「持続可能な社会と相性がいい」WONK・江﨑文武も感心したヤマハの新型電子ピアノ『T01』とは

ヤマハの新型電子ピアノ『T01』とは

 ヤマハ株式会社が2月18日、横浜市内で新たな電子ピアノ・TORCH『T01』についての記者会見を行った。このなかでWONKの鍵盤奏者・江﨑文武も登場。2曲を披露してイベントに華を添えた。

 本製品は希少木材「グラナディラ(アフリカン・ブラックウッド)」を使用したサステナブルなコンセプトモデル。資源を有効活用すると同時に持続可能なものづくりに挑戦するプロジェクトである。

TORCH『T01』

 グラナディラはクラリネットやオーボエなどに使用されるが、使える個体や部位はごく僅か。これまで使用不可な部分は産地・アフリカで燃料にするくらいしかなかった。それを覆すのが『T01』。

 鍵盤はタンザニアで採れたグラナディラ7割と樹脂3割の複合素材を使用、この配合率で成形する技術は現状ヤマハが最高レベルだという。今後この技術は元来のクラリネットやオーボエだけでなく、ギターの指板などに応用できるように研究していくもよう。

 またブランド名「TORCH」は「たいまつ」を意味し、「楽器や音楽文化の未来を明るく照らしていきたい」という想いが込められている。実際に触ってみたところ、しっとりした手触りと経年劣化で味の出る全体のデザインが耳や手だけでなく目でも楽しめた。

 希望小売価格は税込みで990000円。少々高価ではあるが、限定20台という希少性で勝負するようだ。

江﨑文武

 会見後半には江﨑が登場。アルペジオを多用し、鍵盤の質感を確かめるようなプレイを聞かせる。それから『T01』について「電子楽器は工業製品的な趣が強いけど、この楽器はプロダクトが持つオーラに圧倒されました」と話し、鍵盤が放つ木の香りについても言及。

 また「音楽はヴァイオリンが200年、ピアノが50~100年ほど使われて当前のような世界」と前置きし、自分の業界について「持続可能な社会と相性がいいと思うので、音楽業界から参考にできることもあるんじゃないかなと」と提言。彼自身も自宅で「日本楽器製造株式会社」時代のヤマハ製アップライトピアノを愛用しているという。

 今後ヤマハに期待することを問われると「『DX7』があったから80年代のシンセサウンドを中心にした楽曲が生まれました。『CP』シリーズもそう。ヤマハが手掛けてきた楽器が新しい音楽ジャンルを切り開いた側面があると思うので、これからもイノベーションを起こし続けてほしい」と語った。

 最後に「記念に『TORCH』に捧げる即興をやってみたいと思います」と、すぐにでも歌になりそうな音楽を披露した。

 そして今話題なのが米・トランプ政権を起点とした、さまざまな世界の激変だ。「持続可能」という価値観も転換期になりうる。これについて記者からの質問が飛ぶ場面も。代表執行役社長・山浦敦氏が「揺り戻しはあると思います」とコメント。

 さらに「ただ音楽文化そのものが持続的であるということが大命題。だから環境負荷の低い素材を選ぶなどのプロセスを見直しています。これからもカーボンニュートラルへの取り組みは企業の責任として緩めずに対策したい」と重ねた。米国の変化が日本に及ぶかどうかの予測を求められると「特にないと思います」と気にしていない様子だ。

 「持続可能性」という概念が揺れる時代にヤマハが大胆に提案するTORCH『T01』。この楽器がどう受け入れられるのかに注目したい。

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