超能力を駆使して深淵へと至れ メカニカル&バイオSF世界を冒険する2Dパズルアクション『Bionic Bay』レビュー

2Dパズルアクション『Bionic Bay』レビュー

 『Bionic Bay』をクリアした。

 本作は有機的に蠢くバイオSF的世界を舞台に、超能力を駆使して奥へ奥へと探検する2Dパズルアクションゲームだ。

 飽きる前に次々と新しいギミックや能力が投下されるので、止め時が見つからないデザインになっていた。一方で、ストーリーの説明不足などは目立った欠点としてあった。ひとつずつ見ていこう。

位置スワップを駆使して前に進め いくつもの能力を組み合わせた良作パズル

 本作は謎の研究所で爆破が起き、逃げ惑うなかで特殊能力を会得した研究員を主人公にしたパズルゲームだ。ほとんど何も説明されぬまま、ただひたすらうねうねと壁や天井が蠢くバイオSFの世界を彷徨うことになる。

 といっても、ゲームとしては非常に手堅いパズルで、手に入れた能力を順番に使っていき、謎を解いたり、求められるアクションをこなしたりする。近年ではPlaydeadの『LIMBO』や『INSIDE』に代表されるようなステージクリア型のパズルプラットフォーマーだ。

 能力の基本となるのは最初に手に入る位置スワップの力だ。(Xboxコントローラー基準で)Xボタンを押して物にインタラクトしたあと、LBボタンを押すことで現在の自分とインタラクトした物の位置を交換することができる。

 これによって届かない場所にアクセスしたり、ビームをやり過ごしたりすることができる。「その手があったか!」と膝を打つほどユニークな解法はないが、ちょっとした頭の体操として機能する難易度のパズルが多かった。

 他にも、時間を遅くしたり、物を吹き飛ばしたりといった色々な超能力があり、これらと位置スワップなどを組み合わせてゲームを進めていくことになる。どれもオーソドックスではあるが、一瞬で頭に入ってくるわかりやすさがあり、終盤を除けばサクサク進めることができた。

 また、超能力自体はメジャーなものではあるが、ステージギミックはかなりバラエティがあり、新鮮な驚きが常にあった。特に乗っかると高くジャンプできる緑の棒と、重力を操作して向かうべきポイントに着地するステージはかなり相性がよく、歯ごたえのある空中制御が求められた。一部、触ってはいけないものと触れるものの違いがわからないこともあったが、そこまで面倒に思うようなものはなかった。

 オンラインモードも実装されており、全世界のプレイヤーのゴーストと一緒にベストタイムを競うゲームになっている。こちらは逐一アップデートが入るようなので、タイムアタックに自信のある人は挑戦してみてほしい。

 その他、ゲーム性以外の部分についても語っていこう。ステージデザインはどこも秀逸で、メカニカルな建造物にグロテスクな植物がまとわりついているアートが多く、なかなか美しかった。本作のアートは『Badland』のアートを制作したJuhana Myllysが担当しており、彼らの得意とする横スクロールステージへの愛が感じられた。

 しかも、本作のアートはイラストではなく、よくよく目を凝らしてみるとピクセルであることがわかる。この点も執念のこだわりと言えるだろう。

 音楽についても美しく、重厚な世界観を上手く表現できている。

 しかしながら、ストーリーについてはあまりに開示されていないので、評価できないポイントだった。ステージの最後にホログラムの研究者が映り、その地で何が起きたのかを語ってくれるのだが、基本的に要領を得ず、時系列もあいまいであるため、読み込む理由が見当たらなかった。カタルシスにつながるものもなかったため、ストーリー重視で楽しむのはオススメできない。

 また、これはあくまで印象の問題だが、本作は重厚でスピーディーな雰囲気のトレーラーであるのに対し、中身はカジュアル寄りなパズルアクションゲームである。筆者は序盤からハードな難易度を求めていた節もあったので、遊ぶ前と後で若干気持ちの乖離があったのは事実だ。とはいえ、全体の難易度曲線は適切であったため、大きな問題ではない。

 ゲーム全体を通してひっくり返るような驚きはないが、これくらいのゲームを求めていたんだ……と思わせてくれるような楽しい仕掛けが盛りだくさんだ。最初から最後までずっと忙しく指を動かせるため、ほどよい難易度のパズルアクションを求めている人はぜひとも試してみてほしい。

落ちぶれたヤクザが過疎町をゆるキャラで復興!? 奇抜なのに高純度な任侠サクセスストーリー『プロミス・マスコットエージェンシー』レビュー

Kaizen Game Worksより4月10日に発売されたオープンワールドアドベンチャーゲーム『プロミス・マスコットエージェン…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる