両者合わせて100万円超! Astell&Kernのデジタルプレーヤー『A&ultima SP4000』と プレミアムIEM『XIO』が織り成す唯一無二の美音とは

イヤホンやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)、パソコン・周辺機器の輸入販売を手掛けるアユートは、2025年夏〜秋の新製品2モデルの先行体験会を開催した。Astell&Kern(アステル&ケルン)のDAP『A&ultima SP4000』とAstell&Kern×64AudioのコラボによるプレミアムIEM(インイヤーモニター)の『XIO』というラインナップだ。
『SP4000』は、同ブランドのフラッグシップDAPとしてポータブルオーディオファンの人気を集めている『A&ultima SP3000』の後継モデルとなる。本体デザインや基本的なスペックは踏襲しつつ、内部回路のグレードアップでさらなる高音質を目指している。価格は69万3000円前後を想定しており、8月中の発売を予定しているそうだ。
本体のハウジングには「Stainless Steel 904L」を採用。これは『SP3000』で、DAPとしては世界で初めて使われた素材で一般的なステンレスよりも硬く、優れた耐久性と耐食性を備えていることで知られており、高級腕時計などでも採用されている。

新たなD/Aコンバーター回路の搭載で、理想的なデジタル/アナログ変換を実現
音質のキーとなるD/Aコンバーター回路には、AKM(旭化成エレクトロニクス)の「AK4191EQ」と「AK4499EX」をそれぞれ4基搭載している。ここが『SP3000』からの一番の変更点で、『SP3000』では「AK4191EQ」2基と「AK4499EX」4基を使った「HEXAオーディオ回路構造」を内蔵していた。
一般的にオーディオプレーヤーでは、DACチップ内部でデジタル信号とアナログ信号を一緒に処理している。しかし『SP3000』では、入力されたデジタル信号のノイズをデジタル・デルタシグマ・モジュレーターの「AK4191EQ」で分離して低減、そこから最新DACチップの「AK4499EX」でアナログ信号に変換していた。これにより高S/Nを実現、クリアなサウンドが実現できていた。
『SP4000』ではそれをさらに進め、「AK4191EQ」と「AK4499EX」を1対1にすることで、理想的なデジタル/アナログ変換処理を可能にしている。同時にオペアンプを『SP3000』の2倍搭載して並列処理を可能にした。こうすることで、出力レベルを上げてもノイズを抑えられるようになったとのことだ。

DAC回路の動作を切り替える「High driving mode」の効果は大きい!
なおオペアンプをすべて使った音を楽しみたい場合は、本体の「High driving mode」をオンにすればいい。ただし、このモードでは消費電力が(かなり)増えるという。「High driving mode」をオフにした場合は使うオペアンプが半分になって、『SP3000』と同等の処理になるそうだ。
オーディオフォーマットはWAV/FLAC/WMA/ALAC/AIFF/DFF/DSF/MP3などに対応。ハイレゾ信号はPCM最大768kHz(16/24/32bit)、DSD512(22.4MHz/1bit)が再生可能。44.1/48kHzなどのデジタル信号を352.8kHz/32bit やDSD信号に変換・再生するDAR(Digital Audio Remaster)機能も進化している。
ヘッドホン端子は3.5mm3極アンバランス出力(光デジタル出力と兼用)と4.4mm5極バランス出力を搭載。『SP3000』に搭載されていた2.5mmバランス出力は省略された。その他、本体ディスプレイは6インチ/1080×2160画素となり、『SP3000』の5.46インチ/1080×1920画素から大型&高精細化されている。

10ドライバーを搭載したユニバーサルIEM『XIO』は、8月頃の発売を予定
Astell&Kernと64 AudioのコラボレーションIEMの『XIO』は、2DD(ダイナミック型)+8BA(バランスド・アーマチュア)による10ドライバーを搭載したハイエンドモデルで、価格は60万円台になる見込みとのこと。発売は2025年8月頃を予定している。
10ドライバーの構成は、低域用に2DD、中域用にBA×6、中高域用にBA×1、超高域用にtia(tubeless In-ear Audio) BA×1というもの。超高域用のtia BAは64 AUDIOの独自技術を採用したオープン型BAドライバーで、筐体をオープンにすることで、ドライバーが本来持っているポテンシャルを引き出すことができるそうだ。
また『XIO』にはapex(Air Pressure Exchanged Technology)テクノロジーも採用されている。これはモジュールをイヤホンの筐体に搭載することで、本来なら鼓膜にかかるはずの空気圧を外に逃がし、耳の疲労を抑えることができるものだ。初期状態ではM15(DLC/-15dB)が装着されているが、他にもM20(シルバー/-20dB)、M12(ゴールド/-12dB)、M10(ブラック/-10dB)が付属しており、好みに応じて選択可能だ。

『A&ultima SP4000』は、朗々とした広がりのあるサウンドが魅力
体験会で、両モデルの音を確認。まず『SP4000』に、同じくAstell&Kernの『LUNA』(13mm平面ドライバー搭載、50万円前後)を繋いで音を聞いた(4.4mmバランス接続)。イ・ムジチ指揮「ビバルディ 四季」(192kHz/24bit/FLAC)は、各楽器が奏でる細かい音から朗々と響く広がりのある音場まで、ひじょうにクリーンで、透明感のある演奏として楽しめる。ハイレゾらしい細やかでていねいなサウンドだ。
96kHz/24bit/FLACのMrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」もギターの弦が活き活きしていて、ボーカルの声、微妙な演出感もうまく再現されている。44.1kHz/16bit/WAVの「もののけ姫」(米良美一)は、空気の澄んだ空間にピアノが余韻を伴って綺麗に響いてきた。
ここで「High driving mode」をオンにすると、予想以上の変化が聞き取れた。オフでも上記のようにクリーンで心地いい音が再生されていたが、オンではそこに力強さが加わる。細かな情報量とパワーを両立したサウンドとして、(バッテリー持続時間はさておき)常用したくなる。

『XIO』の優れた装着感も、大きな魅力
『SP4000』に、もうひとつの新製品『XIO』を繋いだらどうなるか? その前に『XIO』を装着した際のつけ心地のよさ、安定感に驚いた。イヤーチップ部がしっかり耳に入り、頭を動かしてもずれるようなことがない。外部ノイズもすっと収まりながら、嫌な密閉感、圧迫感はない。長時間付けているイヤホンとして、この快適さは嬉しい。
4.4mmバランス接続で音を再生する(「High driving mode」はオン)。先程聞いた『LUNA』と比べても、いっそう音圧が上がって迫力が増してくる。音の描き分けが明瞭になって、さらに力が籠もってくる。
クラシックの名曲「ビバルディ 四季」を聴いてみると、音の厚みと細やかさに違いが明確に。ステージに近い席で音を浴びながら演奏を楽しんでいる、そんな感覚に包まれる。続いて藤井 風「まつり」(48kHz/24bit/FLAC)を選ぶと低音が充実した、バランスのいいサウンドとして聞こえてきた。ボーカルもどことなく力が抜けてリラックスした印象になるのが面白い。自然に包みこんでくれる、そんな体験ができるイヤホンだ。

『SP4000』&『XIO』という超ハイエンドシステムは、一度は聞く価値あり
『SP4000』と『XIO』の組み合わせは、合計で130万円近い超ハイエンドシステムだが、その音は緻密さと自然さ、力強さといった要素を高いレベルで融合した、唯一無二の味わいを持っている。ポータブルオーディオ愛好家は、このサウンドを体験すべきと感じた次第だ。
参考資料
https://www.iriver.jp























