attack - Gorilla Step (Official Music Video)

クリエイティブ=山登り

【令和特撮ドラマ】#1 | 呪縛少女バギラちゃん❣️「私の好きな人が幸せなら私は幸せだもん!」【Ghost Cat Girl BAGIRA】

ーーミュージックビデオ、CM、動画クリエイターとの映像制作など、YPさんの活動範囲は多岐に渡るかと思うのですが、そのなかでも今回お伺いする『バギラちゃん』は異色な存在に感じます。そもそも企画の発端はなんだったのでしょうか?

YP:うーん……。僕が作り手としてより大きいものを作るためには、お仕事を請けるクリエイターのままだと、登りたい山に登れないな、と思ったんです。その第一歩として生まれたのが、『バギラちゃん』なんですよね。

ーー山、ですか。

YP:はい。僕のなかで、クリエイティブって“山登り”に近い感覚がすごくあるんです。最初はみんななんとなく登っていて、途中で自分が登っている山がどんな山なのかに気づくんです。僕も6合目を超えて「そろそろ7合目入れるかな」っていうときに、霧が晴れて、いままで見えなかった頂上までの道のりが見えてきたんです。そしたら「うわ、まだけっこうあるな」と思って(笑)。

 しかも、頂上の向こうにさらにデカい山が見えたんです。僕は富士山を登っているつもりだったんですけど、その奥にエベレストが見えてきて、「いや、デカっ!」みたいな(笑)。しかもその山は、いまのままだと辿り着けないことにも気づいて。これまでのように受注で制作するんじゃなくて、0から1を作らないとその山は登れないと思ったんです。

ーーそのことに気づいたのは、いつごろだったのでしょうか。

YP:3年前くらいですね。それで、いま登っている山を1度下山することに決めたんです。

ーーそれは……なかなか大きな決断ですね。なぜそちらの道を選んだのですか?

YP:その道の方が大変だし困難なのはわかっていたんですが、そこで出会える人たちや出来事を選んだっていう感じです。より大きい山があれば登りたくなってしまう、という本能的なものもあるんですけど(笑)。

ーーなるほど。その入り口が『バギラちゃん』だったということですね。

【令和特撮ドラマ】#2 | 呪縛少女バギラちゃん❣️「好きピが仕事って言ったらなんでも許すのが愛ですか?」【Ghost Cat Girl BAGIRA】

YP:『バギラちゃん』は現在(2025年5月時点)2話まで公開しているのですが、僕としては1話で山に入ることが許されて、2話で歩き始めたな、みたいな感覚です。

ーー『バギラちゃん』はYouTube発のオリジナル作品ということも大きな特徴ですが、なぜYouTubeというフィールドを選んだのでしょうか。

YP:自分の全力をマックスで出せるのが、この状態だったというだけですね。僕はいままで数々のミュージックビデオを作り続けて、音楽との当てはめ、テンポ感を意識した編集、実写ベースでの映像表現、作品を絵で魅せる技術などを培ってきました。

 そして、Gorilla Attackやずっと真夜中でいいのに。さんのミュージックビデオで身につけたCGやアニメーションのディレクションの経験。監督を務めた『純猥談』の制作で、いまの世代の感情の動かし方など、そのすべてを掛け合わせて最大値をとった結果、YouTube発ドラマ作品の『バギラちゃん』が生まれたんです。

ずっと真夜中でいいのに。『猫リセット』MV (ZUTOMAYO - Neko Reset)
【短編映画】触れた、だけだった。 - 純猥談

ーー改めて、新たなクリエイティブの山を登るために、YPさんは具体的にどんな環境・装備を整えたのでしょうか。

YP:まず最初に、ゴール地点を決めました。僕が「あの山に登る」って目標を決めたら、「それなら俺も行ってみたい」「登ってみたかったんだよね」と、仲間がたくさん現れてくれたんです。それがすごく嬉しかったですね。

 あと、僕は山を登るために必要なのが、“仲間”と“資金力”だと思っていて。資金力は純粋に山を登っていくための体力ですよね。あとは優秀な仲間。仲間集めはいまもちょっとずつ進めています。1度「この人は合うな」と思ったら、その仕事はずっとその人と一緒にしています。まず最初にスタッフを抑えてから、キャストやクライアントのスケジュールを抑える……っていう、ちょっと珍しいタイプのクリエイティブをしているかもしれませんね(笑)。

ーーちなみに、これから仲間として欲しいなと思う人材はいますか?

YP:海外展開をサポートしてくれる人ですね。モノはこっちでいいのを作るので、そこに最大の飛距離を出してくれる存在がいたら、めちゃくちゃ助かるなと思っています。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる