【特集】スキルアップに欠かせない「ビジネスハック」の基本ツール
画像も動画もこれ一つでOK 『Adobe Express』で始めるコンテンツ制作ガイド

『Adobe Express』とは?
『Adobe Express』はアドビが提供する無料から使えるオールインワンのコンテンツ制作アプリだ。

特長は、知識や技術がなくても完成度の高い“プロレベル”のデザインや動画が簡単に作れることだ。テンプレートが充実しており、自由に使用できるイラストや写真の素材、フォントに加え、生成機能も充実している。さらに近年のアップデートによって動画関連の機能も大幅に拡充しており、SNSだけでなく動画投稿サイト、チラシの印刷など様々な媒体に対応するコンテンツが作れるオールジャンルデザインアプリケーションとなっている。
アドビの他クリエイティブツールとの連携もスムーズなため、『Adobe Photoshop』『Adobe Illustrator』、『Adobe InDesign』、『Adobe Fresco』、『Adobe Acrobat』で制作されたコンテンツをAdobe Expressに書き出してさらに編集を加えたりすることが可能で、、アクセスのしやすさからノンプロ・ノンデザイナーといったユーザーが一緒にコラボレーションするにも“最適”なアプリケーションになっている。
本稿では、『Adobe Express』の魅力や“ノンプロ・ノンデザイナー向けのデザインツール”としてどのようなことができるのか、導入から応用まで解説していく。
導入からテンプレートでデザインを作るまで
『Adobe Express』は、PCであればブラウザ上で動くデスクトップ版を、スマートフォンやタブレットであればアプリをダウンロードして使用できる。
なお、『Adobe Express』に限らず、アドビの製品を利用するためにはアドビのアカウントを作成する必要がある。メールアドレスか、Google、LINE、Apple、Facebook、Microsoft、Kakaoのいずれかのアカウントに紐づけるかたちでアカウントを作成しよう。
アドビのアカウントは「Adobe Creative Cloud(アドビ クリエイティブ クラウド)」という、アドビ製品の統合プラットフォームに紐づけられ、ここから様々なアドビ製品へとアクセスできる。なお『Adobe Express』だけを利用するのあれば、特に気にする必要はないため、今回はそのまま話を進めよう。
まずは実際に『Adobe Express』を使ってデザインを作ってみよう。今回はPCのブラウザから利用できるデスクトップ版をベースに解説するが、タブレット、スマートフォンのアプリ版でも基本的にやることは変わらない。
まずは『Adobe Express』にアクセスし、画面上部のタブバー(おすすめ / SNS / 動画 / …)からデザインの用途に合わせてフォーマットを選ぶのがおすすめだ。今回はInstagramのフィード投稿を例に進めていきたいので、〈SNS〉→〈Instagram 投稿(正方形)〉と選択。
早速デザイン画面が表れるので、まずは画面左側のテンプレートの一覧から作りたいデザインに近いものを選ぼう。なお紫の王冠マークがついているものに注意。選択はできるが、プレミアム(有料)プランのユーザーのみが書き出し(.jpgや.pdfとして保存)できるテンプレートなので、無料プランで利用する場合は王冠マークがついていないものから選択しよう。
テンプレートを選んだら、まずはテキストの内容を変えてみる。編集は簡単で、変更したいテキストボックスを選択して文字を入力するだけ。
テキストを変更したら、今度はフォントも変えてみる。テキストを選択すると、画面左側に操作パネルが現れるので、好きなフォントを選ぼう。テンプレートにはもともとデザインに合うフォントが使用されているので、デザインに自信が無い場合は〈おすすめのフォント〉に表示されている中から選ぶと見栄えがグッとよくなる。


さて、次はデザイン素材を入れ替えてみよう。もともとのデザインでテキスト下に入っているお店のアイコンを選択しバックスペースキーで削除。次に画面左端のタブから〈素材〉を選択。検索窓で入れたい要素を検索してみると、「Adobe Stock」上からデザイン素材が出てくる。気に入った素材を選択するとデザイン画面上に現れるので、位置や大きさを調整して配置すれば完了だ。


背景色を変更するときも、おすすめカラーを提示してくれる。迷ったら〈おすすめ〉からいくつか色を選んでみて、しっくりしたものを選ぶとよい。
基本的にはこのように、テンプレートをベースにして、要素の変更と素材の入れ替えによってデザインしてみると、自然とクオリティの高いクリエイティブを作ることができる。
『Adobe Express』で作ったデザインは各種SNSへシームレスに投稿できるのも便利だ。画面右上の〈共有〉ボタンから〈SNSに投稿〉を選択すると、InstagramやXをはじめとするSNSアカウントとの連携が可能。キャプションの追加や投稿予約といった機能も利用可能で、しっかりと運用していきたいビジネスアカウントの投稿を作るのにも最適だ。
「Adobe Stock」や「Adobe Firefly」による豊富な素材が強み
『Adobe Express』を利用する上での大きなメリットは、「Adobe Stock」上の写真や動画素材にアクセスできる点だろう。世の中には著作権フリーで利用できる素材もあるにはあるが、「フリー素材」と謳っていた画像が、実際には有料素材の無断転載だった……なんて落とし穴も存在する。そのため、インターネットやSNSで“拾ってきた”画像の殆どにおいて、自由に使用して良いものはほぼ存在しないと考えるのが安全だ。
特に、企業のSNSアカウント等で公開することを想定したデザインの場合、商用利用にあたるため著作権の問題はシビアに考える必要がある。その点、「Adobe Stock」で提供されている素材はすべて商用利用が可能だ。世界中のプロのデザイナーも利用する高品質な素材が揃っているので、これを活用しない手はない。
以上の理由で、使用する素材は「Adobe Stock」上から選択するのがベターだが、求める素材がどうしても見つからない場合もある。そんなときは素材を生成するのも一つの手だ。画面左端の〈生成AI〉タブか、〈メディア〉タブから〈画像を生成〉を選択してアドビが提供する生成AI「Adobe Firefly」を利用できる。「Adobe Firefly」で生成された素材はもちろんすべて商用利用可能だ。なお、プランに応じて生成クレジット(生成できる数)が変わってくるためその点は要注意。
プロンプトとして求める画像の内容を入力し、画像のスタイルを選択、もしくは参照画像を読み込ませることで、生成する画像の方向づけを行う。
生成した画像は、そのまま利用しても良いが、例えば〈編集〉タブの中から〈背景を削除〉を選択すれば、一瞬で背景が切り抜かれた画像にもなる。


