称賛浴びるNintendo Switch 2の“転売対策”に内包される課題とは

Nintendo Switch 2の転売対策に内包される課題

 4月2日配信の『Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2』で発表されたNintendo Switch 2の仕様と価格、抽選販売への応募条件が話題を集めている。

 今日では、ゲームのみにとどまらず、さまざまな業界で問題となりつつある人気商品の転売。任天堂が新たに盛り込んだ施策は、対策のスタンダードとなっていくだろうか。

日本専用バージョンに価格差。Nintendo Switch 2に盛り込まれたさまざまな転売対策

Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2

 Nintendo Switch 2は、全世界で約1億台を売り上げている任天堂の現行機・Nintendo Switchの後継にあたるハードウェアだ。任天堂にとっては、2017年3月のNintendo Switchのローンチから約8年ぶりに発表する新機であり、フリークの期待を一身に背負う、絶対に失敗の許されない新製品でもある。そうした背景もあり、界隈では公式情報が出る以前から、さまざまな噂が話題をさらってきた。このたび放送となった『Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2』ではついに、任天堂からそのおおよその姿が明かされた形だ。

 配信では、発売日や機能、ローンチタイトルなどとあわせ、一部の仕様が発表に。任天堂によると、Nintendo Switch 2には、日本語専用/国内専用のバージョンと、多言語に対応するバージョンの2つが存在するという。また、配信内で直接言及はなかったものの、直後に公開となった公式サイトでは、販売方法や予約の開始時期、価格、抽選販売への応募条件なども明らかとなった。情報が目白押しとなるなかで、注目を集めたのが、任天堂がひときわ思慮をめぐらしたであろう転売対策に関連する項目だ。

 先に述べたとおり、Nintendo Switch 2は国内市場と国外市場で別のバージョンが展開され、かつ両者のあいだには、約2万円の価格差が設けられている(国内専用版が4万9,980円、国外版が6万9,980円見込み)。また、抽選への参加には「2025年2月28日時点で、Nintendo Switchソフトのプレイ時間が50時間以上であること(体験版ソフト、無料ソフトを除く)」「応募時点で『Nintendo Switch Online』に累積1年以上の加入実績があり、応募時にも加入していること」といった条件もつけられた。これらにより、同機は事実上、利用実態のないアカウントでは(少なくとも公式の販売サイトであるマイニンテンドーストアからは)抽選販売に参加できず、かつ日本以外のユーザーが日本市場向けに投入される商品を購入し、国外に持ち出すことが不可能となった。フリークからは、任天堂による一連の施策が効果的な転売対策になるのではないかと、評価する声が上がっている。当初から注目されていた発売時期や価格、ローンチタイトルと同等、またはそれ以上に、そうした取り組みが反響を呼んでいる現状だ。

任天堂の新たな施策に存在する課題

 転売をめぐっては昨今、さまざまな業界がその脅威にさらされている。直近では、日本人にとっての主食であるコメの転売も世間を騒がせた。ゲームの界隈において、同行為がここまで関心を寄せられるようになったのは、Nintendo Switchの慢性的な品薄が契機であったと、私は認識している。特に巣ごもり消費が伸長したコロナ禍には、外出を必要としないレジャーであるゲームへの注目、『あつまれ どうぶつの森』の発売などから、ファミリー機の性質を持つNintendo Switchに特需が生まれ、転売が横行する事態となった。

 任天堂にしてみれば、Nintendo Switch 2の販売に転売対策を盛り込むことは、過去の失敗から学んだ行動であるとも言える。「おなじ轍を踏み、優良顧客をふたたび騒動に巻き込むわけにはいかない」。そのような想いから、積極的かつ本質的な施策で対抗するに至ったのではないだろうか。

 他方、任天堂にとっての競合であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)も、Nintendo Switchをめぐる騒動以降、転売に頭を悩ませてきた。特に現行機・PlayStation 5のローンチでは、半導体の不足などからくる供給量の低下が世界的な品薄を招き、転売が横行。結果的に在庫に対する競争率が高まり、さらに購入しづらくなるという悪循環を生じさせてしまった過去がある。同機の流通をめぐっては、日本市場向けに確保されていた在庫が日本人以外によって買い漁られ、国外に持ち出されたとの報道もあった(※)。こうした悪しき前例もまた、日本語専用/国内専用のバージョンを用意するという、Nintendo Switch 2での任天堂の施策に生かされていると言える。

 SIEもまた、2024年11月発売の『PlayStation 5 Pro 30周年アニバーサリー リミテッドエディション 特別セット』(以下、『PS5 Pro 30周年特別セット』)の流通では、PlayStation 5での反省を生かし、抽選への参加に条件を設けている。応募には「応募するソニーアカウントでサインインした状態で2014年2月22日から2024年9月19日23:59までの期間にPS5とPS4いずれか、または双方の起動時間が合計30時間以上あること」「応募するソニーアカウントがMy Sony IDとサインインID共通化されていること」という2つの条件を満たす必要があった。これにより、利用実態のないアカウントは抽選販売から排除されることに。こうした対応には、ユーザーから評価の声が上がっていた。

 比較してわかるとおり、今回、任天堂がNintendo Switch 2の抽選販売に設けた条件は、『PS5 Pro 30周年特別セット』のそれよりも厳格なものとなっている。とりわけ、「日本市場向けと海外市場向けで別のバージョンを用意する」という新たな施策は、「日本市場を大切にする」という任天堂のスタンスが明確化されたものであるとともに、クリティカルな転売対策という性質も兼ね備えている。しかしながら、これにより一切の転売行為が撲滅されるとは言い難い面もある。こと日本市場において、かつて優良顧客だった日本人が、日本人向けに転売を行っている可能性も十二分にあるからだ。

 とはいえ、ここ5年ほどで任天堂やSIEの取り組みが進化してきたように、今後も過去の経験を生かしながら、対策はブラッシュアップされていくのだろう。対する転売業者側もおそらく、“ルールの抜け道”を必死になって探すことになる。こうした構図がいたちごっこである面は否めないが、それでも販売側には歪な現状を是正していく責務があるのかもしれない。

 1人のゲームフリークとして望むのは、今回の任天堂の取り組みが想定以上の成果を上げ、転売行為が撲滅されることだ。もしそのような結果につながれば、任天堂の施策は業界のスタンダードとなっていくのではないか。反面、現状の対策には「新規の健全な消費者が、少なくとも公式ストアの予約抽選には参加できず、門前払いされてしまっている」という、決して小さくない課題もある。問題の抜本的な解決のためには、「すべてのアカウントを個人情報と紐づける」など、より強硬な取り組みも議論されていくべきなのかもしれない。

※PS5の海外転売広がる 円安で割安感、差益狙う(日本経済新聞):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF233FZ0T20C22A8000000/

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