あの人のゲームヒストリー 第三十二回:水野朔

朝までプレイした『ドラクエX』、悔しくて泣いたFPS……声優・水野朔が語る“ゲームと人生”

 ゲーム好きの著名人・文化人にインタビューし、ゲーム遍歴や、ゲームから受けた影響などを聞く連載“あの人のゲームヒストリー”。今回話を聞いたのは、『ぼっち・ざ・ろっく!』等をはじめ、さまざまな作品に出演する声優・水野朔だ。

 声優として多方面に活動の場を広げ、自他ともに認めるゲーム好きとして知られている水野。各種メディアでゲーム愛を発信しているほか、2022年からはゲーム好き声優が集うプロジェクト「声優e-Sports部」にも参加している。

 幼いころからゲームと共に育ち、「公私にわたって大きな影響を受けた」と話す水野。今回は思い入れの深い作品から独自のゲーム哲学まで、20年以上にわたるゲーム遍歴をたっぷりと語ってもらった。

ゲーム大好き家族に囲まれて育った幼少期

――まずは水野さんとビデオゲーム(以下、ゲーム)との出会いについて教えてください。

水野朔さん(以下、水野):うちはゲーム大好き一家だったので、「一番最初に遊んだゲーム」って聞かれると、ちょっと多すぎて分からないです。だけど印象に残っている作品はいろいろありますね。

 たとえば小さいころの話だと、「NINTENDO 64」(64)の『ポケモンスタジアム 金銀』は、ポケモン対戦だけじゃなくおまけモードも楽しくて。イーブイやバリヤードが出てくるミニゲームがすごく面白かった記憶があります。

――家庭環境もあいまって、物心つく前から自然とゲーム好きになったのですね。

水野:そうですね。64の後に出た「ゲームキューブ」も家に置いてありました。確か『大乱闘スマッシュブラザーズDX』で従兄弟にボコボコにされていたと思います(笑)。

――微笑ましい光景が目に浮かびます。では、自分の意思で「欲しい」と最初に思ったゲーム作品について教えてください。

水野:マイナーかもしれませんが、「ゲームボーイアドバンス」(GBA)の『わんニャンどうぶつ病院〜動物のお医者さん育成ゲーム〜』という作品ですね。小さいころは「獣医さんになりたい」と思っていて、クリスマスプレゼントで買ってもらった記憶があります。でも、周りにこのソフトで遊んでいる子は一人もいなかったですね(笑)。

 あとは『ポケットモンスター ルビー&サファイア』も遊びましたし、ニンテンドーDS用ソフトの『牧場物語 コロボックルステーション』もずっとやってました。

――いろいろなゲームに触れる機会に幼少期から恵まれていたのですね。

水野:家族はみんなゲーム好きだったけれど、それぞれ好きなジャンルがバラバラと言うか。お姉ちゃんはそれこそ「牧場物語」とか「どうぶつの森」とか、そのあたりの一人で遊べるゲームが好きだったみたいです。お母さんが「ドラゴンクエスト」などのRPGが好きで、お父さんは「PlayStation 2」用ソフトをいろいろと買っていました。なので私自身もゲームはまんべんなく触ってきましたね。

 思い返してみると、家庭の影響でいろいろなゲーム作品を遊びつつ、自分なりに好きなジャンルがはっきり分かったのかもしれないです。いまは対戦形式のゲームをずっと遊んでいますけど、それとは別に一人でほのぼの遊べる作品も大好きで。『Stardew Valley』という作品があるのですが、その開発者の方が制作している新作の『Sunkissed City』がいまとても気になっています。

時計の針が一周するほど遊び続けた『ドラゴンクエストX』

――それでは、自身のゲーム遍歴を語るうえでターニングポイントになった作品について教えてください。

水野:中学生のころに発売された『ドラゴンクエストX』(ドラクエ10)ですね。最初は「ニンテンドー3DS」で遊んでいて、快適さを求めて後からPC版にたどり着きました。それまでゲームと言えば据え置き機や携帯機がメインだったので、『ドラクエ10』が私にとって初めてのPCゲームになりましたね。

――『ドラクエ10』でPCゲームデビューを果たし、同時にオンラインゲームの世界に足を踏み入れたのですね。

水野:そうです。そこでちょうど知り合った女性プレイヤーがものすごく良い人で、なにもしらなかった私に「一緒に遊ぼうよ」と声をかけてくれたんです。その子と仲良くなっていろいろなプレイヤーと知り合いましたし、気づいたら朝から翌日の朝になるまでプレイしていたぐらい、当時は『ドラクエ10』にハマりました(笑)。あれから時間は経ちましたけど、いまでもログインしたときにお話するぐらい、当時のフレンドと仲良くさせてもらっています。

――オンラインゲームのフレンドは人生の財産になると思います。『ドラクエ10』以降はどんな作品にハマったのでしょうか。

水野:Wii U用ソフトの『スプラトゥーン』ですね。『ドラクエ10』で知り合ったフレンドが遊んでいたのを見て、私もプレイし始めました。いまでもシリーズ作品が続いていますけど、初代『スプラトゥーン』が一番遊んだと思います。

 対戦型のシューティングゲームってあんまり経験がなくて。それでもガチマッチ(競技性の強い対戦モード)で真剣に勝つことを目指していました。

――フレンド経由で『スプラトゥーン』を知り、シューティングゲームの魅力にハマったと。そこから他のFPS作品にも興味が出たのでしょうか。

水野:『スプラトゥーン』の後は『PUBG: BATTLEGROUNDS』(PUBG)ブームがすごかったので、私も始めたくなって。でも、当時はまだ普通のPCを使っていたからスペック的に『PUBG』を動かせるか不安があったんです。だからアルバイト代を自分で貯めて、満を持してゲーミングPCに買い替えました。

 そのおかげでフレンドと一緒に『PUBG』を遊ぶことができたし、その後も『Apex Legends』や『Fortnite』をPCでプレイするきっかけにもなりましたね。あと、『Ironsight』という基本プレイ無料のFPS作品も好きでした。

――『PUBG』をプレイするためにPCを買い替えたのですね。自然とゲーミング環境も変わったと思われますが、いかがでしょうか。

水野:昔はキーボードとマウスを含め、ゲーム用じゃない普通のものを使っていたんです。でも本格的にPCでFPSをプレイするようになってからは、ゲームプレイに特化したデバイスをきちんと揃えるようになりました。

 私が上京するタイミングで初めて買ったのがLogicoolのゲーミングキーボードで、そこからいろいろな製品をチェックしつつ、いまは「ZENAIM」や「SteelSeries」のデバイスを使っています。あとフル活用できる機会は限られますけど、ゲーミングモニターも3枚置いています(笑)。

FPSは「強い相手と戦う」からこそ面白い

――現在は『VALORANT』を中心にプレイされているようですが、チーム形式で攻守を競い合うFPS作品はどこからご存知になりましたか?

水野:『Fortnite』にハマった後ぐらいに、フレンドの影響で始めた「Call of Duty」からですね。しかも普通に遊ぶんじゃなくて、当時は仲の良いフレンド同士でチーム戦をずっとやってたんです。

――かなりコアな話題ですね。俗に「混合」(※1)と呼ばれる交流戦のことでしょうか。

水野:そうです。もともとは先に「CoD」にハマったフレンドから「混合に人数が足りないから来てほしい」と誘われたのが最初だったと思います。でも5対5のチーム戦をしっかりやるのも初めてだったし、そもそも「CoD」自体ちゃんと遊んだこともなくて。勝つためにいろいろと頑張った結果、悔しくて泣いたこともありました(笑)。

――決まったメンバーと連携力を高めて勝利を目指す。部活というかeスポーツ的な楽しみ方をされていたんですね。

水野:「CoD」は1年近くやり込みました。固定のチームを組んで、SNSで対戦してくれそうなチームを募集して……といった感じです。みんな段々と忙しくなって、対戦相手も見つかりづらくなったから距離はできちゃいましたけど、“5対5で戦うFPSの基礎”を一から学べたのが本当に楽しかったですね。なので『VALORANT』は大体4年前、「CoD」に一段落がついてから遊び始めました。

――同じFPSでも『VALORANT』は「CoD」と異なる部分が多々あります。実際に触ってみていかがでしたか。

水野:やっぱりエイムやストッピング(※2)の部分が違うので、同じキーボードとマウスで操作していても最初はかなり難しかったですね。「CoD」は割とまっすぐ弾が飛んでくれるけど、『VALORANT』は反動を制御しないと弾がどんどんバラけていく……みたいな。それでも「CoD」の混合で5対5の戦い方は分かっていたし、周りのフレンドも混合に似たゲームルールの『VALORANT』に興味がありそうだったので、私も本格的にプレイし始めました。

――ゲームに対する理解力の高さを含め、『VALORANT』を遊び続けているところに水野さんのストイックさを感じました。

水野:たぶん“強い相手と戦うのが好き”なんです。たとえばランク戦で当たった相手が味方チームより下の腕前だと、試合に勝つことはできるけど歯ごたえが足りないと言うか。

 それよりも強い相手と当たって、「勝つか負けるかギリギリ分からない」状態で戦う方が楽しいですね。だから自分よりも上手い人と遊ぶと勉強になることも多いし、自然と対戦相手も味方のレベルに合わせて強くなるから、結果的に自分も上手くなれる気がします。

