着物姿で海外へ日本文化を紹介 Kimono Momに聞く成功の裏側と「グローバルな発信」の重要性

YouTubeクリエイターとしての工夫と子どもとの関わり
文化や料理を伝える際に工夫していることについて、Moeはこう語った。
「日本と同じ食材が手に入らないこともあるので、どこにいても作れるレシピにすることを心がけています。ベーコンやトマトなど、日本では使わない食材でも出汁の代わりに使って、お味噌汁を作ったりもしています」
こうしたアレンジの発想は、海外在住者ならではの経験から生まれたものだ。日本の味や行事にこだわりながらも、海外の視聴者にとって日本を知る“最初の一歩”となるよう、再現しやすい内容を意識している。
「Kimono Mom」には、Moeさんだけではなく家族も出演している。そのあたりについては、どんなことを意識しているのだろうか。「子ども向けチャンネルにはならないように意識しています。娘が主役ではなく、あくまで『ママの生活に登場する娘』という立ち位置です」
娘のことを第1に考えているMoe。「娘の出演についても夫と常に話し合っています。将来、娘が『出演したくない』と言ったときにも対応できるよう、主役ではない見せ方を徹底しているんです」この配慮が、ファミリーチャンネルとしての信頼感にもつながっているのだ。
撮影の裏側についてはこう語った。「基本的にはiPhoneで撮影しています。それにくわえて、Vlog用のカメラも使っています。軽くて扱いやすく、持ち運びにも便利です。撮影チームを作って活動することができたら、もっと良い音声や映像を目指したいと思っています。ただ、いまは家族だけで動いているので、娘を片手にiPhoneで撮影するのが現実的な限界です。リアルな雰囲気が残る動画になっているのも、いまの私たちの自然体の雰囲気だと感じています」
ちなみに、編集ソフトについて聞いてみると「編集にはアプリ感覚で操作できる簡単なソフトを使っています。ほかのプロ向けソフトも試したことがありますが、難しすぎて私には合いませんでした」とのことだった。
「日本食といえばKimono Mom」と言われる未来を目指して
YouTubeの登録者数が増えるにつれ、活動の幅もどんどん広がっていった「Kimono Mom」。特に「UMAMI SAUCE」の開発は、YouTubeクリエイターの枠を超えた挑戦だったという。
「出汁文化が中心の日本食って、海外の人にとっては本当にハードルが高いんです。スパイスをあまり使わずに出汁の旨みがメインの文化なので、『どうやって作ればいいの? 』と聞かれることが多くて。みんなで同じ食卓を囲める調味料があればと思い、ビーガン・グルテンフリー・ノンアルコールのめんつゆを作ることにしました」
開発は一筋縄ではいかなかったと語るMoe。無添加であることにこだわり、MSG(うま味調味料)や化学調味料を使わないレシピを求めて、全国のメーカーにアプローチしたが、なかなか協力が得られなかったという。
「『それは難しい』と断られることも多くて。でも私は自分の名前で、自分の責任で出したかった。視聴者さんの声に応えたかったんです。そんななか、茨城県にある300年続くお醤油屋さんが私の思いに共感してくださって、そこから2年半かけてようやく完成しました」
現在は活動の軸をアメリカに移したMoe。「海外に行ったときに『日本の家庭料理といえばKimono Mom』と言われるようになりたいし、SNSやUMAMI SAUCEなどのプロダクトを通して、世界中どこにいても日本食を楽しめる環境を作っていきたい」と目標を語ってくれた。
変わらず、いや、いっそう多忙な日々を送っているようで、YouTubeと並行しての商品開発や日々の様子については「夫と会社を経営しながら、娘の育児もしているので、毎日バタバタです。アメリカに来てからはイベントや打ち合わせも多くて、動画に向き合う時間が減ってしまいました。以前は毎週必ず更新していたのに、今は1か月以上投稿できていない状態です」と明かした。
それでも、YouTubeへの思いは変わらないようだ。
「元々、100万人を目指して始めたので、途中でやめるという選択肢はなかったです。家の中も娘の顔も見せている以上、ちゃんと責任を持って続けなければと思ってます」
「ファンの方の存在も、大きな支えになっています。YouTubeのメンバーシップに入ってくれている方々には、移住や『UMAMI SAUCE』のことも最初に相談しています。開発の際に『クラウドファンディングをやれば? 』って背中を押してくれたのもその方たち。彼らがいたから、何度も壁を乗り越えられました」
最後に、これから社会で活躍したいと考えるクリエイターに向けて、アドバイスをもらった。「英語は勉強したほうがいいと思います。私もいま、英語が全然喋れなくて困っているんです(笑)。子育て中で時間がないとは思いますが、耳で聞くだけでも違います。
いくらAIの力を借りられる時代とはいえ、インタビューやテレビの場では自分の言葉で喋ることがやっぱり大事だと感じています。英語を理解するだけでなく、自分の気持ちを英語で伝えられるようになるのが理想です。私自身、英語が話せなくてもキャラバン(イベント巡業)ぐらいはできました。だから、いまから英語を学び始めるのも、全然遅くないと思います」
























