『ドラえもん』の世界にまた一歩? 『Apple Vision Pro』のアプリで“2112年”の足音を聞く

リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。
第55回はAmazon Primeビデオで「大長編ドラえもん」シリーズを観返している三沢がお送りします。個人的なベスト3は『のび太と夢幻三剣士』『のび太のパラレル西遊記』『のび太の宇宙漂流記』で、この3作品に共通して登場する“現実が侵食されていく表現”がたまらない。思えば、筆者のテクノロジー好きは「ドラえもん」から始まっているような気がします。
さらにいえば、担当領域として日々取材させてもらっているVRやAR、XR表現への感心も、『ドラえもん』からの影響が源にあるかもしれません。これらの技術には、あの頃憧れた「ひみつ道具」っぽさがありますよね。
今回は、ここ最近体験した『Vision Pro』のアプリたちを紹介しつつ、なかなかテキストや体験を通してでないとわからない魅力を、『ドラえもん』の「ひみつ道具」になぞらえることでお伝えしてみたいと思います。
まるで「架空水体感メガネ」? 『Craftrium』で部屋の中にアクアリウムを作る
最初に紹介するのは、Graffityが開発、松竹と共にリリースした『Craftrium』。これはカスタマイズ可能なアクアリウムを作ることが出来る空間アプリで、魚を集めて図鑑をコンプリートするちょっとしたやりこみ要素もあるゲーム作品としても楽しむことができます。
ゴーグルをかけると目の前に大きなアクアリウムが出現するのですが、水草や土台などのアイテムを自由に置き換えることでカスタマイズが可能になっています。飾って楽しむだけでなく、自分の周囲を含むあたり一帯を海底に変えてしまうという「Immersiveモード」も搭載しており、リラックス効果、没入感、遊び要素の3つをひとつのアプリで楽しむことができるアプリになっています。

Graffityさんは過去に『Shuriken Survivor』というタワーディフェンス系の空間ゲームアプリも出されていて、インタラクティブな要素を組み込むのが得意な会社さんだと感じます。
で、このアプリを体験させてもらっていた時、僕は心の中で「架空水! 架空水じゃないか!」と思っていたわけです。「架空水(かくうすい)」は、『ドラえもん』第41巻に収録されているお話「深夜の町は海の底」に登場するひみつ道具「架空水面シミュレーター・ポンプ」で作ることができる、文字どおり“架空の水”で、ようは「特殊なゴーグルをかけないと見えない・触れない水」のことです。

「架空水面シミュレーター・ポンプ」から排出された水は、「架空水体感メガネ」というゴーグル型のひみつ道具を装着することで“体感”することができるようになります。他の道具を組み合わせれば魚や船を「架空水」の世界に巻き込むことも。
『Craftrium』はまさにそんな「架空水」っぽい体験が出来るアプリだなと感じました。泳いだり、物理的に触ることはできませんが、それでも水を体感してお魚たちを空中に浮かべ、眺めることは出来るわけです。
というか、「架空水体感メガネ」って実は2112年のXRデバイスだったのでは……?