――水野さんはSNSや番組等で、日頃からゲームに対する気持ちを発信しているように見受けられます。このスタンスは以前から続けてこられたのでしょうか。

水野:ゲームに対する向き合い方はデビュー当時から変わっていないと思いますけど、いまの方が情報を具体的に伝えている気はしますね。『VALORANT』で「ダイヤに上がりたい!」みたいな(笑)。

 それでもゲームに対する愛は昔からずっと持っているし、ゲーム好きという部分を日常的に発信し続けたことで、2022年に「声優e-Sports部」(※3)へ所属する機会をいただくことができました。

――今日の取材にも声優e-Sports部の制服を着用していただいています。ゲーム好きが高じて仕事の幅が広がったと言えるかもしれませんね。

水野:先ほどお伝えしたゲーミングデバイス周りもすごく詳しくなりましたし、YouTubeのゲーム配信でいろいろとプレイさせていただく機会も増えました。普段から遊んでいる『VALORANT』もそうですが、過去にハマった『Fortnite』のプレイ配信で懐かしい気持ちになったり。あとは同じようにゲーム好きの声優さんが集まっているので、自然と友だちも増えました。

――昨年11月30日には、丹生明里さんの「日向坂46」卒業イベントで『VALORANT』をプレイされていました。

水野:丹生さんがもともと『VALORANT』好きということであの企画が始まったと思うんですけど、事務所内で私も『VALORANT』をプレイしているという噂があったらしくて。そこからありがたいことに声をかけていただいた……という流れですね。

 でも、実際にステージ上で『VALORANT』をプレイするのは本当に難しくて。あの環境で実力を発揮されているプロゲーマーやストリーマーの方々って、純粋に凄いんだなと思いました。

 やっぱりオフライン会場ってリラックスして遊べるわけじゃないし、デバイスも普段使っているものと違うじゃないですか。それでも勝つために普段からずっと努力して、本番ですべて出し切ろうとしているみなさんの姿勢にいろいろと考えさせられました。

※1 「CoD」において特定の武器やパークのみ使用を許可する対戦形式、ならびに試合の俗称
※2 シューティングゲームにおいて、射撃時にキャラクターの移動を抑えるテクニック
※3 株式会社オブジェクトが運営するe-Sports応援プロジェクト。現在44名が所属中

ゲームが人生の歩み方を教えてくれた

――20年近くにわたってゲームを遊び続けてこられた水野さんですが、プレイ体験を通して学んだ「人生の教訓」はありますか?

水野:主に対人関係になってくると思いますけど、分かりやすいところで言えばコミュ力が身についた気がします。

 いまはいろいろな人とゲームで遊ぶのが好きですが、もともとすごく人見知りだったんです。それこそ『ドラクエ10』もそうですけど、オンラインゲームを通して初対面の人と仲良くなる方法や、正しい距離の詰め方を学ぶことができました。

 それと、“良い意味で他人に期待しすぎない”ことも覚えました(笑)。人を見る目が鍛えられたと言うか。

――そう感じるようになった経緯を具体的に教えていただきたいです。

水野:協力して相手チームと戦うゲーム作品をプレイすると、一緒に遊んでいる人の性格がだんだんと分かってくる気がして。対戦形式のゲームだから「絶対に勝ちたい」人がいれば、勝敗も大事だけど「楽しく遊べる雰囲気作り」が重要な人もいます。

 だからいろいろな人と良い距離感を保つ方法が身についたと思いますね。そもそもゲームと出会わなかったら、全然喋らないし前に出てこない性格だったのかもしれません。

――ゲームは単なる趣味ではなく、水野さんの仕事や人生観にまで深い影響を与えたわけですね。

水野:そうだと思います。だからプライベートで遊ぶのはもちろん、先ほどお伝えしたように「ゲームが好き」という気持ちを変わらずにこれからも発信し続けたいですね。

 本当にありがたいことに、いまはゲーム関連のお仕事もいただけるようになって。さまざまな作品のキャラクターボイスを担当することもあるのですが、まだFPS作品のキャラクターに声を吹き込んだことがないんです。

 それこそ自分の好きな作品に出演して、自分が声をあてたキャラクターを使ってゲームをプレイする……みたいな。ゲーマー声優の到達点じゃないですけど、純粋にいつか達成したい目標の一つですね。

《水野朔》
ソニー・ミュージックアーティスツ所属
https://www.sma.co.jp/s/sma/artist/510?ima=0000#/news/0

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《声優e-Sports部》
声優と一緒に様々なゲームを楽しむ!その楽しさをファンと共有し波及させていく部活動がコンセプト。
プロプレイヤー志向ではなく、あくまで「楽しく!」「プレイヤーが増えるきっかけに!」「盛り上げ役に!」といった志向を持ち、2025 年現在「全44名体制」で活動中の e スポーツ応援プロジェクト。

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