素材を生成してしまえば、まさにクリエイティブの幅は無限だ。とはいえアセットの優秀さを考えると無理に生成する必要もない。使い時を見極めよう。
プレゼンテーション資料作りにも最適
『Adobe Express』には資料のテンプレートも充実している。これらは整ったプレゼン資料や社内共有資料をつくるのに最適だ。
他のプレゼンテーションアプリとの大きな違いは、やはり「Adobe Stock」やプロのデザイン現場でも頻繁に利用される「Adobe Fonts」(フォント)が利用できる点だろう。またテンプレートは前述したように使用フォントや配色がある程度定まっているため、手軽に見やすい資料を作れるのがうれしい。各種グラフや表も『Adobe Express』内で作れるので、アプリを行ったり来たりしなくてよいのも便利だ。


また驚くべきことに、〈翻訳〉機能を使用するとすべてのスライドを一括で指定言語へ翻訳できてしまう。日本語で作ったスライドを、そのまま他言語へ翻訳できるため、海外展開などを見据えたビジネスの資料作りにももってこいだ。この翻訳機能はプレゼン資料に限らず利用できるので、ガンガン使っていきたい。
無料で動画編集も可能
『Adobe Express』は、動画編集アプリケーションとしての機能も充実している。
画面上部のタブバーから〈動画〉を選択すると、ショート動画やYouTube用の編集機能やテンプレートが現れる。

こちらも他の機能と同様、各種テンプレートが用意されており、動画、静止画素材、そしてBGMや効果音といった音素材も「Adobe Stock」内のものを使用できる。またデスクトップ版の場合は、アドオン(拡張機能)からAudiostockやTikTok Symphonyの素材を利用することもできる。もちろん、自身で用意した素材から動画を作ってもよい。
動画編集画面では、一般的な動画編集で使用する素材の配置、レイヤー、トランジションの設定など必要な機能は概ね備えており、すぐにでも動画コンテンツを作り始められる。また素材に対して〈トリミング〉〈サイズ変更〉〈結合〉〈切り抜き〉といった動画編集に必要な処理を簡単に施すこともできる。
昨今のマーケティング市場において、ショート動画は宣伝ツールとして最も重要なコンテンツと言っても過言ではない。いまや動画編集スキルは、ビジネスやプロジェクトの効果的な宣伝を行うための必須技能だ。
「動画編集ソフトを触ったことがない」という人も、まずはテンプレートを編集するところから始めてみると、動画編集の仕組みやルールを理解する助けになるだろう。ぜひおすすめしたい。
さらにワンステップ上の活用を 「プレミアムプラン」でできること
『Adobe Express』には月額1,180円(税込)から利用できる有料のプレミアムプランが用意されている。
プレミアムプランに加入すると、すべてのテンプレート及びデザイン素材、「Adobe Fonts」が潤沢に利用できるようになる。「Adobe Stock」上のストックフォトもロイヤリティフリーのものであればすべて使用可能だ。他にも100GB分のクラウドストレージや、PDFファイルを読み込んで編集したり、複数のファイルを統合して書き出す、といったアクションを無制限で利用できるようになる。さらには前述した「背景を削除」を動画でも行えるのでクリエイティブの幅がさらに広がる。
デザイン面においては〈ブランド〉タブを利用できるのも大きな特徴だ。コーポレートブランディングの基本として、ブランド専用の配色、フォント、ロゴ、デザインテンプレートなど、そのブランドの型を決め、編集不可の部分はコントロールをすることで、世界観を統一しやすくなる。プレミアムプランの〈ブランド〉タブでは、各種要素をブランドのテンプレートとして登録でき、デザイン画面等ですぐに呼び出しができる。これもぜひ活用したい機能だ。


クリエイターの第一歩目に最適なツール
『Adobe Express』は、デザインソフトや動画編集ソフトを触ったことがない人にとって、間違いなく効果的なアプリケーションだ。
デザインや動画編集の初歩を体感的に学びながら、質の高いテンプレートにふれることで知見を広げていける。そしてなによりも、実用的だ。
無料版で慣れたらプレミアムプランへ変更し、さらにクリエイティブの質を高めていくことができる。それでも物足りなくなれば、「Adobe Creative Cloud」の各種プランを利用し、プロユースのソフトウェアを導入するのも手だ。そうして少しずつステップアップしていくことで、いずれ自身の理想のクリエイティブを生み出すことができるようになるはず。ぜひ、その第一歩目として『Adobe Express』をビジネスや制作に活かしてもらいたい。


































