ーー「miniKORG 700Sm」の音質の印象を教えてください。

武田：音質については、オリジナルの特徴である"太く、クリアで抜けの良いサウンド"を強く感じました。初めてアナログシンセを使ったのですが、これが「音が太い」ということなんだと実感しましたね。それに普段使っているアナログモデリングのKingKORGシリーズと比べて、ステレオ幅が広く、より音に広がりがある印象を受けました。

　とくにシンセベースのようなプリセット4番の音色は抜けが本当に良かったです。この音でベースラインを弾くのが楽しすぎたので、そればっかりやっていました（笑）。

ーーアルペジエーターやジョイスティックなど、オリジナルにはない追加機能も搭載されていますが、そのなかでとくに魅力を感じた機能を教えてください。

武田：追加機能では、まずプログラムメモリーとスプリングリバーブが良いですね。プログラムメモリーがあることで設定を保存できますし、スプリングリバーブも外部エフェクターが必要ないほどしっかりとした音質かつ少しダークな感じがするところも気に入っています。それと速弾きしながらジョイスティックでピッチベンドすると、人力アルペジエーターのような音が出せるのも楽しいです。

　ただ、一番気に入ったのはトップパネルのVCO2モード・セレクターです。「MODULATOR」にするとリングモジュレーター的な効果が得られたり、「NOISE」にすれば音がホワイトノイズになったりして、ここをいじるだけでも相当面白いことができます。

ーー 「miniKORG 700Sm」のアナログ・モノシンセならではの音色や操作性は、演奏にどんなインスピレーションを与えてくれそうですか？

武田：使いこなせるようになることが前提ですが、いわゆるシンセっぽくない音でも瞬時に出せる感覚があります。作れる音に際限がなく、本当に幅広い音作りができると思うので、「ここをこうやったらもっとこういう音が出そう」というイメージがどんどん湧いてきます。

　アナログシンセというと、いかにもそれらしい音が鳴る印象がありますが、KORGの場合は必ずしもそうした音にならないというか。そういう意味では、メーカーが「この音を使ってください」と提案するのではなく、KORGのシンセの音作りは、ユーザーに委ねられている気がします。

　そういうメーカーの特色が反映されたシンセだからこそ、説明書を読んだだけでは絶対にわからない領域に行ける感じがするというか、波形がどうとかではなく、本当に意識をダイレクトに投影できるのがありがたいですね。

ーー 普段から使われているKingKORGシリーズと「miniKORG 700Sm」は、どちらも即興演奏に向いているとのことでしたが、具体的な操作性の違いはどのようなところにあると感じましたか？

武田：「miniKORG 700Sm」は音がとても綺麗で太さもあってしっかりしているため、エフェクターは必要ないと感じました。それにKingKORGよりもパラメーターを動かしているときの音の変化の大きさも、使っていてとても楽しい部分ですね。

　正直、KingKORGの場合は長年使っていることもあって、使うときの身体操作の感覚が固まってしまっている気もしていて。そういう意味でもまだ使い慣れていない「miniKORG 700Sm」を使うことで、また新しいパフォーマンスの扉が開く可能性を感じました。

ーー 「miniKORG 700Sm」ならではの魅力でほかに印象的だった部分はありますか？

武田：これは本体の魅力とは別の話ですが、実は「miniKORG 700Sm」の取扱説明書も面白いんです。通常の説明だけでなく、オリジナルの設計者による手書きのイラスト入りの説明も入っています。またたとえば、フルートの音や風の音など、音作りのためのセッティング例も含まれています。こうしたオリジナル当時の時代背景が伝わってくるレトロ感のある説明書が付属するところにもKORGらしい遊び心を感じました。

ーー長年愛用されているKORGのシンセサイザーは、ご自身のアーティスト活動においてどのような役割を果たしているとお考えでしょうか？

武田：KORGのシンセは、本当に使う人のことを考えて作られているので、使いやすいだけでなく、使い方の余白もたくさんあるので探求心も深まっていきます。もし、ライブにたった1台だけシンセを持っていくというのであれば、必ずKORGのシンセを選びますね。だから、私にとってなくてはならない存在です。

ーー 「miniKORG 700Sm」やほかのハードのシンセサイザーを使って音楽制作を始めてみたい人にメッセージをお願いいたします。

武田：これからハードシンセを使い始める人は、まずはひとつ買ってみて、ひたすら試してみれば良いと思います。そうすると使い方が自然と身についてきます。それと自分に向いたシンセを見つけるには、実際に楽器屋に行って、いろいろな実機を触ってみることも大切だと思います。

■製品情報
『miniKORG 700Sm』
発売中
製品ページ：https://www.korg.com/jp/products/synthesizers/minikorg_700sm/

■リリース情報
2024年8月発売・武田理沙4thソロアルバム『パラレルワールド』
https://music.apple.com/jp/album/parallel-world/1756671605

■武田理沙ライブ情報
http://www.bloc.jp/tkdrisa22/