妖怪・宇垣美里のYouTubeチャンネルは生き様を切り取った“動くエッセイ”　視聴者を甘やかさない鋭い言葉が心を鷲掴みに

　2025年1月、宇垣美里のYouTubeチャンネルが開設された。元TBSアナウンサーとして知られ、フリーに転身後は舞台、執筆、ラジオとマルチに活躍する宇垣美里の個性が炸裂する、その名も『宇垣美里 妖怪 全てエッセイに書いてやるからな女』。

　その異様な名前からして他のチャンネルとは一線を画した、ただならぬ雰囲気を感じる。元TBSアナウンサーという輝かしい肩書きを剥いだら中から出てくるのは、言葉の刃を振り回す生々しい「妖怪・宇垣美里」だ。彼女の内側から溢れる毒と情熱が、画面越しにビシビシ刺さってくる戦場である。視聴者はただ見ているだけじゃ済まねえ。宇垣美里の言葉に一気に心を鷲掴みにされて、底なし沼に引きずり込まれる。そこがたまらない。

　初回動画から宇垣美里のリアルが爆発。プロデューサー芦田太郎との3時間ガチンコ対談で幕開け。「YouTubeを始めるか否か」というメタな議論を堂々と晒す。普通、YouTuberならばキラキラしたスタートを切るだろう。しかし宇垣美里は違う。悩み、葛藤、迷い。全てをぶちまける。まるで深夜の居酒屋で、友だちと人生をガチで語り合うみたいな空気。彼女は決して視聴者を甘やかさねえ。悩み相談にも、優しく手を差し伸べるだけじゃなく、時には背中をドンと押して「自分で走れ」と突き放す。それが、ゾクゾクするほど痛快だ。

　宇垣美里のトークはリズムがあって、キレがあって、心にガツンと響く。怒りの中に、ちゃんと筋の通った信念がある。彼女の言葉は、ただの感情の爆発ではなく理不尽をぶった斬る、鋭い刃だ。世間の「いい子」の枠をぶち壊して、自分の言葉で戦っている。そこには、理不尽を許さない信念が宿っている。それが格好良い。

　ガシャポンを回す、シルバニアファミリーのショップで買い物をする緩い動画から、映画監督・今泉力哉とのガチトークまで、本数の少なさを感じさせないほど幅が広い。そのどれもが「宇垣美里」というフィルターを通すと彼女の色になる。

　今泉力哉とはアナウンサーと映画監督という枠を超えて、人生、愛、葛藤について語り合う。その姿は、まるで哲学者の対話を覗き見ているかのようだ。彼女は監督の言葉に真剣に耳を傾け、時に鋭く切り込み、時に共感を滲ませる。その一瞬一瞬が、彼女の知性と情熱の結晶だ。視聴者はただの観客ではなく、彼女の思考の渦に巻き込まれ、自分自身と向き合うことを強いられる。「ああ、こんな風に生きてもいいんだ」と、気づかされる瞬間がそこにある。

　たとえば、ガシャポンを回す動画。普通なら、ただのほのぼの企画だ。だが、宇垣美里の手にかかると、強烈なエッセイへと変化する。複数ある目当てのガチャポンを見て「（欲しいもの）全部やったらええねん」という一言は、ただの軽いノリではない。欲望や好奇心を抑え込まず、思い切り突き進むことの大切さを肯定する、彼女の人生哲学の断片のようなものを感じさせる。

　シルバニアファミリーで遊ぶ動画では、子どものような無邪気さと、大人の視点で物事を捉える冷静さが同居している。スタッフが「陳列」という言葉を使った時、すぐさま「遊んでる。それぞれのことをしてます皆さん」と呟くのだが、そこには単なる遊び心を超えた、人生への深い洞察が潜んでいる。視聴者はその一言にハッとし、自分が忘れかけていた純粋な好奇心を呼び起こされる。

　そんな言葉たちが、胸に突き刺さり、日常の中でふと立ち止まったときに思い出す。「ああ、宇垣美里ならこう言うだろうな」と。

　『宇垣美里 妖怪 全てエッセイに書いてやるからな女』は、単なる動画の集合体ではない。それは彼女の生き様そのものを切り取った、動くエッセイ。宇垣美里という人間の多面性を映し出す鏡でもある。彼女が画面越しに放つ言葉や表情、仕草の一つひとつが、まるでページをめくるように視聴者の心に刻まれる。そこには、飾らない人間・宇垣美里の息遣いがある。彼女の動画は、一冊の本を読んでいるかのように、視聴者を深い思索の旅へと誘う。

　時に少女のように無垢で、時に戦士のように勇敢。彼女は枠にはまらない。いや、枠を自らぶち壊す。その姿は、現代社会の「こうあるべき」という呪縛に縛られがちな私たちに、自由であることの意味を教えてくれる。彼女の動画を見終えた後、視聴者はどこか軽やかになり、自分の内なる「妖怪」を解き放ちたくなる衝動に駆られる。

　妖怪全てエッセイに書いてやるからな女、次はあなたの心の中に現れるかもしれない。